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マタギサミット

 
自然への畏敬と共生が生き残るマタギの山で、禁じられた熊撃ちに挑むふたりの若者を描いた映画『プロミスト・ランド』は、ユーロスペースにて公開中(全国順次公開)ですが、本作のの飯島将史監督と山形県大鳥地区のマタギで、マタギ監修として映画に関わった田口比呂貴が「第35回ブナ林と狩人の会 −マタギサミットin 信州秋山郷−」に参加し、映画のPRを行いました。
 
『ブナ林と狩人の会 −マタギサミット−』は平成2(1990)年に第1回目の会が開かれて以来、毎年1回開催されている広域的山村交流会議。日本の狩猟文化を研究している田口洋美氏の呼びかけで有志が集まったことでスタート。
狩猟文化(マタギ文化)を基礎に中山間地域の生活文化の継承と発展を目指し、それぞれの集落が21世紀をどのように生き抜いていくか、生活者自らが問題解決に向けて模索していくための場となることを目的としている。
今年は、6月22日(土)、23日(日)に長野県栄村と新潟県津南町を会場に開催され、全国からおよそ160名の狩猟従事者、狩猟関係者、研究者が参加しました。
 
『プロミスト・ランド』の原作は1983 年に第40回小説現代新人賞を受賞した飯嶋和一のデビュー小説「プロミスト・ランド」。知られざるマタギの生活実相を映すドキュメントであると同時に、ふたりの若者の友情の物語でもあり、 山・自然・生命をめぐる叙事詩でもある。
 
映画化するにあたり、飯島監督は田口洋美氏にマタギ文化を学び、80年代当時の集落の面影が残る場所として、日本でも数少ないマタギ文化が継承されている山形県大鳥地区を紹介。
 
飯島監督「マタギの文化が続いている集落で、先祖代々誇りを持って熊撃ちに従事する中で、習わしに反発する若者を映画化するにあたり、田口洋美先生、田口比呂貴さん、地元の猟師さんに協力してもらいました。みなさんの話を伺って、僕らが映画作りの現場で感じることと共通していると思いました。いま、映像配信サービスが盛り上がってきている中、映画の作り方も変化してきています。若いスタッフの映画に対する取り組み方、考え方も、僕が先輩たちから習ってきたことと変わってきています。そういうことが猟師の実世界にもかなり共通する部分がある。そういう思いも込めて映画を作りました。」
『プロミスト・ランド』
 
地域おこし協力隊として大阪から大鳥地区に移住し、現在もマタギとして暮らす田口比呂貴さんは、猟師の方にも観てもらいたいポイントを語った。
『プロミスト・ランド』
「山を歩くシーンがものすごく長いです。実際の猟もそういうことですし、そこが商業映画らしくないというか、ドキュメンタリーのような感じがします。また、表立って猟師が口に出して言わない心の内が少し垣間見られます。それでも熊を取りに行きたいという気持ちや、自分はこの地域のマタギなんだという誇りのようなものが描かれている。説明が少ないが、背景にある2人の心の内が見えます。実際の猟をやっている感覚が飯島監督ならではの表現だと思います。」
 

22日のパネルディスカッション

「認定鳥獣捕獲等事業者制度と「場」の問題を考える」と「錯誤捕獲は回避できるのか?」について各地域の事例を踏まえながら話し合いが行われた。
認定鳥獣捕獲等事業者制度とは、鳥獣の捕獲等に関わる安全管理体制や従業者が適正かつ効率的に鳥獣の捕獲等をするために必要な技術及び知識を有する鳥獣捕獲等事業を実施する法人について、都道府県知事が認定する制度。後継者不足で狩猟のプロが減っていく中、捕獲許可を得て認定鳥獣捕獲に携わる法人や団体が増えることは、地域によって抱えている問題や考え方が違うため、様々な意見が出た。
錯誤捕獲とは、捕獲対象以外の鳥獣が誤って捕獲されることで、近年、シカ・イノシシの捕獲を目的とした罠にクマ類がかかってしまう事例が増えている。狩猟において罠を使用する方法でクマ類を捕獲することは大量捕獲等を招く恐れがあることから禁止されているため、非常に難しい問題として狩猟関係者の頭を悩ませている。
どちらの問題も地域によって地理的環境、伝統的な狩猟方法や考え方が違うため、対処方法の結論が一つではないということが浮き彫りになった。
会場には若い世代の参加者も多く見られたが、制度をもっと勉強して利用できることは利用するなど、新しい世代に期待される発言もあった。
その中でマタギ文化の継承を描いた映画『プロミスト・ランド』に期待することを田口洋美氏に尋ねたところ、次のように語った。
『プロミスト・ランド』
「映像には可能性と危険性があると思います。ドキュメンタリー作品を重要視するが、現実で起きることはそれほど突飛ではない。逆に現実で起きていることがあまりに危険で痛ましく、ドキュメンタリーで描けないこともある。特に野生動物と人間の関係を描くのに映画に可能性があると思う。その中で飯島監督はドキュメンタリー(『MATAGI -マタギ-』)と映画の両方を撮っている。そんなことをやっている人がいないのではないか。ドキュメンタリーと映画の両方を観たらどういう効果が生まれるか同時上映しても面白いと思います。
若い人たちに期待することは、向き合わないといけないことに気づいてほしいということです。誰かの言っていることではなく、自分で見て知ることを大事にしてほしい。
次の時代の野生動物と人間の関係は、どのような形になっても良いと思います。今まで人間が捨ててきた「自然のリアル」を受け入れる、そういうことだと思います。」
 
