新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか絶賛公開中の映画『デヴィッド・リンチ:アートライフ』。
その公開を記念し、1月31日(水)に新宿シネマカリテにて第2弾トークイベントが、ゲストにヴィジュアリストの手塚眞さん、聞き手に映画評論家の松崎健夫さんを迎え、リンチについて、またご自身の映画作りについてトークが繰り広げられました。 日時:1月31日(水) |
|
ゲストは 映画『星くず兄弟の新たな伝説』の監督で、ヴィジュアリストの手塚眞氏、聞き手に映画評論家の松崎健夫氏が登壇。リンチについて、またご自身の映画作りについて熱いトークが繰り広げられました。
本作は、映像作品のみならず、絵画、写真、音楽など様々な方法で表現活動を続けているデヴィッド・リンチが、美術を専攻した学生時代の「退屈」と「憂鬱」、悪夢のような街フィラデルフィアでの暮らし、そして長編デビュー作『イレイザーヘッド』に至るまで自ら語ったドキュメンタリー映画。 本作の感想を聞かれ 手塚さん:リンチの学生時代の友人としてジャック・フィスクが出てきて感動しました!彼は『ファントム・オブ・パラダイス』やテレンス・マリック監督の美術監督で、リンチとは学生時代に途中で袂を分かつんですよね。その後フィスクは世界的に活躍し、『キャリー』のシシー・スペイセクと結婚しちゃったりする(笑)。リンチが『イレイザーヘッド』を撮っていた頃、フィスクはもちろん、それまでの仲間たちがもう既にバリバリ活躍していたはずだから、リンチは相当口惜しさがあったんじゃないかな。 と分析。それに対し 松崎さん:私の映像制作時代の師匠は撮影監督の栗田豊道さんなんですが、栗田さんがちょうどリンチと同じころAFI(アメリカン・フィルム・インスティチュート)に通っていて、聞いた話だと “デヴィッド ” とかという変人が卒業もせずにずっと映画を作っていると。それが後の『イレイザーヘッド』だったそうです。 と松崎さんもリンチの学生時代について語った。 |
|
また、本作が『イレイザーヘッド』で終わる、ということをどう思うかという質問に
手塚さん:少年時代とか、監督デビューした当時の話など、そのところがリンチにとって“良き思い出” になっているからでしょうね。むしろ『イレイザーヘッド』から後の話はまだ語り切れない、時間が経たないと話せないものがあるのではないんでしょうか。その気持ちは僕もよくわかるんです。 答えた。 また、自著『父・手塚治虫の素顔』(新潮文庫刊)で父・手塚治虫先生とリンチについて語り合ったエピソードに触れ 手塚さん:父は本当に映画が好きでよく観ていたのですが、『ブルーベルベット』を観て“僕は大嫌いだ!学生映画だ”と、怒っていました。リンチの映画は編集がすごく変わっていて、普通はやっちゃいけない手法を平気でやる。僕はそこが好きだったんですが、父には“安っぽい”と映ったようです。 と話した。 |
|
リンチと自身の共通点について聞かれると
手塚さん:全く逆。リンチは映画作家である以前からアーティスト。アートを志してその中で映画を発見していく。僕は最初から映画を撮りたくて、映画にしか興味がなかった。映画をやっていくなかでアートを見つけていった。 と説明、現在公開中の『星くず兄弟の新たな伝説』について話が及ぶと、 手塚さん:もともと『星くず兄弟の伝説』は、僕にとって「アクシデント」みたいなもの。近田春夫さんに頼まれて作り始めた。素人同然の人たちが集まって、さらにその知り合いなんかが出演した作品が、たまたまバブルの時代に乗っかって“商業映画”になってしまい、さらに今でいう“カルト映画”的な評価を受けた。新作ではその約30年後を描いてるわけですが、とにかく自由な作品になった。それに、リンチが『イレイザーヘッド』以降についてまだ語っていないように、僕も10年前だったら『星くず兄弟の伝説』の続編は作ってなかったし、話す気にすらならなかったと思います。 と自身を振り返った。 映画『デヴィッド・リンチ:アートライフ』 は 新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか絶賛公開中。 リンチが紡ぐ「悪夢」はどこから生まれるのか? 『ツイン・ピークス The Return』で再び世界を騒がせる、映画界で最も得体の知れない監督――その「謎」が「謎」でなくなる、かもしれない。 映像作品のみならず、絵画、写真、音楽など様々な方法で表現活動を続けているデヴィッド・リンチ。「その頃の僕の世界はとても小さく、近所の数ブロックに全てがあった」ハリウッドにある自宅兼アトリエで語られる過去。「恐怖が垂れ込める意地の悪い街」フィラデルフィアでの日常。その中に潜む「恐怖」「苦悩」は、まるでリンチ作品の登場人物のような姿で私たちの前に現れては消えていく。 アメリカの小さな田舎町で家族と過ごした幼少期、アーティストとしての人生に憧れながらも溢れ出る創造性を持て余した学生時代の退屈と憂鬱。後の『マルホランド・ドライブ』(2001 年)美術監督である親友ジャック・フィスクとの友情。生活の為に働きながら、助成金の知らせを待った日々。そして、当時の妻ペギーの出産を経てつくられた長編デビュー作『イレイザーヘッド』(1976 年)に至るまでを奇才デヴィッド・リンチ自らが語りつくす。 |
|
手塚眞監督作品 三浦涼介×武田航平『星くず兄弟の新たな伝説』初日舞台挨拶 http://eigajoho.com/96607 |
監督:ジョン・グエン、リック・バーンズ、オリヴィア・ネールガード=ホルム(『ヴィクトリア』脚本)
出演:デヴィッド・リンチ
配給・宣伝:アップリンク
2016 年/アメリカ・デンマーク/88 分/英語/DCP/1.85:1/