映画情報どっとこむ ralph 『NO』『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』を手掛けたチリ出身のパブロ・ラライン監督が祖国の 英雄、パブロ・ネルーダの半生を描いた『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』が、11 月 11 日(土)より新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMA 他にて全国ロードショーとなります。

本日セルバンテス文化センターにて本作の試写会が行われ、ネルーダをはじめラテンアメリカ文学に造詣の深い野谷文昭さんが登壇。ネルーダの人物像や、映画の楽しみ方などを解説しました。

日程:10月23日(月)
会場:セルバンテス文化センター東京
登壇:野谷文昭(本作字幕監修者/東京大学名誉教授)
MC:マッシュー

映画情報どっとこむ ralph 今回の試写会イベントには、スペイン語を勉強している人やスペイン文化に興味を持っている方々が集まっており、ラテンアメリカ文学を日本に広めた第一人者である野谷さんが登壇されると、大きな拍手が沸き起こった。

本作の字幕監修を務めた野谷さんは、まず

野谷さん:翻訳と字幕監修の作業は 似ているように思われているのですが、実際には違うのです。翻訳は翻訳者の解釈が入る。私の仕事はその解釈が違っているときにどう修正するかというものなんです。今回の翻訳はとても上手に感じましたので、そこまで手直しする必要はありませんでした。じゃあどこを修正したかというと、ネルーダという人物像や文学について少し情報が足りなかったように感じたので、私の知識を追記させていただきました。

と、字幕監修の仕事について説明。

それについて苦労した点を聞かれると

野谷さん:この映画は複雑なつくりになっていてネタバレが怖いんですよね…、本作を簡単に説明すると物語はルイス・ニェッコ扮する 主人公のネルーダとガエル・ガルシア・ベルナル扮する警官ペルショノーの追跡劇なんだけれども、どちらも劇中で詩を朗読するんです。だけれど両方を詩人のように見せてはならなくて、そのニュアンスを字幕で表現するのがとても難しかったです。どちらも 詩人ではこの映画は成り立たないんですよね…。これから映画を見るみなさんにちょっとヒントをあげると、“この警官は一体何 者なのか?”ということです。

と意味深の発言をしてニヤリ。

映画情報どっとこむ ralph 日本ではそこまで深く知られてはいないパブロ・ネルーダという人物について、

野谷さん:映画ではネルーダが享楽主義者であることを描いているのですが、私もネルーダはおそらく自分のことを“天性の詩人”だと思い込んでいるナルシストな部分を持っていたと思います。子供の頃から“母に捧げる詩”なんて書いてましたから(笑)中学生くらいの時から文学活動を始め、師範学校から本 格的に詩を書き始めました。その頃に書いた詩でブレイクしたんです。彼は詩の中で歴史や政治など、世界のあらゆることにつ いて触れているんです。ここまで壮大なことを詩の中に落とし込んだ作家はネルーダ以外にはいません。他の作家の詩と比べて、彼の詩はスケールが桁違いに大きいんですよ。

など、人物像と作品のスタ イルについて説明し、観客は頷きながら野谷の解説に聞き入った。 また野谷が翻訳したネルーダの詩のひとつ「マチュピチュの頂」について話が及ぶと

野谷さん:スペイン文学の講師を務めていた頃に、一時期ネルーダに熱を上げた時期がありました。もう恋愛と一緒なんですけど(笑)その頃に一心不乱に彼の詩を翻訳しておりまして、その時のものを今回第二版として出版させていただきました。

と少し照れくさそうに執筆の裏側を明かした。

映画情報どっとこむ ralph 1996年に日本でも公開されたパブロ・ネルーダを題材にした映画『イル・ポスティーノ』ではネルーダは善人のように描かれていたことに対し、本作では 酒と女と享楽に溺れるネルーダの姿が描かれていることについて、

野谷さん:あれは 別人ですよね(笑)『イル・ポスティーノ』はネルーダの秘書を務めていた 経験を持つ作家が書いた原作が基になっているんです。物語の舞台も映画ではいい雰囲気のイタリアの島になっていますが、 実際はチリの海岸沿いの町なんです。こっちの映画は彼の影の部分を隠して、子供も楽しめる素敵な映画に仕上げていますね。

と笑った。

そして監督を務めたチリ出身のパブロ・ララインの演出について指摘し、

野谷さん:彼のネルーダの描き方が素晴らしい。ネルーダといえばチリの英雄だけど、彼はネルーダを知らない世代の若い監督。知らないからこそネルーダを神格化せずに自由な描き方をしているのが彼ならではのポイントだと思います。そしてちょっとネルーダをおちょくっているんですよね。ちょっと朗読し ているシーンを真似しますね。

といきなり鼻にかかった声で詩を読むネルーダのモノマネを披露!

そんなこともされるんですね、と司会が戸惑いをみせると

野谷さん:こういうひょうきんなところもあるんです。

と、会場を笑わせた。

映画情報どっとこむ ralph 最後に・・・

野谷さん:正直に言ってこの映画はとても複雑なつくりになっていて、人によって見方 が違ってくるところが面白い。ミステリアスな追跡劇になっているので、繰り返し見て楽しめます。ぜひ 2,3 回見て新たなネルーダの魅力を発見をしてほしい。

と締めくくりました。

『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』
原題:NERUDA

ⒸFabula, FunnyBalloons, AZ Films, Setembro Cine, WilliesMovies, A.I.E. Santiago de Chile, 2016

1948 年、冷戦の影響はチリにも及び、上院議員で共産党員のパブロ・ネルーダ(ルイス・ニェッコ)の元にも共産党が非合法の扱いを受けるとの報告が きた。ネルーダは上院議会で政府を非難し、ビデラ大統領から弾劾されてしまう。大統領は警察官ペルショノー(ガエル・ガルシア・ベルナル)にネルーダの 逮捕を命じ、ネルーダの危険な逃亡劇が始まる。

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監督:パブロ・ラライン『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』

脚本:ギレルモ・カルデロン
出演:ルイス・ニェッコ、ガエル・ガルシア・ベルナル、メルセデス・モラーン他

2016/チリ・アルゼンチン・フランス・スペイン/スペイン語/108 分/カラー/シネマスコープ/5.1ch/

/PG12/日本語字幕:石井美智子 字幕監修:野谷文昭

ⒸFabula, FunnyBalloons, AZ Films, Setembro Cine, WilliesMovies, A.I.E. Santiago de Chile, 2016
配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
    

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