|
武蔵野美術大学 ティーチイン
映画『PLAN 75』が6月17日(金)に新宿ピカデリーほか全国公開となります。
この度、公開に先駆け、武蔵野美術大学で行われたティーチイン付き試写会早川千絵監督と撮影監督の浦田秀穂さんが登壇しました。
映画『PLAN 75』 武蔵野美術大学 ティーチイン付き試写会
日時:6月9日(木)
会場:武蔵野美術大学
登壇:早川千絵監督、浦田秀穂撮影監督
|
|
早川千絵監督、浦田秀穂撮影監督
第75回カンヌ国際映画祭でカメラドール特別表彰を受けた映画『PLAN 75』(6月17日公開)の公開に先駆け、武蔵野美術大学の学生向けにティーチイン付き試写会が6月9日に行われ、早川千絵監督と撮影監督を務めた浦田秀穂が参加した。
武蔵野美術大学1号館104教室で開かれたティーチインには、約180名の学生や学校関係者らが集まった。映画『PLAN 75』を観て、若い世代がどのような感想を持ったのかを直後聞ける機会を非常に楽しみにしていたという早川監督の挨拶からティーチインは始まった。
映像制作を学んでいる学生から、画面に意味を持たせる作用があったように感じたというカメラワークについて尋ねれられた早川は、「ミチ、ヒロム、マリアと三人の主人公がいる物語なので、それぞれのトーンをどう変えていくのかということを最初に浦田さんと話し合いました。その中で、マリアは、とにかく生きるという気持ちが強いキャラクターだったので、彼女のそういった姿をビビッドに表現するために手持ちカメラで撮影しようと決めました」と意図を明かした。
撮影を担当した浦田は、「脚本段階で決めることはなく、現場で監督の演出や役者の動きを見ながら、カット割りや撮影方法を決めていきました」と振り返る。続いて、自身でも脚本を執筆しているという学生からは、「物語の大筋的な部分や転換には深い影響がないような登場人物たちの細かいディテールやシーンが多いと感じました。私自身はディテールを細かく書くのが苦手なのですが、脚本を書く際に意識していることはありますか?」と質問された早川監督は、「一見すると物語に関係ないと思われるかもしれませんが、割とそれぞれのシーンに意味を込めています。例えば、ミチが同僚たちとカラオケで歌うシーンですが、彼女にとって幸せな場所があったことを描いています。物語が進む中で、そういったミチにとっての幸せがどんどん失われていく様をいかに際立たせるかを考えて作ったシーンです」と具体的なシーンを挙げて説明。「映画にとってディテールは大事です。私が今まで好きな映画というのは、別にそのシーンが無くても成立するのに、なぜかそこのシーンだけ覚えているとか印象に残るというものが沢山あります。ですから、そういったシーンをなるべく大事にしていて、脚本の段階から入れたいなと思っています」とこだわりを教えてくれた。浦田は、「完璧な脚本というのがあるとは思っていません。今作の脚本を初めて読んだ際、監督に“セリフが多すぎる”と言ったのを覚えています(笑)でも、実際に現場で役者の方がセリフを発すると、脚本で読んだ時とは違う印象を受けることがあるし、言葉が無くても成立するシーンもある。役者が演じることで変わっていく部分というのがあるので、脚本に書かれていないものを現場で汲み取っていく力も大事です」とカメラマンとしての見解を示した。
劇中で描かれているお年寄り同士の会話やミチの暮らしぶりを見て、将来の自分の姿を想像し、年老いて邪険に扱われる日が来るのかと思うとビックリしたが、世代問わず誰もが共感できる映画だなと思ったと学生が感想を述べると、「歳を取ったおばあちゃん達は自分とは違うという考えや記号しての高齢者ではなく、私たちの地続きに居る人だということを描きたかったんです。私たちが70歳、80歳になったらいきなり違う人間になるというわけではない。高齢者の方々にも友だちがいて、好きなものがあって、性格があって…自分と同じ人間なんだというのを、特に若い人たちが観た時に感じて欲しいなと思っていたので、(そういう感想を言っていただけて)すごく嬉しいです」と早川監督は笑顔を見せた。
最後にこれから映画業界や芸術分野に進もうとしている学生たちに制作者として居続ける為のアドバイスを求められると、浦田は「好きなことをやれるのは多分10年ぐらいだと思うんです。信じてやり続けることはもちろん大事ですが、作り続けることが一番難しいので、続けられるモチベーションを今から何か探しておく。僕もよく言われてきたんですが、“好きなことをやる為に、やらなきゃいけないことを必ずやっておく”、これが一番大事だと思います」と語り、早川監督は「映画を作りたいと思ったのは小学生や中学生の頃だったけれど、実際に映画作りの一歩を踏み出せたのは30代半ばでした。若いうちにしか撮れないものももちろんあるけれど、結構遠回りしていろんな紆余曲折があったからこそ撮れるものもある。好きだったら、ずっと続けて、しぶとくやっていくと良いのではないかと思います」と自身の経験を踏まえ、アドバイスを贈った。
|
|
『PLAN 75』
6月17日(金)より、新宿ピカデリーほか全国公開
公式サイト:
@plan75/
Twitter:
@PLAN75movie
#PLAN75
STORY
少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本。満75歳から生死の選択権を与える制度<プラン75>が国会で可決・施行された。様々な物議を醸していたが、超高齢化問題の解決策として、世間はすっかり受け入れムードとなる。
夫と死別してひとりで慎ましく暮らす、角谷ミチは78歳。ある日、高齢を理由にホテルの客室清掃の仕事を突然解雇される。住む場所をも失いそうになった彼女は<プラン75>の申請を検討し始める。一方、市役所の<プラン75>の申請窓口で働くヒロム、死を選んだお年寄りに“その日”が来る直前までサポートするコールセンタースタッフの瑶子は、このシステムの存在に強い疑問を抱いていく。また、フィリピンから単身来日した介護職のマリアは幼い娘の手術費用を稼ぐため、より高給の<プラン75>関連施設に転職。利用者の遺品処理など、複雑な思いを抱えて作業に勤しむ日々を送る。果たして、<プラン75>に翻弄される人々が行く着く先で見出した答えとは―。
|
***********************************
倍賞千恵子
磯村勇斗 たかお鷹 河合優実 ステファニー・アリアン 大方斐紗子 串田和美
脚本・監督:早川千絵
脚本協力:Jason Gray
エグゼクティブ・プロデューサー:小西啓介 水野詠子 國實瑞惠 石垣裕之 Frédéric Corvez Wilfredo C. Manalang
プロデューサー:水野詠子 Jason Gray Frédéric Corvez Maéva Savinien
企画・制作:ローデッド・フィルムズ
製作:ハピネットファントム・スタジオ ローデッド・フィルムズ 鈍牛俱楽部 WOWOW Urban Factory Fusee
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ
©2022『PLAN 75』製作委員会/Urban Factory/Fusee
関連記事: