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トークイベント

この度、11月3日(金・祝)より全国順次公開の『パトリシア・ハイスミスに恋して』の日本公開を記念して、新宿シネマカリテにて、公開初日の11月3日(金・祝)12:00の回上映後に、杉田協士監督(映画監督)と月永理絵氏(ライター/編集者)によるトークイベントが行われました。
『パトリシア・ハイスミスに恋して』トークイベント
日付:11月3日(金・祝)
場所:新宿シネマカリテ
登壇:杉田協士監督(映画監督)と月永理絵氏(ライター/編集者)

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杉田協士監督、月永理絵登壇

イベントは、最新作『彼方のうた』が第80回ヴェネチア国際映画祭ヴェニス・デイズ部門、第36回東京国際映画祭Nippon Cinema Now 部門にて上映された杉田協士監督と、映画ライター、編集者として数多くの映画作品の映画評、解説を手掛ける月永理絵氏が登壇し、『太陽がいっぱい』『キャロル』『見知らぬ乗客』『アメリカの友人』など映画史に残る名作の原作の数々を生み出した、パトリシア・ハイスミスの素顔を掘り下げた本作の魅力を語った。

「嘘のない、誠実な作りに感動」

ハイスミスの入門書であり、光の部分を見つめたドキュメンタリー。

まず本作の感想を聞かれると月永氏は「ハイスミスを知るための入門書のような映画だと思いました。ハイスミスという人の世界に入っていくための扉を開けてもらったような印象を受けました。」とコメント。『パトリシア・ハイスミスに恋して』トークイベント

杉田監督は「自分がとても好きな映画の原作の人ということで多少知っている程度だったのですが、今日スクリーンで本作を改めて観てとても感動しました。」「走っている車の中から撮られた(ハイスミスが実際に暮らした)ペンシルバニアの道や家々などの風景が心に残りました。それはエヴァ監督がもう会うことのできないハイスミスのことを本当に思って、あの場所に行ってカメラを置いたんじゃないか。部屋の中で時計の針の音だけ聞こえたり…今はもう会えない人を思うことしかできないということに嘘がない、誠実な作りだなと感じました。」と監督の視点から本作の魅力を掘り下げた。『パトリシア・ハイスミスに恋して』トークイベント

