日本人として初めてヴェネツィア・ビエンナーレ&ヴェネツィア国際映画祭の全額出資を得た長谷井宏紀監督がフィリピンを舞台に撮影し、世界中の映画祭で高い評価を得た話題作『ブランカとギター弾き』がシネスイッチ銀座ほかにて7月29日(土)より全国順次公開中。舞台はカラフルでエネルギーに溢れたマニラのスラム。母親を買うことを思いついた孤児の少女ブランカと、盲目のギター弾きの“幸せを探す旅”。本作はどんな人生にも勇気を持って、立ち向かう価値があることを教えてくれる、心温まる感動作です。
このたび、本作の監督を務めた長谷井宏紀監督と、長谷井監督と以前から親交のある俳優の加瀬亮さんとのトークイベントが開催されました。 『ブランカとギター弾き』加瀬亮登壇イベント |
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感動の渦に包まれた場内に加瀬亮さんと長谷井監督が登壇。
加瀬さん:こんばんは。宏紀くんとはほぼ20年くらい付き合いがあるんですけど、初めて商業映画で初監督ということで駆けつけました。宜しくお願いします。 と、 長谷井監督:お忙しいところ銀座までありがとうございます。 とそれぞれ挨拶をした。 長谷井監督との出会いに関して 加瀬さん:昔、宏紀くんが大きな一軒家に住んでいて、その家にミュージシャンやデザイナー、写真家、絵描きいろいろな人が集まって暮らしていて、面白いって聞いたので、遊びに行ったんですが、家の扉が年中開けっ放しなんですね。誰にも出入りできるような場所を作っている宏紀くんに会って、朝から夜までずっといろいろなことを話していました。今回初長編監督、ということなんですけど、この前に(長谷井監督の)短編映画を4本くらい観ていて、一番最初に監督が作った作品にはスタッフで参加したりしました。 と話し、映画の感想を聞かれると、 加瀬さん:僕は宏紀くんがフィリピンで撮った短編作品も2本観ているから、初めてな気がしない。すごくよかった。今回はっきりとしたストーリーがあったから、宏紀くんが何を信じたいのか、がはっきり見えてきた。今までの短編も好きだったけど、なかなか分かりにくい構造の作品ではあったから、今回はどうやって物語を作っていったんだろうと思った。 と話し、そこから、以前の短編との製作の違いの話になると、 長谷井監督:今までは物語を書くっていうことがあまり分かっていなかったから、ヴェネツィア・ビエンナーレ主催のシネマカレッジに応募したことや、映画作りの仲間たちに出会ったことが大きかった。それより以前に、エミール・クストリッツァ監督に出会って、そこから脚本を書く、ことを知った。僕に目をかけてくれていたプロデューサーが亡くなったりして、プロジェクト自体が止まっちゃったのだけど、シネマカレッジが僕を気に留めてくれて、そこで映画作りのノウハウを学んだんだ と製作に至るエピソードを振り返った。 そこから長谷井監督がフィリピンに興味を持った発端の話になり、 長谷井監督:ある友人が撮ったモノクロのスモーキーマウンテンの写真を見て、自分の中で気になって、行って見たいという好奇心が生まれた。実際行ってみると、彼が捉えた美しさとは違った美しさ、子供の力に出会えた。かっこいいな、って思って、この美しさを他の人と分かち合いたいなって思いました。 と作品の起点となる出会いを語りました。 |
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最初に撮った短編の話になると、
