常に時代を挑発し、世の常識に疑問符を投げかける映画監督・園子温。 彼が構想25年を経て結実したモノクロームのSF作品である監督最新作『ひそひそ星』は、5月14日より新宿シネマカリテほかロードショーとなります。 その園子温という人物の生態に迫るべく、大島新が376日に渡って彼を追い続けたドキュメンタリー映画『園子温という生きもの』が同じタイミングでの上映となります。 そしてこの度、メガホンを取った大島新監督が、日本大学芸術学部で特別講義を行いました。 日付:4月21日 |
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『園子温という生きもの』の上映を終え、壇上に上がった大島新監督は、開口一番
大島監督:この映画は若い人、特に表現者を志している人に誰よりも観てほしいと思っているので、こういう機会を持てたことをすごく嬉しく思います。ぜひ友達にも宣伝してください。 と、切り出す。 鳥山教授:園子温はすごく破天荒で自由な人という印象がありますが、映画を観ると、この時代にこういう生き様だと息苦しいんじゃないか、生き辛いんじゃないかと感じました。園さんを1年間取材してみて、彼に対する考え方が変わったことはありますか? 大島監督:撮っているうちに徐々に距離も縮まって印象が変わったということはあります。でも、つかみどころのない人で、多面体のような人でもあります。人物ドキュメンタリーって、観ている人の世代とか生きている立場によって感想が全く変わってくるんです。でも、色んな感想が出てくるところが映画の豊かさだと思います。 |
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そして、 大島監督:この映画を観終わった人の感想で“園子温という人物がますます分からなくなった”というものがあるんですが、それこそが園さんという人物を表しているような気がします。 と分析する。大島監督は長年TVドキュメンタリーの分野で活躍しているが、TVドキュメンタリーと映画ドキュメンタリーの違いについて、 大島監督:見せ方が全く違ってきます。映画は映画館に座ってもらえたらよほどのことがない限り最後まで観てもらえるけど、TVはいつチャンネルを変えられるか分からないことを常に念頭に置く必要がある。だから、飽きさせないために情報を途切らせないとかナレーションといった“お作法”のようなものがあります。今回はそこから解放されて、嬉しかったのと面白かった半面難しさもありました。 と説明。大島監督は、一度「情熱大陸」で園監督を被写体にしており、その後ドキュメンタリー映画として改めて撮影し直しているが、そのことについて、 大島監督:大抵は1度撮って完結というか自分でも満足することが多いですが、園さんに関しては“被写体としてTVサイズではない”“この人はもっと面白いだろうな”と思ったんです。そして、「情熱大陸」の時はメジャー系の作品を監督している時期で、それは園子温本来の居場所ではないんだろうと感じていました。撮影の終わり頃に、自主映画として『ひそひそ星』という作品を次に撮ることを知って、それを追ってみたいと思って、放送終了の挨拶と合わせて改めて打診をしたんです。 と、本作製作の経緯を明かし、本作は97分であることに対して、実際カメラを回した素材は170時間にも及んだといい、大島監督の話に真剣に耳を傾けたり、メモを取っていた学生達もこの数字が上がったところで思わずどよめきが起きた。 大島監督:周りのディレクターと比べてそんなに回さない方なんですが、今回はかなり回しました。現場で面白いことが起きるとこの後何が起こるんだ?という期待もありました。 と振り返りました。 |
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大島渚という偉大な監督を父に持つ者として劇映画は作らないのかという質問には
大島監督:人物ドキュメンタリーは自分に合っていると思うし、その人が何を考えているのか、どういう風に生きてきて今をどう生きているのかというのを間近に見て自分なりに解釈していくのがすごく面白いんです。 と、強いこだわりを明かす。 学生からは次々に質問の手が挙がり、昨年のTOKYO FILMeXで園監督最新作『ひそひそ星』を観たという学生が、本作で Q:この場面を観た上で『ひそひそ星』を観るのと、後で観るのとでは全く解釈が変わってくるのではないか? と質問を投げかけた。大島監督がその学生にどちらが先だといいと思うかと逆に聞くと、その学生は『ひそひそ星』を挙げ、大島監督は逆の反響を伝えつつも、その意見に大きくうなずいていた。 本作を通じて観客に感じてほしいことについて、 大島監督:自由に生きて自由に表現をするということについて。それは素晴らしいと思う一方なかなか簡単なことではないんです。園さんとお付き合いしていると、これだけ自由に、好きなことを続けてやり続けていることのすごさを感じるんです。僕も表現する人間のひとりとして勇気とか力をもらいながら制作していました。 と語りました。 |
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最後に、
大島監督:園子温監督から、正視できない。俺が(人に見られるのが)イヤなシーンばっかり人が面白がるんだよ。といわれました。経験上、被写体が手放しで喜ぶものは観客にとっては力がなかったりするんです。それは被写体にとってイヤなものが映っているのか映っていないことだと思うので、今回の園さんの感想は褒め言葉として受け止めようと思います。 と締めくくった。 『園子温という生きもの』 5月14日(土)新宿シネマカリテほかにて、 公式HP:http://sonosion-ikimono.jp/ |
イントロ
2015年には『新宿スワン』『ラブ&ピース』『リアル鬼ごっこ』『映画 みんな!エスパーだよ!』と4本の新作が公開され、日本で最も多忙な映画監督となった園子温。多くのメディアで数奇な運命をたどった半生が取り上げられ、時には過激な発言が物議を呼ぶ。しかし、それは園子温の一面でしかない。本作で描かれる園子温の“いま”は、新たな映画企画の打ち合わせに忙殺されながら、アトリエで自由奔放な絵をキャンバスに描き、時にはミュージシャンとして破天荒なライブを行い、路上パフォーマンスで警察に事情聴取されながらもアーティストとして独創的な個展を開催し、自宅では妻との時間を過ごす姿だ。そして、4半世紀前に書いた脚本『ひそひそ星』の映画化を自主制作でようやく実現させようとしていた。2014年10月、『ひそひそ星』がクランクインを迎えた。園はオリジナル脚本の設定を尊重しつつ“いま”映画にするにあたって、福島県富岡町・南相馬・浪江町でロケーションすることを選んだ。『ヒミズ』(12)『希望の国』(12)で震災、原発をいち早く描いてから4年。地元の人々の声に耳を傾け、荒涼とした風景にカメラを向ける園子温は何を思うのか。
監督:大島新
出演:園子温
染谷将太 二階堂ふみ 田野邉尚人 安岡卓治 エリイ(Chim↑Pom) 神楽坂恵
プロデューサー:小室直子、前田亜紀
撮影:髙橋秀典
編集:大川義弘 整音・効果:高木 創
音楽プロデュース:菊地智敦
企画・製作:ネツゲン 日活
制作プロダクション:ネツゲン
配給:日活 宣伝:ミラクルヴォイス
?2016「園子温という生きもの」製作委員会
2016/日本/カラー/ビスタ/97分