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大森歩監督 活弁シネマ倶楽部に登場

京都国際映画祭2018 クリエイターズ・ファクトリーほか9つの映画祭にてグランプリを受賞した他、文化庁メディア芸術祭2019 新人賞(大森歩)、TAMA NEW WAVE ベスト女優賞(古川琴音)も受賞した短編映画『春』と、あいち女性国際映画祭ほか3つの映画祭にてグランプリを受賞し、文化庁メディア芸術祭2020 審査員推薦作品に選ばれた短編映画『リッちゃん、健ちゃんの夏。』が10月1日より同時上映される大森歩監督が映画を語るWEB番組「活弁シネマ倶楽部」にゲスト出演。両作の裏話について語った。
春/活弁シネマ
映画『春』の制作経緯を聞かれた大森監督は、「CMの仕事をして8年くらい経ってから、以前3年間一緒に二人で住んでいたおじいちゃんが亡くなってしまったのがショックで、ふさぎこんでしまいました。おじいちゃんが目の前で亡くなったのを見て、やりたいことをやらなくてはいけないと思い、おじいちゃんとの話を映画にしようと、『春』を撮りました。」と説明。「せっかく映画を作ったから、映画祭にたくさん応募したら、結構賞をいただいて、劇場公開も決まりました。」と喜びを語った。

脚本に関しては、「自分を大きく見せていないかに注意しながら作りました。」とのことで、タイトルに関しては、「元々のタイトルは『家』だったんですが、編集で粗繋ぎをしたときに、『家』だと家の中にこもってしまうので、”抜け出さなくちゃいけない”などという苦しさも感じて、変えようと思いました。春は人柄など関係ない自然の現象で、”気持ちが目覚めていく”などの意味もあるので、『春』にしました。」と経緯を話した。

主人公が住む家のロケ地については、「群馬県桐生市に脚本を送って、きりゅう映画祭にスポンサーになっていただき、桐生のフィルムコミッションに江戸時代から続く日本家屋を紹介してもらいました。私は実際には、東京の狭い6畳のところにおじいちゃんと住んでいました。」と、ご本人との経験との違いも説明した。

カメラワークに関しては、「二人の関係性は、最初仲が悪くて、おじいちゃんの体が悪くなって向き合っていくところは、距離を詰めていき、対面で2ショットで映るところは1箇所くらいにしようとしたんです。そこまでは1ショットずつで撮ることにしていました。」とこだわりを披露。

主演の古川琴音さんは、「(撮影当時は、)舞台でずっとやっていて、映像は1〜2回目の時だったんですが、セリフをちょっと言ってもらった時に、『絶対この人にお願いしよう』と思いました。古川さんは感受性が豊かな人なので、『おじいちゃんとこういうやりとりをしたんだよ』とか、こぼれ話などをして、こういう人間たちがいたんだよと想像が膨らむような話をちょこちょこしました。」と撮影秘話を語った。撮影から3年越しの公開となり、「古川さんがこんなに猛スピードでスターになっていくのを見てうれしかったです」と感銘を受けていた。

同時上映の『リッちゃん、健ちゃんの夏。』は、長崎県佐世保市の黒島が舞台。「観光にそこまで力を入れていなく、のびのび暮らしていて、ガツガツしていない感じが素敵だと思って、ここだったら駆け落ちする場所にちょうどいいと思いました。」とのことで、タイトルの『夏』に関しては、「夏休みは、モラトリアムな気分になって、自分自身を見つめ直す時期なので、駆け落ちするなら夏だなと思いました。」と、本作の設定について語った。

「本作の撮影の高橋大祐さんは、実景が大好きな方なので、GoProで撮りました」という、黒島の美しい風景が切り取られている本作。黒島天主堂は、撮影当時、工事中だったが、「工事中の教会はなかなか見れないので、『よっしゃー』と思いました。」と、レアなタイミングでの撮影を楽しんだよう。劇中に登場する巨木に関しては、「『アコウの巨木』というのですが、『締め殺しの木』と書いてあったので、地元の方に聞いたら、あの巨木は家1軒を飲み込んだ後だそうです。家を飲み込みながら強くなっていく、台風を防ぐための木なので、めちゃくちゃかっこいいなと思いました。」とロケハン時の裏話を披露した。

主題歌「あの日」(寺尾紗穂)は書き下ろしでなく、元々あった曲だそうで、「私は寺尾紗穂さんのファンで、何曲かこの映画の主題歌にと思った曲があったんですけれど、『あの日』がぴったりだと思って、脚本を書いた時から参考にしていました。主題歌に依頼したらOKいただき、あの曲を軸にして全てを作っていきました。」と、既存の曲が作品の軸となっていたことを明かした。
春/活弁シネマ

監督・脚本:大森歩プロファイル

1985年10月24日生まれ。
東京生まれ。愛知県の大森牧場で育ち、実家は骨董屋を経営。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。Club_A所属、CMディレクター。ミルボン「美容室の帰り道」、ケアリーヴ「僕は、ばんそうこう」、ラインクリスマス、マンダム・ビフェスタ、肌ラボシリーズ、など。本作『春』が映画初監督作となる。2021年公開作に【SSFF & ASIA 2020 クリエイターズ支援プロジェクト】の短編映画『卵と彩子』(出演:剛力彩芽、岡山天音)がある。

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■活弁シネマ倶楽部■ 

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『春』

あらすじ
祖父(花王おさむ)の家に居候して二人暮らしをしている、美大生のアミ(古川琴音)。いつも満州に行ったことを自慢気に話す祖父を、「衛生兵だったんでしょ。私も戦争したよ、受験戦争」と馬鹿にするアミは、翌年に就活を控えている。
アニメオタクの同級生・橋本(加藤才紀子)が我が道を行く一方、アミは、自分の描きたいものを描くのではない”広告”の課題に苦戦し、自信を喪失していく。同時に家では、どんどんボケていく祖父にイライラが募り、アミはとうとうキレてしまうが、ある日、初めて聞く祖父の話に気持ちが動き…
[キャスト]
古川琴音 
花王おさむ 加藤才紀子 
西智子 伊勢田世山 松山茂雄
春

『リッちゃん、健ちゃんの夏。』

あらすじ
佐世保市在住の中学2年生のリッちゃんは、両親の離婚で、2学期から東京への転校が決まっている。夏休みの間に、恋する国語教師の健ちゃんを追って黒島にやってきたリッちゃん。
迫害された潜伏キリシタンが逃げた黒島で、死んでもいいと思うほど愛する健ちゃんとの淡い恋は実るのか…
[キャスト]
武イリヤ 笈川健太
大國千緒奈 藤原隆介
リッちゃん、健ちゃんの夏。_ポスタービジュアル

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