東京ドキュメンタリー映画祭今年で5回目を迎える東京ドキュメンタリー映画祭が12月10日(土)〜12月23(金)まで新宿K’s cinemaにて開催される。 この度、予告編が完成。 |
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<長編部門 プログラマー 澤山恵次>Q.今回のプログラミングをする際に念頭に置いたことは何ですか? 一方的な描写でないか、埋もれている事実Q.歴史を広く知らしめたい作品であるかを確認しながら映画館で観たいと思う作品を候補に挙げます。 Q.プログラミングを終えて、今年のラインアップにどのような傾向があると思いましたか? 国際的社会問題を紐解く鍵となり得たり、コロナ禍以降の人とどう向き合っていくかの方向性を考える機会となる作品群となっております。 Q.どの作品もオススメだと思いますが、その中でも注目を浴びそうな作品とその理由を挙げてください。 『標的』 慰安婦に関するスクープ記事を捏造とバッシングされた新聞記者の記録です。バッシングの中心人物の1人であった安倍晋三氏が殺害されてからの東京都内での初上映となります。 『霧が晴れるとき』 忘れられた戦争と言われたアッツ島Q.キスカ島での戦いについての映画です。日本Q.アメリカQ.アリュート人それぞれの遺族が織りなす感動的な秘話です。私の好きな映画に『太平洋奇跡の作戦 キスカ』がありますが、更にこんな奇跡があったのか!となりました。当時アリューシャン列島に従軍していたドナルドQ.キーンが存命だったらと思わずにはいられません。 Q.読者にメッセージをお願いします。 これまでも映画を観ることがきっかけで興味を持った出来事がたくさんありましたが、映画祭に関わるようになって益々その範囲が広がりました。還暦近くになっても知らないままだったことがこんなにもあるのかと毎年驚いております。毎日絶妙な組み合わせとなっておりますので、まずはお得な3回券で1日過ごしてみては如何でしょうか? <短編部門 プログラマー 佐藤寛朗>Q.今回のプログラミングをする際に念頭に置いたことは何ですか? 短編の場合は、実験映像やアートに近いものからテレビドキュメンタリーまで、様々な表現領域があります。それをテーマ別に括ることで、ドキュメンタリーの多様性や可能性が広がる見え方になるように工夫しています。とはいえ、数分の作品でも選考の際議論になるのは「ドキュメンタリーとしてみれるかどうか」なので、作品の奥にあるドキュメンタリー Q.プログラミングを終えて、今年のラインアップにどのような傾向があると思いましたか? よくドキュメンタリーは“関係性の表現”と言われるのですが、その意味では取材対象と真摯に向き合い、どう描けば相手の特質をスクリーンの向こう側にいるお客様に届けられるのかをよく考えた、ドキュメンタリーとして“真面目な”作品が今年は多い気がします。それが、テーマを強調したり、人間関係を深めたりすることとは一段異なる“映像表現”として展開されるところが、ドキュメンタリーの奥深さだと思いますね。 Q.各短編プログラムをご紹介ください。 まずは「高校生たちのエモーション」と名づけられた、部活に打ち込む高校生を描いたプログラムですかね。2作品とも顧問の先生を含めた青春群像劇なのですが、従来のスポ根や感動物語とは少し違った側面が見えてきて、新鮮でした。 「看取りの時間」や「男の履歴書」のプログラムでは、身近な人々の“死”が描かれます。命の限りに直面した時、残された人々が何を思い、どう動くのか…。普遍的なテーマでありながら、作品ごとの個性が際立ちます。 「小さき声の抵抗」や「地域に生きる」では、アイヌや沖縄、福島、鳥取の限界集落、川崎市の郊外…とそれぞれ事情は異なりますが、地域に根を張り生きることの意味がくっきりと見えてきますし、「切りひらく女性たち」では、多様性を叫ばずとも、ユニバーサルな生き方は肩肘はらずに実践できるんだ、と教えてもらえる気がします。 歴史のうねりの中で、忘れてはならない問題に目を向けた「戦禍の爪あと」や、アートがあることが、文字通り人間の明日の活力に繋がると実感できる「アートのある暮らし」の作品群からも、学べることが多いです。 