加瀬さん:最初に撮った短編は、すごく衝撃的だった。その次の短編には今作にも出ているピーターが出演しているね。だから『ブランカとギター弾き』は僕にっとて、初めて観た作品というよりは、繋がっている。フィリピンに行って、スラムの人に出会って、何かが吹っ切れたんだね。具体的に何があったのか気になるよ。 と質問しました。すると 長谷井監督:僕が行ったスラムで、サーフィンしている子どもがいたんだけど、サーフィンボードが冷蔵庫の蓋だったんだよね。その自由さとかエネルギーとか、サーフボードを手に入れて波に乗るっていう発想ではなくて、そこに冷蔵庫の蓋があったから、波に乗る、という発想はすごいなって思った。 とスモーキーマウンテンで出会った一人の少年を振り返った。 実際に撮影が始まると、様々な困難はあったが、 長谷井監督:結局はその前にある波に乗るか、乗らないか、だよね。 と話し、 長谷井監督:クライマックスのブランカが泣いて笑う、という演技はやっぱり11歳の女の子には難しいことだった。そのシーンは撮影最終日に撮ったんだけど、カメラを回しっぱなしにしたまんま、スタッフさんが撮影を振り返って、という話をブランカ役のサイデル(・ガブテロ)にすると、サイデルはやはり思いが有り余って、涙が出ちゃうんだよね。同時に笑うというのができない。そんな中、みんなが歌って踊り始めた。ジョークを交えたりしてね。とても良い雰囲気だった。そこでサイデルが笑っちゃうんだよね。こんなに幸せなことないって思って、中々そこではカットがかけられなかった(笑)。 と撮影中のエピソードを振り返ると、加瀬さんも自身の経験を振り返り、 加瀬さん:映画って一人ではできないし、演技経験があっても、実は演技が初めての女の子と一緒だと思う。泣くってシーンがあっても、周囲や自分がそういう雰囲気ではなかったら、やっぱり俳優も泣けないんだよね。経験があるからとか、技術があるからとかは違うんだ。人間が普段、涙を流す時って、“泣くもんか”や“泣きたくない”っていう気持ちがあるはずなんだよね。だから、心のこもらない涙は、他人の心を動かすことが出来ないと思う。 と演技に関して語った。 長谷井監督は、今後の監督作品に関して聞かれると 長谷井監督:沖縄でも撮影してみたい。 加瀬さん:僕も沖縄行ったことあるけど、この作品に出てくる子供たちくらいに、沖縄の子供たちのパワーがすごい。撮影後に待ち伏せされていて、水鉄砲でビショビショにされたよ(笑)その後、彼らから水鉄砲渡されたから、やられたのと同じくらいビショビショにし返した。(笑) と沖縄での撮影のエピソードを振り返った。 20年来の友人であり、同い年である二人の話は大いに盛り上がり、予定の30分を越してのトークイベントとなったが、 |
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最後に
加瀬さん:話し込んでしまってすみません。今日はありがとうございました。これからも長谷井宏紀を宜しくお願いします。 と、 長谷井監督:ご来場ありがとうございました。加瀬くん来てくれてありがとう。 と加瀬さんに感謝を述べ、イベントは幕を閉じた。 「ブランカとギター弾き」 劇場に足をお運び頂ければ。 “お母さんをお金で買う”ことを思いついた孤児の少女ブランカは、ある日、盲目のギター弾きピーターと出会う。ブランカはピーターから、得意な歌でお金を稼ぐことを教わり、二人はレストランで歌う仕事を得る。ブランカの計画は順調に運ぶように見えたが、一方で、彼女の身には思いもよらぬ危険が迫っていた…。 HP: Twitter: 監督に興味を持たれた方、長谷井宏紀監督への単独インタビューもどうぞ |
監督・脚本:長谷井宏紀
製作:フラミニオ・ザドラ(ファティ・アキン監督『ソウル・キッチン』)
制作:アヴァ・ヤップ
撮影:大西健之
音楽:アスカ・マツミヤ(スパイク・ジョーンズ監督短編『アイム・ヒア』)、フランシス・デヴェラ
キャスト:サイデル・ガブテロ / ピーター・ミラリ / ジョマル・ビスヨ / レイモンド・カマチョ
2015年 /イタリア/ タガログ語 / 77分 / カラー / 5.1ch / DCP /
日本語字幕:ブレインウッズ/
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