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中原中也の詩「ゆきてかへらぬ」

 
「文化の百花繚乱」の様相を呈した大正から昭和初期を舞台に、実在した男女3人の壮絶な愛と青春を描いた映画『ゆきてかへらぬ』が全国公開中です。
『ゆきてかへらぬ』
 
映画タイトルの由来ともなっている、中原中也の詩「ゆきてかへらぬ ――京 都――」
公開となったのは、長谷川泰子を演じた広瀬すずと中原中也を演じた木戸大聖が、本作のタイトルの由来ともなっている中原中也の名詩「ゆきてかへらぬ ――京 都――」を交互に朗読で紡ぐ特別映像。

「ゆきてかへらぬ ――京都――」は中也が死の直前に書き上げた詩集「在りし日の歌」に収録された一遍。「あの頃はニ度と帰っては来ない」と題したこの詩は、映画でも描かれる、中也が16歳から18歳まで過ごした京都での青春の日々を感じ取ることができ、まだ何者でもない自分への焦燥と孤独、そして運命の女性・長谷川泰子との出会いを垣間見ることができる。
 

ゆきてかへらぬ

――京 都――
僕は此の世の果てにゐた。陽は温暖に降り洒そそぎ、風は花々揺つてゐた。
木橋の、埃りは終日、沈黙し、ポストは終日赫々と、風車を付けた乳母車、いつも街上に停つてゐた。
棲む人達は子供等は、街上に見えず、僕に一人の縁者なく、風信機の上の空の色、時々見るのが仕事であつた。
さりとて退屈してもゐず、空気の中には蜜があり、物体ではないその蜜は、常住食すに適してゐた。
煙草くらゐは喫つてもみたが、それとて匂ひを好んだばかり。おまけに僕としたことが、戸外でしか吹かさなかつた。
さてわが親しき所有品は、タオル一本。枕は持つてゐたとはいへ、布団ときたらば影だになく、歯刷子くらゐは持つてもゐたが、たつた一冊ある本は、中に何も書いてはなく、時々手にとりその目方、たのしむだけのものだつた。
女たちは、げに慕はしいのではあつたが、一度とて、会ひに行かうと思はなかつた。夢みるだけで沢山だつた。
名状しがたい何物かゞ、たえず僕をば促進し、目的もない僕ながら、希望は胸に高鳴つてゐた。
林の中には、世にも不思議な公園があつて、不気味な程にもにこやかな、女や子供、男達散歩してゐて、僕に分らぬ言語を話し、僕に分らぬ感情を、表情してゐた。
さてその空には銀色に、蜘蛛くもの巣が光り輝いてゐた。

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『ゆきてかへらぬ』

 
2025年2月21日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開中
 
公式HP:
https://www.yukitekaheranu.jp 
 
公式X(旧Twitter):
@yk_movie2025
 
公式Instagram:
@yukitekaheranu_movie/ 
 
公式TicTok:
@yukitekaheranu_movie
 
 
物語・・・
京都。まだ芽の出ない女優、長谷川泰子(広瀬すず)は、まだ学生だった中原中也(木戸大聖)と出逢った。20歳の泰子と17歳の中也。どこか虚勢を張るふたりは、互いに惹かれ、一緒に暮らしはじめる。価値観は違う。けれども、相手を尊重できる気っ風のよさが共通していた。
東京。泰子と中也が引っ越した家を、小林秀雄(岡田将生)がふいに訪れる。中也の詩人としての才能を誰よりも知る男。そして、中也も批評の達人である小林に一目置かれることを誇りに思っていた。男たちの仲睦まじい様子を目の当たりにして、泰子は複雑な気持ちになる。才気あふれるクリエイターたちにどこか置いてけぼりにされたようなさみしさ。
しかし、泰子と出逢ってしまった小林もまた彼女の魅力に気づく。本物を求める評論家は新進女優にも本物を見出した。そうして、複雑でシンプルな関係がはじまる。重ならないベクトル、刹那のすれ違い。ひとりの女が、ふたりの男に愛されること。それはアーティストたちの青春でもあった。
ゆきてかへらぬ

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出演:広瀬すず、木戸大聖、岡田将生、田中俊介、トータス松本、瀧内公美、草刈民代、カトウシンスケ、藤間爽子、柄本佑
監督:根岸吉太郎 
脚本:田中陽造
配給:キノフィルムズ
©︎2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会 
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