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試写会上映&トークイベント

 
『インフル病みのペトロフ家』『チャイコフスキーの妻』で知られる、ロシア出身のキリル・セレブレンニコフ監督(2022 年ロシアから亡命)が、詩人・作家・活動家・革命家・・・といくつもの顔をもち活躍した実在のアナーキスト、エドワルド・リモノフの伝記小説を映画化した『リモノフ』(配給:クロックワークス)が、いよいよ 9月5日(金)から公開となります。
リモノフ
リモノフ
公開に先立ち、8月25日(月)にユーロスペース(東京・渋谷)にて行った試写会上映後に、映画評論家の森直人が登壇し、聞き手である奥浜レイラと共にトークショーを行いました。
『リモノフ』トークイベント
 
試写会上映&トークイベント
日付:8月25日(月)
場所:ユーロスペース(東京・渋谷)
登壇:森直人
MC:奥浜レイラ
 

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森直人&奥浜レイラ登壇

 
本作は、『007』シリーズの Q 役や『ウーマン・トーキング私たちの選択』(22)など、ハリウッド大作から個性派監督の作品まで出演し続ける演技派ベン・ウィショーがエドワルド・リモノフを熱演。トークは上映後に行われ、133分にわたって描かれる、リモノフの破天荒でアナーキー、高濃度な物語を見終えたばかりで興奮もさめやらぬなか、登壇した森が開口一番「かなりエネルギッシュなので、お疲れになったかもしれませんね(笑)。大変おもしろい映画であると同時に噛み砕きがいがある作品ですね」と話すと、会場からは同意を示すかのように笑いが起こった。
 
本作の監督であるキリル・セレブレンニコフの大ファンだという森は、旧ソ連時代、レニングラードに実在した伝説のロックバンド「キノ」をモデルにセレブレンニコフ監督が手がけた青春映画『LETOレト』(18)のタイトルを挙げ、「監督は 1969 年生まれ。旧ソ連時代の 1980年代、当時は西側の文化が統制されていたので、地下流通されていたイギリスやアメリカのロックに感化され影響された人で、今回も(『LEOレト』と)つながっていると思います。監督にとって初の英語作品で、しかも英国出身のスター俳優、ベン・ウィショーが主演という国際的な作品ですけど、結果的にロシアの映画作家としてのセレブレンニコフの一つの区切りというか、集大成的な1 本になっていると思うし、セレブレンニコフ監督の入門編としても良いと思います」と、日本でもその作家性で1作ごとに人気を高めているキリル・セレブレンニコフの監督最新作としても本作を高く評価した。奥浜が、「キリル・セレブレンニコフ監督はこの作品について、『リモノフ』という冠を謳っているけれども、彼本人をそのまま描いた伝記映画ではないことを強調していますよね」と振ると、森は、「あくまでエマニュエール・キャレールが書いた原作本を映画化したフィクションだと。監督が『(リモノフは)ロシアの『ジョーカー』のようなものだ』と言っているように、アンチヒーローなんですね。ロシアを内面化した人物、ロシアのある断面そのものを象徴、体現したキャラクターだと思います。ヒーロー志願の道化というか・・・結構イタいじゃないですか」とキャレールが描いたキャラクター“リモノフ”の“イタさ”にふれると、奥浜が「(恋人となる)エレナを略奪するために、家の前でリストカットしたりするし、ちょっとイタさもあれば危ういな・・・と。」と同意すると、「言うなればリモノフはずっと『逆張り』を続けているような存在。この映画は1989 年に軸をおいて、1969 年から 2003 年までの、20 代から 60代のリモノフを描いています。最初はまさにロシアンパンクそのものの反逆児で、ロシアを飛び出て西側である 70年代のニューヨークへ行き、いろんな紆余曲折があって、フランスで作家として成功するわけです。ところが、1989年にソ連が崩壊すると、西側が旧ソ連の悪口ばっかり言うものだから、逆に愛国心が湧いてきて、ネオユーラシア主義といって偉大なロシアの復活を唱える「国家ボリシェヴィキ党」を創設するという流れに入っていく。このリモノフの道行きというのが、現在に至るロシアの道行きと、まさに重なっているのではないか、というのがセレブレンニコフ監督の基本的な見立てだと思います」と解説。さらに「プーチンが初当選した2000 年あたりまでは、リモノフはロシアそのものだったという描き方をしている」と言う森に、「それまでは反体制的な考え方であったのに…」と奥浜が合いの手を入れると「彼は、論理的に一貫していない、矛盾だらけの存在です。なぜ愛国に傾いたかはかなり克明に描かれていて、行動原理を見ていると分かるんですが、彼は情動と衝動、理屈というより気分で動いていくタイプで、だから政治的図式みたいなものも反転に反転を繰り返して、ぐちゃぐちゃになっていく」と語った。
 
