映画情報どっとこむ ralph その実情に迫るドキュメンタリー『カルテル・ランド』の公開を記念し、初日5月7日(土)に、初日トークイベントが行われました。

登壇したのは丸山ゴンザレスさん。本編を観てTBSのバラエティ番組「クレイジージャーニー」にて、映画の舞台になったメキシコ・ミチョアカン州に潜入取材を敢行した犯罪ジャーナリスト。

テレビでは話す事の出来なかった決死の取材秘話、さらに今回の取材で明らかになった麻薬カルテル、自警団、政府をめぐる衝撃の真実、まさに<メキシコ麻薬戦争>の今を取材された氏だからこそ語れる、『カルテル・ランド』の続編とも言うべき貴重なトークイベントとなりました。
2016.05.07-丸山ゴンザレス登壇者真②

日時:5月7日(土)
場所:シアター・イメージフォーラム
登壇:丸山ゴンザレス(犯罪ジャーナリスト)

映画情報どっとこむ ralph 丸山さんが登場すると、場内は大きな拍手。

TBSの人気バラエティ番組“クレイジージャーニー”で『カルテル・ランド』の舞台となったメキシコ・ミチョアカン州に取材を敢行した丸山。

MC:『カルテル・ランド』を初めて観た時の印象は

丸山さん:最初は衝撃しかなかった。自分でもずっと、こういう潜入取材がやりたいと思っていた。だから、“やられた!”というのが最初の正直な感想です。

と、犯罪ジャーナリストとして『カルテル・ランド』へ覚えた羨望の気持ちを明かした。そうして『カルテル・ランド』に触発された丸山は、“クレイジージャーニー”にて実際に現地へ取材を実現。『カルテル・ランド』が撮影されてからおよそ2年後のミチョアカン州を訪れています。

丸山さん:政府、軍、麻薬カルテル、自警団、それぞれの“正義”が拮抗し、複雑に絡み合うメキシコの現状を肌で感じました。

とそう。『カルテル・ランド』では、自警団を結成した医師のホセ・マヌエル・ミレレスが、残忍な麻薬カルテル“テンプル騎士団”を追い出し、その後勢力を伸ばした自警団が腐敗し、悪に侵食されていく様が描かれる。

丸山さん:麻薬カルテルが後退したことで、かえって秩序のバランスが崩れた。現地の人は、生活を安定させてくれるなら、それが政府でも、自警団でも、麻薬カルテルでも構わないと思っている。自警団が正義なのかと言うと、決してそうではない。

と言い、さらに、

丸山さん:ミレレスは天性のカリスマがあり、今でも彼を認めている人は多いが、彼が逮捕され、いなくなったことで重石が取れたように自警団が自由に動くようになってしまった。“クレイジージャーニー”で取材を申し込んだところ拒否された(ミチョアカンの都市)アパティンガンの自警団は、麻薬カルテルを討伐する闘いには参加しておらず、いきなり“自称・自警団”として現れ、銃で武装して街をうろつき始めた。ミレレスとは何の関係もない。

と自警団の物騒な実態を明かし、

丸山さん:“自警団”というくくり自体、今は意味を成していない。映画で描かれた自警団は、今は空中分解しています。

2016.05.07-丸山ゴンザレス登壇者真①

映画情報どっとこむ ralph 映画では駆逐されたとされる麻薬カルテルも決して壊滅させられたわけではなく、

丸山さん:秘密結社のように水面下にもぐり、地域に根ざした暮らしをしている。取材中に、(メキシコで民間信仰の対象となっている死の聖母)“サンタ・ムエルテ”の売店を訪れた時、怖い外見の人がいるなと思っていたら、コーディネーターに“あいつ、カルテルのやつだよ”と言われました。こういう風に、カルテルの人間は身を潜めながら、逮捕されずに町中にいるんです。

