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監督ティーチイン “新しい手法が生む新しい映像体験”を標榜し、過去に2本の短編映画がカンヌ国際映画祭から正式招待を受けた監督集団「5月」が、名優・香川照之を主演に迎えた初の長編映画『宮松と山下』が11月18日(金)より、新宿武蔵野館、渋谷シネクイント、シネスイッチ銀座ほか全国絶賛公開中。 この度、公開を記念して11月23日(水)に渋谷シネクイントにて上映後に監督ティーチインイベントが行われ、監督集団「5月」佐藤雅彦監督、関友太郎監督、平瀬謙太朗監督が登壇しました。 |
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監督「5月」ティーチイン
上映後、大きな拍手で迎えられた「5月」の3監督が登壇。 質問:第70回サンセバスチャン国際映画祭で日本の観客と反応が違った点は? 【平瀬謙太朗監督】(以下平瀬)600人くらいの方々と一緒に観たので、思ってもいなかった所で笑いが起きたりしました。特にビアガーデンで宮松が急ににこやかになるシーンで爆笑してくれて、「こんな所で笑ってくれるんだ」という嬉しさがありました。 【佐藤雅彦監督】(以下佐藤)ティーチインの後、たくさんの方が声を掛けてくれて、「もっと改善して良いのでは」というエネルギーを貰い、実際に映画祭後に(編集を)やり直したくらいです。 3人で一体なので、香川さんに「まるでキングギドラ」と言われた 質問:3人の役割分担について 【平瀬】実は分担はないのです。「3人で1人」という個性のもと脚本や編集をしています。現場に入ると、演出は関、モニターは平瀬で相談し、先生(佐藤)は今後どういうものが撮れるのかアイデアを出しています。でも完全に分けている訳ではなく、アイデアは出る人がやっています。 【佐藤】3人で一体のようなので、香川さんに「まるでキングギドラ」と言われました。 質問:作中に出てくる「ロープウェイ」のアイデアと意図について。ロープウェイの機械は巨大な映写機のようにも見えます。 【関友太郎監督】(以下関)気づいてくださりうれしいです。ロープウェイは絵的な面白さがあり、広く抜けている画が欲しかったという点から始まりました。脚本を書いていく中で、ロープウェイの揺れている感じが主人公の境遇のメタファーになりました。機械室が凄くて、カメラマンが撮ってくれた時に映写機みたいだと思い、何カットも撮りましたね。 【佐藤】本作はサスペンスなので、ペンディング(ぶら下がっている状態=不安定な状態)を示したかったのです。サスペンスの象徴になっていると思います。 質問:宮松が足を洗う時に血がついているようですが、どんな意味があるのでしょうか 【関】撮影現場でついた血のりを洗い流しています。実際の現場でも時間がないときは家で落としてもらっていました(関はかつてNHKでエキストラの演出担当をしていた)。シーンとしても、土と血の色が混ざり合うのが良かったと思います。 佐藤雅彦監督が主人公の作品を撮るとしたら、「自身で演じてほしい!」 質問:好きな映画、影響を受けている作品は? 【佐藤】監督ではないのですが、脚本家の橋本忍が好きです。作品は『切腹』(62)が好きで、橋本忍さんの鑑賞者の頭の中で起こっていることを重視して作っている部分が、『宮松と山下』にも影響されているのではないかと思います。 【関】アッバス・キアロスタミ監督の作品を、最近また観直しています。物語だけに頼らず映像や音で表現しているのが好きで、映像で表現したいという部分で影響を受けていると思います。 【平瀬】好きな映画監督はたくさんいますが、特にスタンリー・キューブリック監督に影響を受けています。「映像言語」と呼んでいますが、映像によってどう伝えるか、どう気持ちを変化させるかという部分に影響を受けていると思います。 質問:使用していないカットで気に入っているものは? 【佐藤】「整理整頓された引き出し」が出てくる場面で、日付印を入れておいて、それを押すと12年前の日付が出る、という設定で撮影したのですが、使うことが出来ず、とても残念に思っています。 【関】12年前の藍(中越典子)と宮松が歩くシーンを2階から撮る画があって、風が吹いていて良い雰囲気でしたが、上手く入る場所がなく断念しました。とても綺麗だったので残念です。 【佐藤】去年の9月に撮影したんですが、天候に恵まれていい天気続きだったんです。撮影した家の庭が素晴らしく、百日紅が本当にきれいだったんですよね。本編には入っていませんが、ポスターの裏表紙に入れているシーンです。 【平瀬】私が気に入っているのに入れられなかったシーンは、エキストラのシーンです。これは勿体なかったです! 色々な死に様がありました。他にも、草むらに潜んでいた人が立ち上がって、その反対側には火縄銃を構えた人がいて、どんどん人が倒れていく場面もあります。贅沢なカットがたくさんありました。 質問:佐藤雅彦監督が主人公の作品を撮るとしたら、誰に演じてもらいたいか? 佐藤さんは答えにくいと思うので、平瀬さん、関さん、お答えください。 【平瀬】佐藤監督は演技が上手なので、自身で演じるのもありかな、と思います。 【関】『宮松と山下』でも、佐藤さん自らたまにリハーサルで演じていて。エキストラを演じているカットもあるんです。 【佐藤】え、自分たちで試しに演じる以外に方法ないよね? でも演じましたね、子供とかも…。 最後に、監督たちから一言。 【佐藤】映画とは言葉による物語が主になっているが、我々は手法から生み出してテーマやストーリーを見出すことをやっています。これからも変わらずに、温かく見守っていただければと思います。 【関】「静かで緊張感のある映画」という意見をたくさん頂いています。劇場で観た方が没入感や緊張感が入りやすい作りになっているので、周りの方にも是非、映画館で観ることをおすすめしていただきたいです。 【平瀬】絶対に映画館で観た方が良いです! この映画の香川さんはテレビで観ることがあまりない香川さんだと思います。貴重なので、是非とも映画館でご覧いただきたいです。 イベント中もひっきりなしにインターネットを通じて質問が寄せられるほど、静かだが熱を持ったティーチインイベントは、多くの質問に答えたことで大きな満足をもたらして終了となった。 |
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『宮松と山下』11月18日(金)新宿武蔵野館、渋谷シネクイント、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー <ストーリー>宮松は端役専門のエキストラ役者。ある日は時代劇で弓矢に打たれ、ある日は大勢のヤクザのひとりとして路上で撃たれ、 またある日はヒットマンの凶弾に倒れ…… |
香川照之
津田寛治 尾美としのり
野波麻帆 大鶴義丹 尾上寛之 諏訪太朗 黒田大輔
中越典子
監督・脚本・編集:関友太郎 平瀬謙太朗 佐藤雅彦
企画:5月 制作プロダクション:ギークサイト
協賛:DNP大日本印刷
配給:ビターズ・エンド
製作幹事:電通
製作:『宮松と山下』製作委員会(電通/TBSテレビ/ギークピクチュアズ/ビターズ・エンド/TOPICS)
©2022『宮松と山下』製作委員会