そして話題は、そんな破天荒なリモノフに扮したベン・ウィショーの熱演に。「ベン・ウィショーが素晴らしい。リモノフの危うさをいい意味でさらに加速させている。作品の“芯”を理解して演じていらっしゃると思います。」と森の言葉に、奥浜も「監督がインタビューで、ベン・ウィショーさん自身はとても良い人で人格者で、リモノフとは全然違う性格だからこそ、この両義性というか、いろんな側面があるという描き方ができたんじゃないかという話もしてましたね」と答える。ちなみに、『007』シリーズのQ 役や『ウーマン・トーキング私たちの選択』、『パディントン』シリーズで主人公のクマ、パディントンの声を担当するなど、作品選びにも定評がある演技派ベン・ウィショーは、今回の『リモノフ』への出演について、「私自身、人生においても仕事においてもリスクを取って実験的なことをしてみたい、結果が見えない分野の仕事をしてみたいと感じている時期でもあった。キリル・セレブレンニコフの手にゆだねれば間違いないと感じた。彼の作品の大ファンなんだ。きっとすごく面白くなると感じたし、実際そうなったよ!」とインタビューで語っている。
 
トーク終盤、「森さんは、この人物の描き方をどう感じていましたか?」との奥浜の問いに、森は、前作『チャイコフスキーの妻』(22)の日本公開時、2024年にオンラインでセレブレンニコフ監督にインタビューをした時のことに触れ、「その時『リモノフ』のことも少しお話したんですけど、リモノフは三島由紀夫の影響をすごく受けているんです。実は、セレブレンニコフ監督も日本にちょいちょい来ていて、『三島詣で』みたいなことをやっていて(笑)、三島が大好きだそうです。リモノフに対しても一時ちょっとハマって、党の機関紙『リモンカ』を読んでいた時期もあったそうです」と、リモノフとセレブレンニコフ監督がともに三島由紀夫に影響を受けていると言及し、会場からは驚きの声があがった。さらに、「劇中で『三島に憧れているなら、おめでとう。君は我が党の一員だ』というシーンもありますよね。あそこで、それまでずっとヒーローになりたがってた彼が、かなりおじさんになってから遅咲きで“ロックスター”になれた。あの高揚感すごいですよね。“プチ・カリスマ”になっちゃった時の嬉しそうな感じとか、扇動的なことを言ったりとか。あれはもう理屈を超えたテンションなんでしょうね、政治のテンション」と、ヒーローに憧れていたリモノフがカリスマ化していく描写について森が言及すると、奥浜も「カリスマ性だったり異端者であったり、なんか今の時代にも見たことあるな……みたいな。そういう熱狂の起こし方なんですね」と納得するように首肯。続けて、森の「今、世界的に右傾化と言われていますけど、この映画が鋭いなと思うのは、『なぜ人は愛国に転ぶのか?』という愛国のメカニズムをかなり正確に描いていること。理屈というより、情動的な部分が大きくて、怒りとか根っこにある疎外感、それがどう転倒するのかが描かれていると思います」という言葉に、会場にいた観客たちも大きく頷いていた。
 
そして、試写会後の口コミでは「ウィショーの代表作!」「映像表現が非常に印象的」「凄まじいエネルギーの映画」「今、上映される意味を感じる映画」と肯定的なレビューがある一方、「破天荒で全く共感できなかった」「リモノフヤバい」「どうかしている」「映画としては最高のキャラだが、実際には関わると危険」など、賛否がわかれた。
 

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エドワルド・リモノフProfile

 

[1943-2020 ウクライナ出身]

作家活動中の 20 代にソ連への反体制活動で国外追放処分を受け、アメリカに亡命後ヨーロッパへ渡る。ソ連崩壊の 1991年にモスクワへ戻り、1993 年国家ボリシェビキ党を共同設立し、反プーチン・反統一ロシア党を掲げ活動していたが 2020年に死亡。詩人、作家、反体制派、亡命者、執事、ホームレス、兵士、活動家、革命家、といくつもの顔を持つ。
 

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『リモノフ』

 
9月5日(fri)より全国公開
 
X:
@limonovmovie
 
HP:
@limonovmovie/
 
物語・・・
2020 年、エドワルド・リモノフ死亡。そのニュースはロシアのみならず世界中に衝撃を与えた。詩人にして革命家、亡命者であり兵士。幾つもの顔を持つ彼は、ソビエト連邦下のロシアに生まれ、詩と反骨精神を武器にモスクワ、ニューヨーク、パリへと渡り歩いた。名声と自由を夢見て亡命し、恋人エレナとともに辿り着いた“自由の国”アメリカでは、孤独と挫折に打ちのめされながらも、自らの言葉で世界と闘い続けた。ホームレス、執事、作家、国家ボリシェヴィキ党党首──暴力と詩、愛と怒り、思想と行動のはざまで世界を挑発し続けたその姿は、称賛と危険視の両極で今なお語り継がれる。ソ連崩壊、ユーゴ紛争、ロシアの愛国主義の台頭──激動の時代の只中で彼が愛し、信じ、裏切られ、それでも書き続けたものとは何だったのか。なぜ彼はロシアの地に舞い戻ったのか?実在した“希代のカリスマ”の激動の軌跡を、圧巻の映像ともに描き出す、愛と破滅のバラード。
 
リモノフ

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主演:ベン・ウィショー
監督:キリル・セレブレンニコフ
原作:エマニュエル・キャレール
原題:LIMONOV.THE BALLAD
字幕翻訳:北村広子
提供:クロックワークス、プルーク
配給:クロックワークス
© Wildside, Chapter 2, Fremantle España,
France 3 Cinema, Pathé Films.
2024年、イタリア・フランス・スペイン、133
分、5.1ch、シネマスコープ、英語・露語・仏語、R15+
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