イギリス出身、来日30年目のジョン・ウィリアムズ監督が、100年前に書かれたフランツ・カフカの不条理文学「審判」との類似点を見出し、現代の東京を舞台に映画化した『審判』6月30日より渋谷・ユーロスペースで公開となります。
そして本作のプレミア上映が4月21日(土)に、主人公Kこと木村陽介を演じた個性派俳優・にわつとむさん。木村を誘惑する女たちに扮する、隣人の鈴木役の常石梨乃さん、廷吏の妻・アンナ役の川上史津子さん、看護師・アズキ役の関根愛(めぐみ)さん、郊外の怪しげな学校の体育館を一時的に使った「裁判所」の廷吏役の大宮イチさん、主人公の叔父役の高橋長英さん、弁護士・田辺役の品川徹さん、そしてジョン・ウィリアムズ監督が登壇して行われました。 日時:2018年4月21日(土) |
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今回、カフカの『審判』を映画化したジョン・ウィリアムズ監督は、原作の魅力を聞かれ、
と語りました。 そして、本作で映画初主演を果たしたにわつとむさんは
と涙ながらに挨拶。にわが演じるKの役は、観客の関心を引き続けなくてはいけない主人公ながら、善い行いだけをするわけではなく、難しい役どころ。どう準備して撮影に挑まれたのかを聞かれ、 にわさん:銀行員で、組織の中で出世する話でもなく、鈴木さんとの恋を添い遂げるために奔走するわけでなく、何か目的を持った役ではないので、非常に難しかった。この作品の撮影に入る2週間前に義理の父が亡くなった時にふと『これは人間の一生の生き様として演じたらどうか。』と思い、捕まった瞬間から最後までを、僕の人生だと思って演じさせていただきました。それがうまくいったのではないかと思います。 と答えました。 Kは、罪状不明なのに逮捕されてしまう役で、にわさんは、ご登壇の皆さんに翻弄されまくりましたが、特に印象的だったシーンを聞かれ、 にわさん:全部印象に残っています。ここに登壇していただいている方以外の役者さんを含め、すべての役者さんが個性的で、みなさんが出すもの出すものにただ返すだけで映画になる、素晴らしい役者さんたちでした。尊敬しすぎていて、品川さんに怒るところも最初きつく言えなかったです。一番印象に残っているところは、お寺のシーンです。ジョンは、いつも、”good,” “great,” “wonderful”などカットをかけた時の掛け声で、今の芝居がどうだったことがわかるんですよ。あんまりよくない時は、”Not bad”(大爆笑)。ジョンにある日『”excellent” の上はあるのか』と聞いたら、『その芝居に感動して、カットもかけず、何も言わずに涙を流すことが最高級のカットだ』と言いまして、お寺のシーンを撮影した時、ジョンはカットをかけずに静かに袖の方に行って泣いていまして、『わっ、最高級のカットがかかったな』と思いました。 と感動エピソードを話しました。 |
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隣人の鈴木役の常石さんは、どのように鈴木役の準備をしたのか聞かれ、 常石さん:ジョンからは夢見る夢子ちゃんの役だからと説明されていて、自分なりに妄想癖を作りました。自分のプライベートの世界で、隣の部屋に住んでいる人の物音を聞いていました。隣の音は『今、Kが帰ってきた』などと思って日常を過ごすところから始めました。 と述懐しました。演じた鈴木はセクシーな魅力で主人公を翻弄しますが、主人公を翻弄する上で、心がけたこととして と話すと、 にわさん:隣に綺麗な人が住んでいるという設定自体がおかしい。 とツッコミを入れて、会場の笑いを誘いました。 川上さんは、演じた廷吏の妻・アンナ役について、 とのこと。すると、司会をしていたプロデューサーが、「撮影現場で、濡れ場の相手役の方が『まさかあそこまでいくとは』とほやほやになって帰っていきました」とエピソードを話すと、 川上さん:(完成した映画を見たら)生き生きと楽しい濡れ場に見えました。“目を開けて見る悪夢のような映画”だけれど、アズキもそうですけど、性を楽しんでいるキャラがいてもいいかなと思いました。 と話しました。 関根さん演じる看護師・アズキは、小悪魔的に主人公を翻弄しますが、心がけたことを・・・ と話しました。 |
