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人は守るため、嘘を吐き、そして裏切る

『未来は裏切りの彼方に』は、閉鎖的な軍需工場のある小さな村を舞台に、生き延びるために奔走する男女を描いたサスペンス・ドラマ。

ナチス・ドイツの支配に対して起こったスロバキア民衆蜂起を背景に、「小さな王国(原題)」とも言うべき傲慢な男が独裁的に経営する軍需工場で、生存を懸け繰り広げられる愛憎劇、パワハラ、裏切り、忍び寄る戦争の暗い影。衝撃のラストが胸を打つ。

4月14日(金)よりアップリンク吉祥寺、シネ・リーブル梅田、アップリンク京都、あつぎのえいがかんkiki、4月15日(土)より新宿K’s cinemaほかにて全国順次公開されるのを前に、新進気鋭のスロバキア人のペテル・マガート監督インタビューが届きましたのでご紹介。
ペテル・マガート監督

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ペテル・マガート監督のインタビュー

Q:本作制作の経緯を教えてください。

A:きっかけは、実は全く違う企画のためにプロデューサーに会った時に、「もう数年間、デブリスカンパニーのダンスの舞台に基づいたプロジェクトの準備をしているんだけど、やらない?」と聞かれたことです。正直、コンテンポラリーダンスアートについて理解があるとは言えない人間なので、「やってもいいけど、普通にストーリーがある実写映画にしよう」と提案しました。イギリスに住んでいる北アイルランド人の脚本家のユエン・グラスと、早速脚本を作って、スロバキアで通常制作されるものとは違うような映画を作ろうということになりました。時間がとても限られていたのですが、とにかく素晴らしいスタッフが集まったので、短い時間でやり遂げたと思います。参加した人のみんなにとって、一生忘れられない体験になったと思います。みんなに出会えてよかったです。

Q:本作は、どれぐらい事実に基づいてるでしょうか?

A:第二次世界大戦を映画のテーマにして撮るつもりはなく、衝突そのものをテーマにしたかったんです。男たちがみんな連れ去られて、女性たちが何事も一人で解決しなければいけないという世界では何が起こるだろう、という映画です。なので、第一次、第二次あるいは第三次、第四次世界大戦が舞台でもよく、そこは形式的なもので、普遍的なものを目指していました。とはいえ、当時の小道具や当時の雰囲気を残すロケ地を使って、あの時代に寄せてはいます。でも、史実に忠実な映画ではありません。この映画は、人間関係についての映画で、ドラマで、ラブストーリーです。戦争映画のように銃を持った男たちの撃ち合いなどはありません。

Q:町などは特定されていませんが、当時どの町にでも起こり得たであろう話なのでしょうか?

A:ストーリーのおおもとは、スロバキアで起こっていたことにインスパイアされています。特にゲメル地域というスロバキアの一部(南部)には、ドイツ人が所有する工場がたくさんあった産業地帯があったんです。それに影響を受けました。ドイツ人の投資家のおかげでスロバキアが発展した一方で、第二次世界大戦時には色々な変化がありました。映画に出てくるバールのような人ばかりではなかったはずですが、戦後、大部分のドイツ人はドイツに帰らざるを得なかったのです。なので、第二次世界大戦中のスロバキアであれば、どこででも起こりえたストーリーではあると思います。

Q:スロバキア国内の映画賞で、最優秀アートディレクション賞にノミネートしましたが、どの部分がありもので、どの部分が、一から作ったものですか?

A:美術のユライとは非伝統的なやり方でいこうと決めました。事実に固執せず、できるだけ現実的な場所を見つけ、その場所に基づいてストーリーを工夫することにしました。ゲメル地域はどちらかといえば貧しい地域なのですが、戦前はとても豊かな産業地でした。ロケ地をたくさん見つけることができて良かったです。見つけたロケ地に少し手を加え、仕上げ、それがうまくいきました。撮影のために何かを建てるということはしませんでした。

Q:原題が”Little Kingdom”ですが、タイトルの由来をお教えください。

A:ユエンの思い付きでした。リトル・キングダム、小さな王国、小さな領土。少しおとぎ話のようにしたかったのです。でも、おとぎ話からはほど遠い現実世界の中で。おとぎ話にはお城がありますよね。この映画の場合だと工場です。ここに金持ちの王様が住んでいます。けれど、バールはいい王様ではありません。周りの町には臣下の者たちが住んでいます。このお城/工場がある谷は、おとぎ話に出てくる、7つの山を越え、7つの谷を越えた場所のようなものです。

Q:本作の見どころはどこだと思いますか?