長編『Paper City/ペーパー・シティ』と併映される『「遺言」〜呉服屋二代目が七十六年、思い続けること〜』は、人は渾身のメッセージに触れた時にどう受け止めてあげられるのかを、迷いながらも一緒に考えられる作品だと思います。 Q.読者にメッセージをお願いします。 短編部門では、様々なテーマを様々な見せ方で捉えた21本の作品を紹介していきますが、SDGsや多様性、ジェンダーなど昨今話題に上がる課題の多くは今回上映される作品に含まれており、そういった問題を考えたければ、まずは劇場に足を運んで、実際にみてみることをおすすめします。目の前の問題に七転八倒しながらも、それぞれの方法で記録に残した作家たちの奮闘を、ぜひスクリーンで一緒に味わってみてくださいね。 <人類学・民俗映像部門 プログラマー 金子遊>Q.今回のプログラミングをする際に念頭に置いたことは何ですか? 人類学・民俗映像部門はコンペですので、予備審査員の方々と「スクリーン上映に堪える内容と質」を基準に選考しています。偶然ではありますが、日本、沖縄、イタリア、バリ島、エチオピア、タンザニア、ウズベキスタンなど、世界各地域の民族文化をバランス良く紹介できることになりました。 Q.プログラミングを終えて、今年のラインアップにどのような傾向があると思いましたか? 人類学・民俗映像部門では、学術的で記録的な作品が多いと思われがちですが、今年は非常にユニークでクリエイティブな作品が集まりました。日本における神楽の放下芸を追った『それでも獅子は旅を続ける』の監督は民族音楽学の専門家ですし、琉球舞踊や三線の文化伝承を記録した『ウムイ「芸能の村」』の監督は沖縄在住のスイス人で、そのスタイルは観察的です。シチリア島の複数の祝祭を見せる『ミステリーズ』はダイレクト・シネマの手法を突きつめて、一切の言葉を排した実験的な民族誌の試みとなっています。 Q.どの作品もオススメだと思いますが、その中でも注目を浴びそうな作品とその理由を挙げてください。 TDFFでは、人類学関係の特集にお客さんがよく入る傾向があります。今年は、牛山純一がプロデュースした「すばらしい世界旅行」で活躍した、ディレクターの市岡康子さんを審査員にお迎えします。そこで「特集 パプアニューギニア」と名付け、市岡さんがニューギニア島で撮った『クラー西太平洋の遠洋航海者』『ギサロ』『裸族最後の大酋長』の3本と、現代のパプアニューギニアの森林の危機を描く『森からの声』をプログラムしました。どれも普段見れない作品なので、見逃さないようにお願いします。なかでも、ダニ族の酋長の語りと再現映像で描く『裸族最後の大酋長』は、記録と虚構を混ぜ合わせた珍しい手法の作品で、シネフィルにもおすすめします。 Q.読者にメッセージをお願いします。 当映画祭では、映画館のスクリーンでもサブスクでも見られる機会の少ない作品を集めています。5年目になり、映画ファンの期待にこたえられる質と量になってきました。今年は上映期間が2週間に拡大し、大分見やすくなりましたので、ぜひ足をお運びください。 |
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『東京ドキュメンタリー映画祭2022』公式サイト: 公式ツイッター: 公式Facebook: 料金は、1,500円均一【小・中・シニア1,000円】で、ご鑑賞の3日前の0:00より、上映時間の30分前まで新宿K’s cinemaの公式サイトで購入が可能。1回券1,300円、3回券3,300円の特別鑑賞券は、窓口のみ対応。 |
プログラマー:金子遊 佐藤寛朗 澤山恵次 若林良 吉田悠樹彦 津留崎麻子 田淵絵美 井河澤智子
顧問:矢田部吉彦
人類学・民俗映像部門予備審査員:山上亜紀 遠藤協 金子遊
メインヴィジュアル、フライヤーデザイン:三好遥
フライヤー編集協力:菊井崇史
WEBデザイン:古谷里美
主催:東京ドキュメンタリー映画祭事務局(neoneo編集室)
後援:一般財団法人 宮本記念財団
協賛:アジアンドキュメンタリーズ、エトノスシネマ
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、芸術文化振興基金
協力:いせフィルム、グリーンイメージ国際環境映像祭