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日本外国特派員協会記者会見
この度、4月24日より公開の映画『LOST LAND/ロストランド』。
日本外国特派員協会にて記者会見が開催され 監督の藤元明緒、プロデューサーの渡邉一孝が登壇しました。

日本外国特派員協会記者会見
日付:4月2日
場所:日本外国特派員協会
登壇:藤元明緒監督、渡邉一孝プロデューサー
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藤元明緒監督&P登壇
冒頭、司会のキャレン・セバンズより本作を作るきっかけを聞かれると、藤元監督は次のように語った。
「ロヒンギャの人々を描きたいということは、初めて映画を作る時からずっと考えていました。そこから長い間ミャンマーで仕事をしたり、縁が深くなっていく中で、この題材はミャンマーではタブーなことでした。ミャンマーの中でロヒンギャの状況を見聞きしてきましたが、ずっと沈黙していた自分がいました。そして2021年にミャンマーで軍事クーデターが起きた後、僕は映画を通して支援活動を続けてきましたが、そこで振り返ってみると、なぜ今声を上げて、ロヒンギャの時にはずっと沈黙をしていたのかという、ダブルスタンダードのような態度をとってしまった。比較すると明らかに命の区別をしている自分がいて、映画作家としてやってはいけないことをしてしまった。そうした負い目や罪悪感のようなものがずっと積もり積もってきて、3本目に何を作ろうかと考えた時に、この『LOST LAND/ロストランド』の企画に行き着いたという形です」

続いて、渡邉プロデューサーには、これまでの作品と比較して本作の映画製作やその苦労について質問が及んだ。「本作の題材の難しさや複雑な状況というのは、私たちがマーケットを最初から定めて作れるような映画ではなかったことを証明していると思います。その上で、ロヒンギャの方々とのコミュニケーションや、この企画を実現するためにも多くの仲間が必要だと考えていました。結果として4カ国の共同制作になり、出資・融資してくださる方やプロデューサー、スタッフとして、映画の様々な段階で合計10以上の国と地域の方々が集まりました。共感をもとに映画を作れたということがあります。皆さんが意思を持って関わったからこそできた映画であるということだけお伝えできればと思います」
会場に集まった日本外国特派員協会に所属する記者から「この作品の現実感、リアリティを感じるシーンがとても印象的ですが、どのようにして撮影されたのですか」という質問が寄せられた。
これに対し藤元監督は、撮影手法について「今回は長回しという手法はキャストの精神的負担が大きいのでなるべく控えていました。リアリティについては、リアルを再現しようというわけではなく、どうやったらリアルに感じてもらえるのか、そこを設計していくというのがそもそもあり、ドキュメンタリーとはまた違う出発点でした。本作の場合、彼らは自分自身を演じていると言いますか。もしかしたら起きていたかもしれないパラレルワールドの自分自身を演じていくというスタイルになります。本当に素晴らしい演技を見せてくれて、撮影中はずっと驚きっぱなしでした」と姉弟の演技力の高さについて語った。
また、ロヒンギャ難民の現状と、日本におけるロヒンギャの状況についても質問が寄せられた。
「今でも年間10万人以上のロヒンギャの人が、隣国のバングラデシュの難民キャンプに避難している状況が続いています。難民キャンプの面積は拡大せず、現在117万人ほどが暮らしていて、さらに年間4万人の赤ん坊が生まれています。キャンプ自体も非常に厳しい状況です。そしてキャンプ以外にも世界各国に避難しているロヒンギャの人々は、依然としてその多くはその他に居住し働くステータスがない状態です。国籍がないため、暮らしの中で非常に大変な状況にあります。日本では群馬県の館林というところに約300人以上いると聞いています。ただし、難民認定が通るのはロヒンギャであっても非常に少ない状況のはずです」とロヒンギャの過酷な状況を伝えた。
さらに、この作品を広めることが彼らや文化の助けになるのかという問いについては、次のように語った。「ロヒンギャのことを知っている人があまり多くない中で、まず出会う、知る。そこから調べる人もいれば、寄付活動につながる人もいる。さまざまなアクションが考えられるので、そういったことが起きると嬉しいなと期待しています」
この映画がミャンマーの人々のロヒンギャに対する見方を変える可能性について問われると、藤元監督は次のように答えた。
「先日パリで上映された時に知ったのですが、フランスにはロヒンギャが16人だけいるそうです。そのうちパリに住んでいるロヒンギャの方が2人観に来てくれました。さらに上映を観た一人のミャンマー人が『ロヒンギャのことを正直ずっと差別していたが、この映画を見てから全く考えが変わった』と言っていたと聞いて、たった1人なんですけど、よかったなと思いました」そう語る藤元監督は、感極まり涙を見せた。
そして続けて、「このプロジェクトの最終的なゴールとしては、やはりミャンマー国内で、さまざまな民族の中で上映が行われること。これが最終的な目標だと思っています。そこまで上映は頑張ろうと思っています」と志を語った。

