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第7回大島渚賞 記念上映会

 
PFF(ぴあフィルムフェスティバル)が2019年に創設、映画の未来を拓き世界へ羽ばたこうとする、若くて新しい才能に対して贈られる映画賞「大島渚賞」。
第7回目となる今回は、『ルノアール』の早川千絵監督が受賞し、本日3月22日(日)丸ビルホールにて「第7回大島渚賞 記念上映会」を開催しました。
「第7回大島渚賞」
 
第7回大島渚賞 記念上映会
日付:3月22日(日)
会場:丸ビルホール
登壇:早川千絵(第7回受賞者)、黒沢 清(審査員長)、河合優実(『ルノワール』出演) 
MC:荒木啓子(PFF ディレクター/審査員)

映画情報どっとこむ ralph 早川千絵、黒沢 清、河合優実登壇

『ルノワール』上映後に登壇した黒沢監督は、「この映画を昨年、映画館で観て、本当に驚きました」と切り出すと、世界中の子どもたちが涙を流す映像や、少女が殺される映像などが飛び出す冒頭のシーンに触れて、「こんな風にはじまる映画を観たことないと思ってビックリ仰天でした」とコメント。
「第7回大島渚賞」
そしてそれは主人公のフキが読んでいた作文だったということで、「相米慎二が得意としていたひと夏の冒険といった構造からはじまるのかなと思っていたんですが、そこから相米慎二とはかけ離れていきます。主人公が経験するひと夏というのは、人間が一生で味わうであろう、多くの悪意と残酷さと嫌悪、それから死ですね。それらが連続的に立ち現れてくるわけですが、そのうちのいくつかは彼女自身が積極的に引き起こしているというのが本当におそろしくて。しかし、それこそが魅惑的なひと夏の経験ものになっていたということで大変感動し、衝撃を受けました」と感銘を受けた様子。

それを踏まえた上で、「この物語では、死に関係するおそろしいことが次から次へと起こるわけですが、どういう風にこれだけのものを詰め込み、この物語を発想したんですか?」という黒沢監督の質問に、「この映画の脚本を書き始めたときは、自分がどういう映画をつくりたいのか、分からずに書き始めたんです。あえて言葉で説明できない映画を撮りたい。言葉にできないけど、自分の心を激しく揺さぶられるような映画をつくりたいと思ったんです」と説明する早川監督。

早川監督自身、子どもの頃から映画を撮りたいと思っていたというが、その理由について「おそらくその時に感じていた胸の痛みや寂しさといった、そういう欠落しているものを埋め合わせるものとして、当時、映画というものがあったような気がしていて。その時の感覚を思い出してつくりたいなと思ったんです。『ルノワール』に関しては、いつかこういう映画をつくりたいと思っていて。子どもの頃から考えていたシーンを。それはバラバラなエピソードだったんですけど、それを書き連ねる、というところから始めました」と述懐。
とは言いながらも、映画の制作中は手探りだったとのことで、「編集の段階でようやくこういうことが言いたかったのかなということがおぼろげに見えてきた作品だったんですけど、実際にこうやって完成して。今、黒沢監督がおっしゃってくださったような言葉を聞いて、ああ、こういう映画だったのかと。自分でも腑に落ちる感じでしたね」と振り返った。

中でも黒沢監督が感銘を受けたのが、主人公フキの「死」に対する向き合い方だった。「フキはいろいろな人の死に接するわけですが、決して悲しまないですよね。映画の冒頭からして『人は死ぬとなぜ悲しむのか』という疑問から始まっていて。さまざまな経験を経て最終的には『人が死んでも必ずしも悲しむ必要はないのだ』という、非常に強烈なメッセージを獲得するに至る。そういう物語なのかもしれないなと思いました」と指摘すると、「世の中には、人が死んで悲しいという物語が山のように溢れていて、うんざりしていたんですけど、その中でよくぞ人が死んで悲しくないという映画をつくってくれた。本当にそこは痛快で、拍手したい」と称賛する。

そしてそれは河合が演じた、フキと同じマンションの住人についても同じだった。劇中で彼女はフキに、誰にも話せずにいた秘密を打ち明けることとなる。「よくあるお芝居ですと、ここは最後に泣き崩れるんですけど、彼女は一切泣かないんですね。非常につらい苦しみであったことは分かるんですけど、フキが疑問に思ったように、別に悲しいわけじゃない。分かりやすく悲しい感情とは少し違うように見えたんです。あれは監督の指示ですか? 俳優さんって隙あらば泣こうとするじゃないですか?」と冗談めかして、会場は大笑い。
「第7回大島渚賞」
その言葉に笑顔を見せた河合も「泣くというゴールではない設計図をもとにシーンを考えてました。早川さんは時間を取ってくださる方で、現場に入る前に一度お会いして、そのシーンについて考えるという機会をつくってくださった。そこではフキ役の鈴木唯ちゃんといたんですけど、3人で色々なトライをして、一緒に探していきました。その時は泣くという選択肢は出なかったんですけど、リハーサルではいろんな挑戦をしました」と振り返る