続いて丸山さんは“クレイジージャーニー”ではオンエアされなかった“ヤバイ裏話”も披露。丸山さんが会ったその三日後に彼は殺され、その時には麻薬カルテル“テンプル騎士団”のメンバーとして報じられたという。

『カルテル・ランド』のマシュー・ハイネマン監督についても、

監督
マシュー・ハイネマン監督
丸山さん:監督は質素な生活を好む人。水を入れた水筒を持ち歩き、チーズを挟んだパンを食べるのが好き。取材で半日とか、長時間待つのにも耐えられる人だった。スペイン語ができないのに地元の農家の人に溶け込んで、今でも遊びにいくらしい。

と、現地の人から聞いた裏話を紹介。

MC:現地のカルテルの人間は『カルテル・ランド』に対して激怒しなかったのか?

丸山さん:コーディネーターから、“あいつらは、映画の文脈がわからないから大丈夫”と告げられた。カルテルのメンバーに実際に聞くと、“観たけどつまらないから15分でやめたよ”“「ブレイキング・バッド」が最高!”“『ボーダーライン』もおもしろい”と言われた。

と述べると、会場は笑いに包まれた。

映画情報どっとこむ ralph 最後に、

丸山さん:映画を観たらミレレスを正義と思うかもしれないが、そもそも正義とは何なのか?ということ。“正義”は耳あたりのいい言葉だけど、それぞれの集団にそれぞれの正義がある。“これが正義だ”と掲げられても、それは彼らにとっての正義で、相手にとっての正義ではないかもしれない。

正義とは何か、ということを『カルテル・ランド』を観て考えさせられた。

カルテルランドS1そもそも、広大な国土を持つメキシコでは、自分たちの手の届く範囲がとりあえず平和ならいいと多くの人が考えている。国家や政治について色々と言うこともあるけれど、人々の望みは、日々の生活を穏やかに暮らしたいということ。自分の会社や農園に課せられたみかじめ料が払えない、といった問題から自警団は結成される。

直接自分のところまでダメージが来たときに、人は立ち上がる。この映画が示したのは、国としてのシステムが機能しないとこういうことが起こるよ、ということ。これは決してメキシコだけの話ではない。日本人としても遠い話ではないんじゃないか

と客席に呼びかけ、トークを締めくくりました。

映画情報どっとこむ ralph 「過去10年で10万人以上もの死者を出した麻薬戦争」という衝撃的な事実を伝えるナレーションと共に、墓地で泣き叫ぶ人々の姿が映され、麻薬カルテルの残忍さ、被害の深刻さを伝えます。

カルテルランド_ポスターその後、聴診器をさげた男性が登場。優しそうなお医者さん・・・と思いきや、男は銃を構え、「家族は自分で守るしかない」と宣言します。

どう見ても普通の医者ではない・・・彼は、この過酷な現状を変えるべく自ら武器を手に自警団を設立したホセ・ミレレス。麻薬カルテルに立ち向かうべく立ち上がったのは一人の町医者だったのです。

「武器を持て 戦おう!」と市民を鼓舞するミレレスや、信頼できない政府への怒りを爆発させ、軍を街から追い出す大勢の市民の姿からは、自警団が勢いを増していくさまが伺えます。さらに、ミレレスたちの活動を見て「米国側は俺たちが守ろう」と意を決する、米国の自警団も登場。

しかし、何かがおかしい。「目には目を、歯には歯を」というミレレスの自警団員の言葉の通り、彼らの身を守るための“正義”は徐々に暴走を・・・。

『カルテル・ランド』
原題:CARTEL LAND

シアター・イメージフォーラム他公開中!
最前線を目の当たりにせよ!!

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監督・撮影:マシュー・ハイネマン
製作総指揮:キャスリン・ビグロー(『ハート・ロッカー』『ゼロ・ダーク・サーティ』)
2015/メキシコ・アメリカ/100分
配給:トランスフォーマー  
© 2015 A&E Television Networks, LLC


  

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