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一般試写会トークイベント

北欧デンマークの新たなる鬼才・クリスチャン・タフドルップ監督の最新作『胸騒ぎ』が、5月10日(金)新宿シネマカリテほか全国公開となります。

この度、劇場公開に先駆けて、4 月 17 日(水)にホラー作家・平山夢明氏と映画評論家/文筆家の氏家譲寿(ナマニク)氏登壇のトーク付一般試写会が開催されました。
『胸騒ぎ』トークイベント
映画『胸騒ぎ』一般試写会上映後トークイベント
日時:4/17(水)
場所:ユーロライブ(東京都・渋谷)
登壇:平山夢明[作家]、氏家譲寿(ナマニク)[映画評論家・文筆家]

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ホラー作家x映画評論家

「アリジゴクの中で獲物が落ちてくるのをずっと待っているような映画」

衝撃かつ壮絶なラストシーンを鑑賞し終えたばかりの、放心状態にも近い表情の観客を前に「みなさん思った通りの素敵な顔をしていますね!」「いい映画を見た人たちは面構えが違いますね」と平山夢明(以下、平山)と氏家譲寿(以下、ナマニク)が笑顔で登場。ひと足先に本作を鑑賞した平山は、「アリジゴクの中で獲物が落ちてくるのをずっと待っているような映画だった」と作風についてコメント。ナマニクも「ラストは衝撃的ではあるが、そこに至るまでは人との距離感が違う2組の夫婦のドラマを観ている感覚」と世界を震撼させたヒューマンホラーの緻密な物語構成を絶賛した。

アリ・アスター監督、ジョナサン・グレイザー監督にも通じる表現

休暇先のイタリアで出会う家族からの誘いを受けて始まるストーリーについて、「監督の実体験がベースになっているんですよね。実際には監督は、そのホリデーフレンズからの誘いを断ったそうですが、誘いを受けていたらどうなっていたか…というところから着想した映画だったそうです」とタフドルップ監督にインタビューもしているナマニクが紹介。
『胸騒ぎ』トークイベント
平山は、主人公のデンマーク人夫婦のビャアンとルイーセ、娘のアウネスたち家族が、旅先で出会うオランダ人夫婦から与えられる”違和感”の連続に、「自分だったら(出会ってすぐの)冒頭のシーン、プールサイドで荷物を勝手に退けられるところでムカついて関わるのをやめますね!(笑)でも、ビャアンはブルース・ウィルスのようなタフガイじゃなくて、押しに弱い…。それだけじゃなくて、彼らの強引な誘いに対して積極的で、どこか“変わった経験”や“破綻”を求めているようにも見えました」と分析。とナマニクも、「まさにその通り!裕福で安定した生活を送っている主人公たちは、自分たちにはない荒っぽさを持つ家族に出会い、彼らにどこか憧れてしまっているんですよね」とキャラクター造形に言及した。
さらに、狂気のオランダ人夫婦が、ビャアンたちが逃げ出さないように巧妙な罠を仕掛けている展開に感銘をうけたという平山は、彼らの手口について「最初に小さなお願いをして、だんだん要求を大きくしていったり、まず到底無理なお願いをして、そのあとに実現可能な小さなお願いをする……。そういった心理テクニックを使ってくる、嫌らしさがありましたよね」と解説した。
『胸騒ぎ』トークイベント
また、音楽の使い方も印象的な本作について、平山は「カメラがただ風景をパンしているだけなのに、やけに煽った音楽をかけてくる。それが効きましたね、怖いんですよ。『アンダー・ザスキン』や『関心領域』のジョナサン・グレイザー監督や、アリ・アスター監督もああいう音楽の使い方をするよね」と名匠の表現方法になぞらえて解説。ナマニクが「特に突然車の中でステレオの音量を爆音にされるシーンなど、音の使い方が嫌すぎた!」とコメントすると、「俺だったら座席蹴っ飛ばして怒っちゃうよ!」と平山がつっこみ、観客も同感するように笑いが起きた。