ベネチアを含む映画祭で9カ国15冠を獲得している本作だが、その一方でロヒンギャ問題の報道は減少し、「忘れられた問題」と言われることも多い。この問題を扱った映画が世界で高く評価されたことについて、見解が求められると藤元監督は次のように語った。「率直に言って映画祭での評価は嬉しいです。出演者も喜び、出演していない人たちもSNSで取り上げてくれていて、喜んでいたのは本当に嬉しく思っています」
記者会見では、作品の背景やロヒンギャを取り巻く現状について、国内外の記者から多くの質問が寄せられた。終始真摯に言葉を重ねる藤元監督と渡邉プロデューサーの姿に、会場は静かに耳を傾けていた。作品を通して伝えたい思いが丁寧に共有され、充実した時間となった。
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『LOST LAND/ロストランド』
英題:LOST LAND
原題:HARÀ WATAN
4.24(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、kino cinéma新宿、ポレポレ東中野ほか全国公開
故郷を追われた難民の幼い姉弟が、家族との再会を願い、命懸けで国境を越えていく──
世界三大映画祭の一つである第82回ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門にて日本人監督初の審査員特別賞をはじめ、各国の映画祭で続々と受賞を重ねる本作。“世界で最も迫害されている民族の一つ”といわれるロヒンギャ難民たちが、総勢200名が出演する長編映画は世界初。故郷を追われた実際の当事者である彼らの声と眼差しは、演技未経験ながらも、映画の世界に圧倒的なリアリティと強度を与えている。監督・脚本を務めるのは、移民の物語を描いた『僕の帰る場所』(2017) 、『海辺の彼女たち』(2020)で、大島渚賞や新藤兼人賞を受賞し、国内外で注目を集める藤元明緒。実話をもとに、息を呑むような容赦のない現実と子どもの温かな幻想が入り混じる世界観の中、難民たちが辿る旅路を映し出す。
STORY
難民キャンプで暮らす5歳のシャフィと9歳の姉ソミーラ。二人は家族との再会を願い、叔母と共に遠く離れたマレーシアへ旅立つことに。パスポートを持てない彼らは密航業者に導かれるままに漁船へと乗せられる。自然の猛威や人身売買の危機に阻まれながらも、シャフィとソミーラは過酷な道のりを必死に乗り越えていく。
藤元明緒監督プロフィール:
1988年、大阪府生まれ。ビジュアルアーツ専門学校大阪で映画制作を学ぶ。在日ミャンマー人家族を描く初長編『僕の帰る場所』(2018年)が第30回東京国際映画祭アジアの未来部門 作品賞&国際交流基金アジアセンター特別賞を受賞。2021年、ベトナム人技能実習生を描く長編第二作『海辺の彼女たち(日本ベトナム国際共同製作)』を公開。同作品はPFF第3回「大島渚賞」、2021年度「新藤兼人賞」金賞、第13回TAMA映画賞最優秀新進監督賞、第31回日本映画批評家大賞・新人監督賞などを受賞。主にミャンマーなどアジアを舞台に合作映画を制作し続けている。
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予告編ナレーション:河合優実
脚本•監督•編集: 藤元明緒 / 出演: ムハマド・ショフィック・リア・フッディン、ソミーラ・リア・フッディン 他 / 撮影監督: 北川喜雄 / 音響: 弥栄裕樹 / カラリスト: ヨヴ・ムーア / 音楽: エルンスト・ライジハー / 助監督: 川添ビイラル / 撮影助手: 吉田寛 / 水中撮影: 河瀬経樹 / DIT: 香月綾 / エグゼクティブプロデューサー: 國實瑞惠、安川正吾 / プロデューサー: 渡邉一孝 / 共同プロデューサー: アンジェル・デ・ロルム、スジャウディン・カリムディン、エリス・シック クリスチャン・ジルカ / コンサルティング・プロデューサー: エリック・ニアリ / 宣伝プロデューサー:伊藤敦子 / 企画・制作: E.x.N / 製作: E.x.N、鈍牛倶楽部、キネマトワーズ / 共同製作: PANORAMA Films、Elom Initiatives、Cinemata、Scarlet Visions / 特別協力: シネリック・クリエイティブ / 配給: キノフィルムズ / 宣伝: ミラクルヴォイス
2025年 / 日本=フランス=マレーシア=ドイツ / ロヒンギャ語 / カラー / 1.5:1 / 5.1ch / ドラマ / 99分 / DCP
©2025 E.x.N K.K.
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