多摩美術大学でイベント
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久野遥子監督、山下敦弘監督登壇 映画の上映が終わり、多摩美の学生たちの暖かい拍手に迎えられた久野遥子監督と山下敦弘監督。まずは久野監督の恩師でもあるグラフィックデザイン科の野村辰寿教授より監督のフィルモグラフィーを紹介。その中で、久野監督の卒業制作で第17回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門新人賞受賞作品でもある「Airy Me」を上映。野村教授は「作品が発表された時、業界を震撼させた」と当時を振り返り、山下監督も「改めてスクリーンでみると凄まじい迫力!」とそのクオリティに驚きの表情を見せた。 本作が作れたきっかけについて野村教授に尋ねられると、山下監督は「この企画はシンエイ動画の近藤プロデューサーによるもので、彼は昔、僕の作品の助監督で、他にも久野監督がロトスコープディレクターを務めた『花とアリス殺人事件』でも助監督をしていました。そんな彼がシンエイ動画に入って最初に立ち上げた企画が『化け猫あんずちゃん』でした。彼が久野さんと僕を引き合わせたっていうのがはじまりです」と振り返る。 実写で撮影され、ロトスコープでアニメ化された本作。実際に森山未來が演じたあんずちゃんの映像とアニメの比較動画を上映すると山下監督は「動きとかタイミングとかは実写のタイミングなのですが、やっぱりあんずちゃんはフォルムも変わってますし、久野さんの方でもう一度演出をやり直してくれました」と森山をあんずちゃん化する際の久野監督の苦労についてコメント。続いて「あんずちゃんのようなデフォルメの強いキャラクターをどのように表現するかというのをかなり探った気がします。パイロット版のときはもうちょっとリアルな感じで、あんずちゃんの動きももう少し細かくしてたりしたのですが、細かすぎると絵の奥にある実写を意識させすぎてしまう、映画では潔く止めるところを作ったりしました。動きの緩急は最後まで探っていたところでもあります」と久野監督はそのこだわりを解説した。 8年前からスタートしていた『化け猫あんずちゃん』の企画。この長い道のりについて山下監督は「結果的には8年かかっちゃったなという感じですが、その間に久野さんと豊島区のPR映像を担当させていただいたり、パイロット版を作ったり段階を踏んできました。とにかく最初はこれが映画になるのかなという漠然とした不安があったのですが、それを乗り越えて、フランスとの合作になったり、とにかく形になったのが嬉しいです。実写チームとアニメチームとフランスチームとが、それぞれ別の畑の人間が奇跡的にうまく機能しています。いろんな感性の集合体のような作品になっていき、それが作品の強みになっています」と語ると、久野監督は「私は映画というものにすごく憧れがあったので、まずそれが作れたのが嬉しいです。ひょんな事から日仏合作となったあんずちゃんも日本のアニメの作り方を踏襲しているのですが、自分なりの表現方法を入れて、少し新しく見慣れないものが作れたのかなと思います」と映画への熱い想いを語り、「山下さんと組んだおかげで、生のお芝居の大切さに気づきました。アニメーションは基本的に頭のなかで描くというものなのですが、そこだけになってしまうと視野が狭くなってしまう時があります。この作品ではすごく広がりのある作品にできました」と作品の出来に自信をみせた。 イベントの最後にはアーティストの卵である多摩美の学生へ久野監督と山下監督よりメッセージが。 久野監督は「あんずちゃんは作るのに時間がかかった作品です。皆さんも作品をなかなか世に出せなくて焦る気持ちもあると思うのですが、時間をかけて見せたい人たちに伝わるように作るということも大切だと思うので、自分の表現を突き詰めて自分がやりたいことを本当に見せられるようになってくれたらいいなと思います」、山下監督は「本気になって作品を一つ作って、それで将来が決まるわけではなく、将棋でいうといひとつコマが進んだくらいのことです。ただ、社会というものはそれの連鎖になっていて、作ったものがその次に繋がっていきます。まず学生時代はとにかく自分の恥ずかしいものを含んだ大きな名刺をひとつ作って欲しいなと思います。そうしていくとどんどん面白い人に出会えるようになって、そうやって僕も久野さんと出会って、まさか自分がアニメを作るようになるとは思いませんでした。過去に作ってきたものが今に繋がったり、この先に繋がったりするので、一個一個手を抜かずにやっていくと面白い人に出会えるので、頑張って行ってほしいなと思います」と学生たちにエールを贈りイベントは幕を閉じました。 |
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『化け猫あんずちゃん』
本作では実写で撮影した映像からトレースし、アニメーションにする「ロトスコープ」という手法を採用している。 また、アニメーション制作では『クレヨンしんちゃん』や『ドラえもん』で知られるスタジオである「シンエイ動画」と、カンヌ国際映画祭やアヌシー国際映画祭で数々の賞を受賞し、新進気鋭のフランスのスタジオ「MIYUプロダクション」が長編として初の日仏共同にてアニメーションを制作。シンエイ動画がキャラクターの動きを描き、MIYUプロダクションが背景美術と色彩を担う。 |
監督:久野遥子・山下敦弘
原作:いましろたかし『化け猫あんずちゃん』(講談社 KCデラックス 刊)
キャスト(声・動き):森山未來 五藤希愛
青木崇高 市川実和子 鈴木慶一 水澤紳吾 吉岡睦雄 澤部 渡 宇野祥平
制作プロダクション:シンエイ動画×Miyu Productions
脚本:いまおかしんじ 音楽:鈴木慶一 編集:小島俊彦
キャラクターデザイン:久野遥子 作画監督:石舘波子 中内友紀恵
美術監督& 色彩設計:Julien De Man コンポジット開発:Guillaume Cassuto
撮影監督:牧野真人 CG監督:飯塚智香 音響監督:滝野ますみ
実写制作協力:マッチポイント
撮影:池内義浩 録音:弥栄裕樹 スタイリスト:伊賀大介
主題歌:「またたび」佐藤千亜妃(A.S.A.B)
プロデューサー:近藤慶一 Emmanuel-Alain Raynal Pierre Baussaron 根岸洋之
製作:化け猫あんずちゃん製作委員会
配給:TOHO NEXT
©️いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会