胸糞なだけではない!多角的な見方が楽しめる良質ヒューマンホラー

いわゆる「胸糞系映画」とされる本作。しかし、多角的な楽しみ方もできるという話題に。
『胸騒ぎ』トークイベント
平山は、「監督が言っているわけではなく、あくまで個人的な解釈なんですけど」と前置きしつつ、「冒頭のプールサイドのシーンで、テニス選手のアンドレ・アガシの自伝が映り込むんです。彼は父がイラン革命の後にアメリカに逃れてきた難民。また、途中でフェンスを越えて川に落ちるシーンもある。それらを見て、主人公たちを難民としてとらえることもできるのでは?と思いました」と独自の視点で解釈。悪意に対して無抵抗な主人公一家たちの行動はそうしたメタファーを含んでいるのではと、映画にちりばめられた要素を足し算するのではなく、掛け算や割り算にしながら見る楽しさについて語った。
それを受け、監督に話を聞いていたナマニクは「いろいろな解釈を伝えたとき、正解・不正解ではなく、映画としても、映画監督としても、多角的な見方をしてもらえることが嬉しいとおっしゃっていました。この作品は、ただの胸糞が悪い映画じゃない。平山さんのおっしゃるように、ヨーロッパが抱える難民的な意味もあるかもしれないし、ただのブラックコメディーとしてもみていい。作品を観た次の日の朝も、この映画のことを考えてもらえるような作品であってほしい」と監督から聞き受けたメッセージを伝えた。

最後に、

平山は「ハリウッド映画や、わかりやすい映画とは違う。北欧らしい、寓話的な作品だと思います。若い監督が現代に蔓延る問題を、ホラーの形にしたという前衛的な気持ちがある映画。この監督に注目です。胸騒ぎしたよ!とご友人にも伝えてほしい」とコメント。「皆さん二度と観たくないと思っているかもしれませんが僕は5回この映画を観ました!この機会にいろいろなヨーロッパ映画を見て、視点を変えながら、「胸糞」だけではない楽しみ方をしてほしい!」と『胸騒ぎ』愛溢れるナマニクが締めくくり、大盛況でイベントは終了しました。

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『胸騒ぎ』

英題: Speak No Evil 
原題:GÆSTERNE

5月10日(金) 新宿シネマカリテほか全国公開

@muna-sawagi

第38回サンダンス映画祭でワールドプレミア上映されるや想像を絶する衝撃的な展開と不穏すぎる作風が大きな話題になり、各国の映画祭を席巻した『胸騒ぎ』。メガホンをとったのは、デンマークの新たなる鬼才クリスチャン・タフドルップ監督。脚本も手がけた本作で描くのは、ある善良な家族が過ごす悪夢のような週末――。『M3GAN/ミーガン』、『ゲット・アウト』など数々の大ヒットホラー映画を手がける米ブラムハウス・プロダクションズにより日本公開に先駆けてリメイク版の製作も決定した。世界がいま最も熱い視線を送る、北欧発の最狂ヒューマンホラーがついに日本に上陸する。
胸騒ぎ

物語・・・

イタリアでの休暇中、デンマーク人夫婦のビャアンとルイーセ、娘のアウネスは、オランダ人夫婦のパトリックとカリン、その息子のアーベルと出会い意気投合する。後日、パトリック夫婦からの招待状を受け取ったビャアンは、家族を連れて人里離れた彼らの家を訪ねる。再会を喜んだのも束の間、会話のなかで些細な誤解や違和感が生まれていき、それは段々と広がっていく。彼らの「おもてなし」に居心地の悪さと恐怖を覚えるビャアンとルイーセは、週末が終わるまでの辛抱だと自分たちに言い聞かせるが——。
胸騒ぎ

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監督:クリスチャン・タフドルップ  
脚本:クリスチャン・タフドルップ、マッズ・タフドルップ
出演:モルテン・ブリアン、スィセル・スィーム・コク、フェジャ・ファン・フェット、カリーナ・スムルダース
2022年/デンマーク・オランダ/ カラー/2.39:1/5.1ch/97分/
英語・デンマーク語・オランダ語/PG-12
配給:シンカ 
宣伝:SUNDAE 
宣伝協力:OSOREZONE 
提供:SUNDAE、シンカ   
© 2021 Profile Pictures & OAK Motion Pictures

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