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公開記念試写会アフタートーク

 
第25回上海国際映画祭で最優秀監督賞・最優秀男優賞を受賞した、中国の国民的人気俳優フー・ゴー主演作『不虚此行(原題)』(東京国際映画祭タイトル:耳をかたむけて)が邦題『来こし方 行ゆく末』(配給:ミモザフィルムズ)として、2025年4月25日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開となります。
 
この度、映画の公開を記念し4月18日(金)に映画美学校試写室にて、映画監督の周防正行を招きトークイベントを行いました。
『来し方 行く末』
 
公開記念試写会アフタートーク
日付:4月18日(金)
場所:映画美学校試写室
登壇:周防正行

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周防正行登壇

 
周防氏は、日中文化交流協会の常任委員としても活動しており、本作にも「人が生きていくためには物語が必要だ。弔辞は亡き人の物語だが、亡き人のためのものではない。亡き人を送る人たちのための物語だ。もしかしたら「映画」もまた、この世に生きる誰かのための「弔辞」なのかもしれない。」と推薦コメントを寄せている。また、本作は脚本家志望の男性を主人公としており、監督が北京電影学院で脚本家の准教授として教えていることから、試写会には都内のシナリオスクールに通う約50名が参加しました。
 
『来し方 行く末』
 

「構図が変だな」と思ったところから始まった

 
まず、最初に触れられたのは、本作における映像の“構図”について。「最初に見て気になったのが、構図。特に、登場人物の頭がスクリーンの真ん中に来るようなカットが多くて、頭上に大きな余白がある。これはあまり映画や写真では使われない構図で、素人写真であれば初心者が無意識のうちにやりがちなよくある構図に近いのだけれど、それがほぼ全編にわたり貫かれているので、その意図を考えないわけにはいかない」と語った。また、脚本家でもある周防氏は、本作がシナリオを書く者にとっていかに深く突き刺さる作品であるかを強調する。「“人生に第三幕はない”というセリフがあって、僕ら映画を作る人間はきちんと第三幕までを書こうとする。でも、実際の人生には用意された結末なんてない。予定調和の美しいラストを書いてしまっていいのか?と、自問するような気分になる映画です」と語った。しかし、その上で、「家に帰ってシナリオを書きたくなる人もいるはず」と語り、本作の誠実な力に太鼓判を押した。
 
 

映画の題材は探さないようにしている

 
題材の選び方について聞かれると、周防監督は「映画の題材は探さないようにしている」と回答。「街や人を映画になるかなという目で見ると、自分の都合のいいように解釈してしまう。でも、そうしないようにしていても、好奇心が勝ってしまう。」と語る。自身の監督作『Shall we ダンス?』について、「電車の窓から見えた 駅近くの雑居ビルのダンス教室がきっかけでした」と創作の出発点を振り返った。また、脚本家・倉本聰氏のエピソードを引き合いに出しながら、「登場人物の背景をどこまで描くか」についても言及。「倉本さんが登場人物の ‘年譜’ を細かく作ると言っていたけど、自分はあまりやらなかった。でもこの映画を観ると、監督はそれをきっとやっているなと感じた。電話のシーンひとつにも、両親の存在がちゃんと背後にある。丁寧な人物設計を感じました」と話した。
 
 

中国の映画事情について

 
日中文化交流協会の常任委員としても2年に1度ほどのペースで中国を訪れる周防監督は、本作の監督であるリウ・ジアイン氏が教鞭をとる北京電影学院にも訪れた経験があると語る。「北京電影学院は超エリート校。少し前の世代では、中国で映画監督と言ったら、ここを出ていないとなれないくらいの場所で、倍率は200倍とか300倍で、中国各地からエリートが集まっている」とその実態に触れた。さらに、青島のある東洋一といわれる撮影所を視察した際のことにも言及。「設備も素晴らしい」とその施設の充実ぶりを称賛。その他、来場者から寄せられた質問にも丁寧に答えるなど、終始穏やかな雰囲気のなかでトークが繰り広げられた。
 

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『来し方 行く末』

原題:不虚此行
東京国際映画祭時のタイトル:耳をかたむけて
 
2025年4月25日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国順次ロードショー
 
公式サイト:
@koshikata/
 
弔辞作家の日常というユニークな題材を軸に、人々の人生模様や死生観を繊細に織り込んだヒューマンドラマが誕生した。主演は、華やかな時代劇スターから近年では『チィファの手紙』(18/岩井俊二)や『鵞鳥湖の夜』(19/ディアオ・イーナン)で内面を掘り下げた演技で芸域を広げる国民的人気俳優のフー・ゴー。同居人のシャオイン役は、『西湖畔に生きる』(23)で圧巻の演技を披露し、本作がフー・ゴーと三度目の共演となるウー・レイ。卒業制作『Oxhide (英題)』(05/原題:牛皮)で、第55回ベルリン国際映画祭でカリガリ映画賞と国際映画批評家連盟賞を受賞したリウ・ジアイン監督が、長年の思索を重ねて熟成させた14年ぶりの待望の新作。名匠ジャ・ジャンクー(『長江哀歌』『新世紀ロマンティクス』)やディアオ・イーナン(『薄氷の殺人』)も絶賛する、柔らかで洗練された確かな力を感じさせる本作は、第25回上海映画祭で最優秀監督賞と最優秀男優賞(フー・ゴー)を受賞した。この春、劇場でその深い余韻を味わって。

 

物語・・・

主人公のウェン・シャンは大学院まで進学しながら、脚本家として商業デビューが叶わず、不思議な同居人シャオインと暮らしながら、今は葬儀場での〈弔辞の代筆業〉のアルバイトで生計を立てている。丁寧な取材による弔辞は好評だが、本人はミドルエイジへと差し掛かる年齢で、このままで良いのか、時間を見つけては動物園へ行き、自問自答する。同居していた父親との交流が少なかった男性、仲間の突然の死に戸惑う経営者、余命宣告を受けて自身の弔辞を依頼する婦人、ネットで知り合った顔も知らない声優仲間を探す女性など、様々な境遇の依頼主たちとの交流を通して、ウェンの中で止まっていた時間がゆっくりと進みだす。
 
『来し方-行く末』ポスター

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監督・脚本:リウ・ジアイン[劉伽茵]
出演:フー・ゴー[胡歌]、ウー・レイ[呉磊] 、チー・シー[斎溪]、ナー・レンホア[娜仁花]、ガン・ユンチェン[甘昀宸] 
2023年/中国/中国語/119分/カラー/1:1.85/5.1ch 原題:不虚此行 字幕:神部明世 配給:ミモザフィルムズ
©Beijing Benchmark Pictures Co.,Ltd
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