また、飯島監督はマタギサミットに参加した感想を次のように語った。
「法律とお金と生活と感情が入り組んでいる問題であって、簡単に解決できる話ではないと感じました。
一方で、自然は待たない。変わっていく。動物の数が増えていく。
しかし、それは人間が自然から借りただけで、元に戻るだけということかもしれません。
結論は出せない問題ですが、これから現場で頑張る人、真面目に考えている人、そうでもない人にも『プロミスト・ランド』を観てほしいです。」

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『ブナ林と狩人の会 −マタギサミット−』とは

 
平成2(1990)年に第1回目の会が開かれて以来、毎年1回開催されている広域的山村交流会議。発起は、中部東北地方の豪雪山岳地帯に点在する伝統的狩猟集落(マタギ集落)を中心に日本の狩猟文化を研究している田口洋美(主宰幹事:狩猟文化研究所代表。現:東北芸術工科大学名誉教授)の呼びかけで有志が集まったことでスタート。
会の目的は狩猟文化(マタギ文化)を基礎に中山間地域の生活文化の継承と発展を目指し、それぞれの集落が21世紀をどのように生き抜いていくか、生活者自らが問題解決に向けて模索していくための場となること。

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『プロミスト・ランド』

 
ユーロスペースにて公開中 全国順次公開
 
映画公式サイトURL:
https://www.promisedland-movie.jp
 
公式Xアカウント:
@promisedlandmov
 
公式サイトURL:
https://yoihi-project.com
 
公式Instagram
@yoihi_project
#マタギの日常
 
原作は第40回小説現代新人賞を受賞した飯嶋和一「プロミスト・ランド」。主演には若き実力派、杉田雷麟と寛一郎の強力なタッグが実現。共演には三浦誠己、占部房子、渋川清彦、小林薫ら円熟のベテラン俳優陣が勢揃いした。監督の飯島将史は、本作の舞台となる山形県庄内地方のマタギ衆に密着したドキュメンタリー『MATAGI-マタギ-』(03)に続く本作で劇映画デビューを飾る。
 
物語・・・
春の東北、マタギの伝統を受け継ぐ山間の町。高校を出て親の仕事を手伝う20歳の信行(杉田雷麟)は、この土地の閉鎖的な暮らしに嫌気が差しながらも、流されるままに日々を送っていた。そんなある日、役所から今年の熊狩りを禁止する通達が届く。違反すれば密猟とみなされ、マタギとして生きる道を閉ざされてしまう。皆が落胆しながらも決定に従うなか、信行の兄貴分の礼二郎(寛一郎)だけは、頑なに拒み続ける。後日、礼二郎から呼び出された信行は、二人だけで熊狩りに挑む秘密の計画を打ち明けられ…。
「プロミスト・ランド」

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出演:杉田雷麟 寛一郎
三浦誠己 占部房子 渋川清彦/小林薫 
脚本・監督:飯島将史  
原作:飯嶋和一「プロミスト・ランド」(小学館文庫「汝ふたたび故郷へ帰れず」収載)
製作:FANTASIA Inc. / YOIHI PROJECT 制作プロダクション:ACCA /スタジオブルー
配給:マジックアワー/リトルモア
©︎飯嶋和一/小学館/FANTASIA
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