A:私たちが作ったのは、ラブストーリーですが、伝統的なそれではありません。愛は、何世紀、何千年にわたって続く普遍的なテーマです。でもここで描かれるのは、人間の愚かさに傷つく愛です。戦争、被害妄想、嫉妬などは本当に愚かなものですが、第二次世界大戦の時も今も同じように、私たちはお互いを傷つけ合っています。

また、仕上がりの美しい映画になったと思います。撮影した場所は、管理する人がおらず、徐々に廃れつつある場所です。映画に出てくるロケ地はすべて、遺産的な場所ですが、残念ながら手入れをする人がいないので、10-20年後にはもう存在しないかもしれません。さまざまな縁の結果、撮影できたんです。
音楽に関しては、アイスランド出身の素晴らしいミュージシャンとの出会いに恵まれて、彼とスロバキアで尊敬されているワルハロウツィという音楽団の協力の元、世界に誇れる、素晴らしいサウンドトラックが完成しました。

色々な見どころがありますし、観客の皆さんには、他の映画とは違う部分を、たくさん見つけてもらえると思います。

Q:読者にメッセージをお願いします。

A:ぜひ、映画を観にきてください。皆さんそれぞれに、訴えかけるものがきっと見つかると思います。歴史物が好きじゃない方は、ラブストーリーを楽しめるでしょう。ラブストーリーが苦手な人は、逆に歴史的な部分を楽しめると思います。他人の失敗から学べる人なら、この映画はまさにあなた向けです。でも、観るべき一番の理由は、あらゆる芸術が美しく絡み合うことじゃないでしょうか。1時間半、その美しい流れ、エヴァとジャックの物語に浸ってもらえたらと思います。

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『未来は裏切りの彼方に』

原題:Little Kingdom

4月14日(金)よりアップリンク吉祥寺、
4月15日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開

公式サイト:
https://littlekingdom.jp/

公式ツイッター:
@littlekingdomjp
イントロダクション
1944年、スロバキア第一共和国。第二次世界大戦下、仲間たちが楽しむ娼館を後に、部隊から脱走した一人の若い兵士がいた。彼は、流産後田舎の軍需工場で働く妻の元に身を寄せ、脱走兵であることを隠しながら妻と共に工場で働き始める。しかし、運命のいたずらか、娼館にいた謎の美女が工場経営者と結婚するために村にやってきて……。

新進気鋭のスロバキア人監督ペテル・マガートが、デブリス・カンパニーの舞台劇「EPIC」をベースに、北アイルランドの脚本家ユエン・グラスが手掛けたオリジナル脚本を映画化。これが長編デビュー作となる。

エヴァ役には、スウェーデン生まれの『ザ・クーリエ』(2019)出演のアリシア・アグネソン、ジャック役には、イギリス出身で『リジェネレーション』(2015)でも主演したラクラン・ニーボア。バール役には、アメリカ出身で、『ジョジョ・ラビット』(2019)や『ヘルボーイ』(2004)出演のブライアン・キャスプ、謎の美女・キャット役には、クロアチア出身のクララ・ムッチなど、世界各国からキャストが集結した。

STORY
第二次世界大戦末期、スロバキア第一共和国の歩兵部隊は森の中に佇む娼館を見つけ、ひと時の休息を楽しんでいた。仲間たちが娼婦と個室に消えるなか、流産したばかりの妻エヴァ(アリシア・アグネソン)から届いた手紙を握りしめていたジャック(ラクラン・ニーボア)は娼館を抜け出し、夜の森を走り出す。銃声の音を耳にしながら軍から脱走したジャックは、エヴァとの再会を果たし、エヴァが傲慢な男バール(ブライアン・キャスプ)が経営する田舎村の軍需工場で働いていることを知る。脱走兵であることを隠し、工場で働き始めるジャック。そんな中、戦後の工場経営に危機を感じていたバールは、注文確約の条件して政府の役人ハナーチェク(ヤン・ヤツクリアク)の愛人との結婚を要求される。その女とは、ジャックが逃げた娼館にいた美女・キャット(クララ・ムッチ)だった-。
未来は裏切りの彼方に_ポスタービジュアル

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(CAST)
アリシア・アグネソン ブライアン・キャスプ ラクラン・ニーボア クララ・ムッチ
ヤン・ヤツクリアク クリスティーナ・カナートヴァー 
アビゲイル・ライス エイミー・ラフトン 

(STAFF)
監督:ペテル・マガート
脚本・原案:ユエン・グラス
脚本:ルツィア・ディッテ、ミハエラ・サボ
プロデューサー:ズザナ・ハディモヴァー、ブラニスラヴ・フルピーク

2019年/スロバキア/98分/カラー/シネマスコープ/5.1ch/英語

配給:NEGA
©2020littlekingdom

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