また月永氏は、本作に出演する証言者について「ハイスミスと恋に落ちた女性たちを中心に、良い笑顔で、親密さを込めてハイスミスとの思い出を語るかつての恋人の女性たちという映し方をしているドキュメンタリーで感動しました。」と話すと、杉田監督も「隠さずに話しているのが良いですよね。」と共感。さらに月永氏が「ハイスミスの作風は殺人を扱っていたりとか、常に暗いムードが漂っていて、後年は閉じこもって暮らしていたり、そういう話を聞いていたので、彼女のドキュメンタリーを作るとなるともしかしたらもっと暗い部分を暴いていくような映画にもなり得たかもしれないなと思うのですが、この作品は彼女を愛した人たちの言葉によって、彼女の光の部分を見つめようとする映画だと捉えました。」とコメントすると、杉田監督も「ハイスミスが晩年にスイスに移り住んだ家は要塞のようだったと紹介されていますが、そのあとに彼女が書斎で執筆しているモノクロ写真が出てくるんです。戸が開け放たれていて、陽が差している部屋で彼女は執筆していたというのもきちんと残しているんですよね。」と語った。また本作に織り交ぜられるハイスミスが過ごした家や街の様子などを映したアーカイブ映像についても「名もなき良い作り手が撮った映像!」と言及し、会場が笑いに包まれる一幕も。
『パトリシア・ハイスミスに恋して』トークイベント
杉田監督、月永氏のお気に入りのハイスミスの映画化作品とは―
『アメリカの友人』ヴィム・ヴィンダース監督とハイスミスの知られざるエピソードも披露
最後にハイスミスの映画化作品についての話題となると、杉田監督はハリウッドでヘイズ・コードが施行されていた時代にどのように同性愛が描かれてきたかを紐解く『セルロイド・クローゼット』(95)というドキュメンタリーの中で『見知らぬ乗客』(51)は登場しない点に言及し、「ハイスミスがレズビアンであることは暗黙の了解だったと語られることがありますが、当時どこまで、もしくはどの界隈の人まで認知されていたのかは未知かもしれないと思いました」とコメントすると、月永氏も「確かに同性愛的な関係性はハイスミスの小説にはしばしば描かれていて、映画化する監督たちはどこまで意識していたのか改めて観直してみたくなりました。」とコメント。
『パトリシア・ハイスミスに恋して』トークイベント
また一番観たくなった映画化作品に月永氏は『見知らぬ乗客』と、ラストシーンが衝撃的だったというクロード・シャブロル監督の『ふくろうの叫び』(87)を挙げると、杉田監督は「実はヴィム・ヴェンダース監督が一番最初に映画化したくて打診した作品が『ふくろうの叫び』だったらしいんですよ。」と逸話を披露。しかしすでに権利が売られていたために落ち込んでいたところ、それを聞きつけたハイスミスが直接ヴェンダース監督を呼び寄せ、出版前の『リプリーズ・ゲーム』を渡したことで『アメリカの友人』(77)が制作された、という知られざるエピソードも語り注目を集めた。来年1月5日より公開の杉田監督の最新作『彼方のうた』にも『アメリカの友人』に影響を受けたシーンが登場するということだが、好きな作品には『キャロル』(15)を挙げ、「『キャロル』のスタッフ全員がハイスミスのことを思っているのかなっていうくらい、凄いんですよ。」と語る。さらに『セルロイド・クローゼット』と同様、カーター・バーウェルが手掛けた『キャロル』の音楽や、映画史に残る名シーンであるキャロルとテレーズの出会いのシーンを細かく分析し、月永氏も「この映画を観て『キャロル』がハッピーエンドで終わるということがどれくらい大事で、革命的だったのかということがよくわかって感動しました。」とトークを締めくくった。

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『パトリシア・ハイスミスに恋して』

11月3日(金・祝)より新宿シネマカリテ、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開中。

公式サイト:
@highsmith/  

アメリカの人気作家パトリシア・ハイスミスの知られざる素顔を紐解くドキュメンタリー

物語・・・
トルーマン・カポーティに才能を認められ、『太陽がいっぱい』『キャロル』『アメリカの友人』を生んだアメリカの人気作家、パトリシア・ハイスミス。生誕100周年を経て発表された秘密の日記やノート、貴重な本人映像やインタビュー音声、タベア・ブルーメンシャインをはじめとする元恋人たちや家族によるインタビュー映像を通して明かされる、多くの女性たちから愛された作家の素顔とは―。ヒッチコックやトッド・ヘインズ、ヴィム・ヴェンダースらによる映画化作品の抜粋映像を織り交ぜながら、彼女の謎に包まれた人生と著作に新たな光を当てるドキュメンタリー。
パトリシア・ハイスミス

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監督・脚本:エヴァ・ヴィティヤ ナレーション:グウェンドリン・クリスティー
出演:マリジェーン・ミーカー、モニーク・ビュフェ、タベア・ブルーメンシャイン、ジュディ・コーツ、コートニー・コーツ、ダン・コーツ
音楽:ノエル・アクショテ 演奏:ビル・フリゼール、メアリー・ハルヴォーソン
2022年/スイス、ドイツ/英語、ドイツ語、フランス語/88分/カラー・モノクロ/1.78:1/5.1ch 原題:Loving Highsmith 字幕:大西公子 
後援:在日スイス大使館、ドイツ連邦共和国大使館 配給:ミモザフィルムズ
© 2022 Ensemble Film / Lichtblick Film

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