そのシーンで黒沢監督がユニークだと感じたところとして、女性の深刻な身の上話を聞いていたはずのフキが、途中で飽きたのか、ベランダの方に行ってしまうところだった。「フキは全然話を聞いてなくて。事実上、河合さんの独り言のようになって。自分の過去を、誰に向かってでもなくしゃべるわけです。あのお芝居は難しくなかったですか?」と質問。

河合も「思い返してみると、催眠術ごっこをしたい子がいて。それを受け入れて催眠術にかかったふりをしてあげる、というところからスタートして。なぜか分からないけど、途中で本当に、ほぼ催眠術にかかったような状態になって。自動的に自分の口から話が出てくるようなゾーンに入ってしまった。それでひとりでしゃべってたと思うんですけど、唯ちゃんが勝手にどこかに歩いて行っちゃうのもリハーサルの中で見つかったことでしたね」と振り返る。
「第7回大島渚賞」
その流れで「俳優さんにとって、ワンシーンだけのゲスト出演というのは楽なんですか? それともつらいものですか?」と質問する黒沢監督。それに対して「難しいですね」と返した河合は、「やっぱり自分の目が届く場所がそのワンシーンしかないので。あんまり見渡せない。結局自分の役と、自分が関わるシーンをより良くする、ということに一番重きを置くことになるので、それが難しいですね」と説明。

そこで「逆に言えば、そこさえやればあとはお任せ、といった自由もあるのでは?」という黒沢監督の指摘に、「そうですね。お邪魔する感覚でした。1日、よろしくお願いしますっていう感じ」と返した河合。黒沢監督も「何でも来いみたいな感じがあのシーンからも感じられて、すごくすがすがしかった」と振り返った。

さらに黒沢監督は、劇中に散りばめられたエピソードのおそろしさについて言及する。「友達の家で父親の浮気の証拠を、遊びを装ってわざと当ててみせて反応を見たり、父親の病室で、隣のベッドで寝ているおじいさんの手を握って孫のふりをしたり。友達の家に行ったら、そのお母さんがフキの靴下を汚そうにビニール袋に入れたり。入院したリリーさんが久しぶりに家に帰って、明かりをつけたら喪服がかかっているとか。どれもほとんどホラー映画のネタですよ。1つとして心温まるいい話がない。それをあえて『これって普通ですよね』と提示しているところがすごい」と指摘し、ドッと沸いた会場内。

それに対し早川監督は「怖がらせようと思って書いたわけではなく、単に自分が好きなんでしょうね」と返答しつつも、
「第7回大島渚賞」
「そう言われると、ちょっと自分が心配になってきますね」と苦笑い。「この映画も、何の事前情報も知らずに来ると、心温まる子どもの家族の話だと思うかもしれない。でも自分としてはこれが割と普通の感覚で。みんな多かれ少なかれこういう感じを持ってるんじゃないかなと思って入れたんですけどね」と振り返ると、「普通の感動的な物語に素直に感動できない自分がいて。ひねくれているなと常に思っていました」とコメント。黒沢監督も「少数派同士、がんばりましょう!」と笑ってみせた。

そしてフキと自分自身を重ね合わせて見ていたという河合も「わたしもたぶん早川さんと同じ感覚を共有している部分があるなと思いながら観ていました。やはりやってはいけないことをやりたくなったり、いい結果にならないと思っても手を出してしまう気持ちはすごく分かります。その結果悪いことが起きても、言葉にはできない。それは子どもだからだし、わたしは大人になっても全然言葉にできない。自分の中でも言葉にできないことがそのまま映像に残っていたのが好きでした」と深く共鳴している様子だった。
「第7回大島渚賞」
そしてあらためて「映画を撮りたいと思うことと、映画監督になるということは違うのではないか」という黒沢監督からの問いかけに、「まさに今すごく不思議に感じているところです」と深く同意した早川監督。「子どもの頃、映画監督といえば、黒沢監督のように何でも分かっていて、スタッフがその監督のために動くような、人間的な魅力があって、ブレない存在だと思っていましたが、それと自分自身がだいぶ乖離しているなと思っていたので、自分が映画を撮ろうと一歩を踏み出すのにすごく時間がかかりました。でも、いろんな監督がいるんだということが分かってきて、自分の思い描いていた“いわゆる映画監督”じゃなくても映画はつくれるんだと分かってきたんです」とその思いを語ると、黒沢監督も「僕でもできているんですから大丈夫ですよ。誰でもやれるみたいですよ、監督って」と付け加え、会場の笑いを誘った。

一方、俳優としての道のりを聞かれた河合は、そのはじまりをこう振り返る。「わたしは元々ダンスを習っていて、ステージの上でみんなでつくったものを披露するのがすごく楽しかったんです。だから最初は舞台に興味があったし、誰か他人を演じるという興味よりも、パフォーマンスすること、芸を披露することが最初の原動力でした。事務所に所属すればそれが仕事になるだろうと思って始めました」と説明。その上で「元々はつくることも好きだったし、学生の時はダンスの振り付けをしたり、ステージを演出したりということがすごく好きでした。でもやっぱり俳優を始めてからは俳優で精一杯やっていこうということになりましたね」と表現者としての喜びを語った。

「第7回大島渚賞」
※大島渚監督の名前表記は「渚」となります。

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