当初の公開日より大幅に延期となっていたものの、ようやく12月4日に公開日を迎えた『ミセス・ノイズィ』の天野千尋監督が、“映画を語る”配信番組「活弁シネマ倶楽部」に登場。
MCを務めるライターの折田侑駿が、無事に公開を迎えることができた現在の心境や、物語の着想、本作に込めた想いなどを聞き出している。 |
|
本作は、ささいなすれ違いから生まれた隣人同士の対立が、マスコミやネット社会をも巻き込んで、やがて2つの家族の運命を狂わせてしまうさまを描いたアイロニカルなヒューマンサスペンス。SNSの発達による“炎上”や“メディアリンチ”など、いつ誰の身に起きてもおかしくはない事象が、私たちの現実と地続きでスクリーンに映し出される。いつの時代にも繰り返される、あらゆる“争い”の根本にあるものに真っ向から立ち向かった作品だ。主人公の小説家・吉岡真紀を篠原ゆき子が演じ、彼女と対立する隣人役に大高洋子が扮する。また、真紀の娘であり、両者の間に立たされることになる菜子という重要な役どころを、新津ちせが演じているのも注目だ。 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、およそ7ヵ月の公開延期を余儀なくされていた本作。かなり早い段階から本作を鑑賞していたという折田は、部外者ながらもこの度の公開には感慨深いものがあるのだという。これに天野監督は「いったいいつ公開できるんだろう……と、悶々と待つ日々でした。ただ、2019年の東京国際映画祭でお披露目できているので、そんなに暗い気持ちばかりでいたわけではありません。あのときの反響があったからこそ、希望的な気持ちでいられました」と反応。ようやく、より広く、より多くの観客の元に本作が届けられることになったのだ。「それにこの自粛期間中に、『この作品をノベライズしませんか?』というお話をいただいたりもしまして。公開に合わせて小説版『ミセス・ノイズィ』が刊行されることになったんです」と天野監督。本作のファンでありながらこの情報を知らなかった折田は、反省の色を見せるとともに、「買います!」と高らかに宣言している。 「予告だけ見ると単純な物語に思われてしまいそうですが、そうじゃないですよね。この物語を、それぞれの観客が自身を取り巻いている環境に置き換えたときに、見えてくるものがあると思います」と評している折田。物語の着想について監督は、「人と人との対立や、ディスコミュニケーションというものをテーマに描きたいと思っていました。そこから、一番身近なものとして、“ご近所トラブル”に着目したんです。この関係における加害者・被害者の立場って、当人たちにしか分からないものですよね。それにその立場によって、加害者・被害者の捉え方や意識も変わってくるはず。このことに対してモヤモヤする一方で、すごく人間的だとも思ったんです。小さな子ども同士のケンカも、国と国との争いも、結局はこの構造のもとにあるのではないか」と語る。この構造を俯瞰的な視点で描いたのが『ミセス・ノイズィ』なのだ。 円滑なコミュニケーションをとることがより難しくなっている現在の環境下、小さなトラブルは絶えないように思える。その小さなトラブルが、思わぬ事態を招いてしまうことも少なくない。「対面で人と接していないと、どこか人間はストレスを感じてしまうものだと思います。いろんなものに敏感になったり、変に思い込みが激しくなったりだとか、思い当たるフシがありますよね」と実生活での経験を踏まえたうえで語る天野監督。映画本編はもちろんのこと、このトーク内容からもコミュニケーションの大切さがうかがえる。そのほか、俳優陣の魅力や、本作における大きな仕掛けの意義についても、監督はつまびらかに明かしている。 |
|
■活弁シネマ倶楽部■ YouTube配信URL: 活弁シネマ倶楽部 公式HP: httpvh://katsuben-cinema.com/ 活弁シネマ倶楽部 公式ツイッター: @katsuben_cinema |
|
『ミセス・ノイズィ』
2020年12月4日(金)~ TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開 あらすじ |
監督:天野千尋
出演:篠原ゆき子、大高洋子、新津ちせ、長尾卓磨、宮崎太一、米本来輝、洞口依子、和田雅成、田中要次、風祭ゆき