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ジョン・ウィリアムズ監督と3度目のタッグとなった大宮イチさんは廷吏役で、他の役とは違う、サスペンスホラー的な不気味な存在ですが、どのように準備したか聞かれ、 大宮さん:最初に台本を頂いた時、セリフが興味深かったです。まず自分が謎に感じました。『いつもあの奥さん(アンナ)にひどい目に遭っているんだろうな』とか『それでも奥さんのことを愛しているんだろうな』という複雑な内面は興味深かったです。ジョン・ウィリアムズ監督は時間をかけて丁寧に役者と向き合ってくれる珍しい映画監督だと思うんですが、普段、役者は素材として基本的には言われたことをやるということが多いですが、今回は役の命を作り、それを演じ、表現させていただいたという喜びが大きかった。普段は殺したり殺されたりが多いんですけど、本当はこういう仕事がしたかったんだなと思いました。 と想いを語りました。 上智のキャンパスでの撮影もあった高橋さんは関根さんと同じく、ジョンが教えている上智大に通っていたんですよね?と聞かれ、 と語りました。 高橋さん演じる主人公の叔父は、主人公を弁護士の元に連れて行きますが、叔父役について、 高橋さん:すごく保身みたいな、自分の家を守るだけで、Kのことは思っていないのではないかと思います。出てくる登場人物たちは、それぞれが保身、ただただ自分のみを守りたい。自分のことしか考えていなくて、どんどん追い詰められていく。見ていて、これは僕の身にも起きる話だなと思い、怖かったです。明日我が身に起きても不思議じゃない。今我々を取り巻く状況。世界もそうですよね。アメリカだとかロシアだとかフランス、イギリス、中国、韓国。みんな同じように権力者が私物化して、ただただ保身に走っているという状況なので、この映画は怖いなと思って見ていました。 と熱く語りました。 品川徹さんは本作のオファーを受けた理由を聞かれ、 と言うと会場は大爆笑。 品川さん:カフカの原作という不条理の世界を監督がどういう風に作るのかなということに興味を持ちました。 と話しました。品川さん演じる弁護士は寝たきりながらも、美人の看護師をはべらせたり、外の世界に精通しているという裏の顔を持つ役。 品川さん:この人は糖尿病を患っていて、目がよく見えない役でした。家の近くに雑貨屋さんがいて、その人が、『今、目の前にビニールがかかっているみたい。糖尿病で白内障なんだ』と言ってきたので、『手術すればすぐ治る』と言ったら、『怖くてできない』と言っていました。この人も多分手術が怖くて、だんだん見えなくなってきたのではないか。 とモデルにした人がいたことを明かしました。 |
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最後に・・・ ウィリアムズ監督:ダークな映画だけれど、素晴らしい役者たちとご一緒できて、非常に楽しい現場でした。 と感謝の言葉を述べ、トークイベントは和やかに終了しました。 『審判』 公式HP: Twitter:
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にわ つとむ
常石 梨乃 田邉 淳一 工藤 雄作
川上 史津子 早川 知子 関根 愛 村田 一朗 大宮イチ
坂東 彌十郎(特別出演) 高橋 長英 品川 徹
監督・脚本:ジョン・ウィリアムズ (「いちばん美しい夏」、「スターフィッシュホテル」、「佐渡テンペスト」)
原作:フランツ・カフカ「審判」 音楽 スワベック・コバレフスキ
プロデューサー:高木 祥衣 古川 実咲子 塩崎 祥平 撮影 早野嘉伸 照明 大久保 礼司
録音:小川 武 美術 中村 三五
編集:稲川実希
音響効果:堀内 みゆき 監督補 高田 真幸
助監督:岩崎 祐 ヘアメイク 西尾 潤子 松本幸子 衣装 斎藤 安津菜 制作担当 竹上 俊一
後援:上智大学ヨーロッパ研究所 公益財団法人日独協会
製作・配給・宣伝:百米映画社
2018年/日本/アメリカンビスタ/5.1ch/118分
©100 Meter Films 2018