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トークイベント

12月8日(日)よりヒューマントラストシネマ渋谷にて開催中の「カンヌ監督週間 in Tokio 2024」。
この度、12月14日(土)山村浩二監督短編集『とても短い』上映後に行われた【トークイベント】に山村浩二監督、そしてカンヌ監督週間アーティスティック・ディレクターのジュリアン・レジが登壇しました。
『とても短い』トークイベント
 
トークイベント
日時12月14日(土)
場所 ヒューマントラストシネマ渋谷
登壇:山村浩二(監督)、ジュリアン・レジ(カンヌ監督週間 アーティステック・ディレクター)
MC:矢田部吉彦(前東京国際映画祭プログラミング・ディレクタ

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山村浩二監督、ジュリアン・レジ登壇

 
カンヌ監督週間に選出されたことについて、山村監督は「若い才能の中に混ぜていただいて嬉しかったです。長年、アニメーションとはいえ、つねに映画を意識して作ってきたので、やはりカンヌ国際映画祭は⼤きな存在でしたからね。何か機会があったら行きたいとずっと思っていました。今回、その夢が叶って、10 日間、フルで楽しませていただきました。ここで上映されている作品も現地でたくさん観ることができましたし…選んでいただいて本当にありがとうございました」と感謝を口にする。

選考にあたったジュリアンは「この作品は、ビジュアルポエムというような作品になるので、簡単に語ることはできませんが、私もほかの選考委員も、すごく簡潔でありながら、とても濃密である部分に惹かれました」とその理由を明かし、さらに「短時間の作品の中に、人の誕生から死まで凝縮されている部分も素晴らしかった」と賞賛の言葉を贈った。
早稲田⼤学と米国カリフォルニア⼤学ロスアンゼルス校との共同連携事業である「柳井イニシアティブ」による文学ビデオの制作プロジェクトとして作られた本作は、日本語で書かれた短編小説を作者が朗読し、日本国内外の⾰新的なアーティストによるアニメーションを組み合わせた新しい短編アニメ映画シリーズの第1弾。
言葉と体が融合した独特のグラフックについて山村監督は、「⾝体性みたいなことは考えていて、言葉も体があると思いますし、人間も言葉によってアイデンティティーが形成されていくもの。⼼を概念化して理解していくわけですから、結局、言語の影響を知らず知らずのうちに受けていると思うので、われわれの体も言語からできている、というイメージですね。特に漢字は文字自体が形になっているので」と解説する。
また、日本語で勝負したことについて山村監督は、「さほど(日本語)が問題になるとは思っていませんでした。長年、映画祭に参加していて、翻訳で苦労する部分もあったんですが、今日上映していただいた⼀番古いアニメ『頭山』の音声を聞いた時に、『これを翻訳するのは無理だ』と。逆にあの声を聞けば興味を持ってもらえるんじゃないかということで字幕対応にした経緯があったので、今回も全く⼼配していませんでした」と自信をのぞかせた。

独特の山村ワールドに興味津々のジュリアンは、「文学以外の芸術からインスピレーションを受けることがありますか︖」と質問。これに対して山村監督は、「もともと絵画を勉強していたので、海外に行けば、美術館で西洋美術や現代美術を観たりしますが、特定のものを挙げ出すとキリがなくて……。ただ、シュールリアリズムとアニメは非常に近いところがあるので、そういった作品から⼤きな刺激を受けたりはしますね。あとは音楽も好きですし、劇映画も好きなので、とにかくいろんな作品から刺激を受けています」と幅広い作品から影響を受けていることを強調。
さらにジュリアンは、「あなたの作品から無声映画の影響も強く感じるのですが、何か特定の映画作家や好きな傾向の作品など挙げられますか︖」と問うと、山村監督は、「映画好きの⽅はわかると思いますが、これが⼀人、二人という感じで絞れないんですよね」と苦笑い。
「しいて挙げるなら、僕の作品からイメージしやすいということで、ロベール・ブレッソンの作品やジャック・タチの『プレイタイム』は⼤きな刺激を受けましたね。あとはルイス・ブニュエル、日本だと小津安二郎や溝口健二も⼤好きですね」と答えると、満⾯の笑みを浮かべながら、「日本人監督のお気に⼊りが同じでよかった」とご満悦の様⼦を見せた。
なお、この日は、『とても短い』の原作者である古川日出男も観客として来場。

途中、ジュリアンからマイクを向けられると、「東京に住んでいたり、東京を旅したりしている人は、それぞれ別々の東京のイメージを持っている。現実の東京とはズレていて、そのズレの中にいろんな物語があるし、またそれらの中に絶望と救済があるんじゃないか……そういうことを綴った短編集でした」と小説に込めた思いを語りました。

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「カンヌ監督週間in Tokio 2024」概要

 
12月8日(日)〜19日(木) ヒューマントラストシネマ渋谷にて開催
 
“Sélection indépendante et singulière”―――独立性のある、他に類いのないセレクション
1968年、作家性や芸術性の高い作品を称揚するためにカンヌ映画祭に創設された「監督週間」だが、そのセレクションは決してハ-トウォーミングな作品やラブコメなどではなく、ラディカルで自由な矢を放ち、見る者の心を打つメッセージ性の高い作品ばかりだ。日本の映画ファン、映画・映像業界に携わる方々、そしてこれからその世界に飛び込もうとしている若者たちへ向けて、世界の最前線の映画たちをお届けする。
 
■主催:監督週間(Quinzaine des Cinéastes/Directors’ Fortnight)/特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)
■共催:東京テアトル 
■特別協力:三菱UFJ銀行 
■協力:金延宏明(ノブ・ピクチャーズ)/CINEFRANCE STUDIOS/Filmarks/レプロエンタテインメント/活弁シネマ俱楽部/ELLE/AKIRA H/在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ/スペースロック/河本和真(Deep Emotion)/小林由佳(よーてらよてら)
 
カンヌ監督週間 in Tokio

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山村浩二監督短編集『とても短い』

 
2024 年/71 分/日本
監督:山村浩二
【上映作品】頭山/年をとった鰐/こどもの形⽽上学/マイブリッジの⽷/サティの「パラード」/ゆめみのえ/とても短い
「監督週間」短編部門に選出された『とても短い』は、米国人の翻訳家が企画者となり、古川日出男の原作を古川本人が熱く
朗読し、東京を舞台に、ある男の⼀生と「だ」という音から始まる言葉の数々が縦横無尽に画⾯を駆け巡るアニメーションと
日本文学の合体作である。その他、山村監督の名を国際的に知らしめた『頭山』(03)や、フランス童話作家を原作とする『年
をとった鰐』(05)など、珠⽟の短編作品 7 本を特集上映する。
 

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