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特別試写会 イベント

 
『ANORA アノーラ』の公開を控え、「ANORA アノーラ」×「アフター6ジャンクション2」特別試写会を実施いたしました。上映後のトークイベントの模様と、トークイベントで言及されたラスベガスのホテルでの本編シーン映像を解禁です。
 
2月28日の日本公開を目前に控え、作品への期待が日々高まる中、2月21日(金)にライムスター宇多丸が送るTBSラジオの聴くカルチャー番組「アフター6ジャンクション2」(月~木曜日22:00 – 23:55)とのコラボによる特別試写会を開催。
上映後にはメインパーソナリティの宇多丸と水曜パートナーを務める宇垣美里、番組に数多く出演している映画ライターの村山章によるトークショーが行われました。
ANORAアノーラ
 
『ANORA アノーラ』×TBSラジオ
「アフター6ジャンクション2」特別試写会 イベント
日付:2月21日(金)
登壇:ライムスター宇多丸、宇垣美里村山、村山章

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ライムスター宇多丸、宇垣美里

 
映画を鑑賞したばかりの観客に宇多丸が「ご覧になっていかがでした? めちゃくちゃ面白いし、いい映画でしたよね」と呼びかけると、会場からは満足げな拍手が。ANORAアノーラ
「途中までのあの勢いたるや!」と興奮気味に語る宇垣も、「最後のシーンもたまらないものがあります」と語るなど、深く感銘を受けている様子。
ANORAアノーラ
そこからさらに映画ライターの村山章を迎えて、およそ50分近くにわたり、本作の話を深掘りしていった。
本作は139分という上映時間だが、この日、観客と一緒に2回目の鑑賞を敢行したという村山も「2時間を越える映画はつい長いなと思ってしまう癖がついているんですが、この映画に関してはそんなにありました? と思うくらいでしたし、2回観たことでいろんな発見がありました」とコメント。
ANORAアノーラ
細かいところのつくり込みや、伏線的に登場する登場人物などについて指摘すると、宇多丸も「ショーン・ベイカーの映画って一見ドキュメンタリータッチと感じられる部分も多いけど、よく観ていくと『あれ、完全な伏線じゃん!』とわかるような作り込みもよくできていて。(アカデミー賞の)脚本賞ノミネートも納得だなと思いますよね」と深くうなずいてみせる。
 
映画ライターとして活躍する村山だが、実は映画のみならず、インドネシアのバリ島や、ラスベガスについても造詣が深い。そこで舞台のひとつとしてラスベガスが登場する本作の背景を解説することに。ニューヨークでストリップダンサーをしながら暮らす主人公のアノーラと、ロシア人の御曹司イヴァンがラスベガスで過ごすホテルは、ラスベガスに実在する超高級ホテル「ザ・パームスカジノ リゾート」であるが、このホテルについて「ここはラスベガスの有名なホテルがズラッと並ぶラスベガス・ストリップなどのメインエリアから離れた場所にある比較的新興のホテルなんです。ここがなぜ有名になったのかというと、とにかくパーティをしたい若者たちと、羽目を外したいセレブの隠れ家みたいになっているんです」と説明。それゆえ、イヴァンのような素行の悪い、新興財閥の息子もノーチェックで受け入れてくれる。
さらにイヴァンがロシアに帰るまでの7日間、アノーラは1万5000ドルでイヴァンの“契約彼女”となったが、その過程でパーティやショッピングなど贅沢三昧をしたふたりは、最後の締めくくりとしてラスベガスの教会で衝動的に結婚することになる。このエピソードについて「監督のショーン・ベイカーが頭に置いていたか分からないですが、ブリトニー・スピアーズと一緒なんです」と指摘する村山。2004年に幼なじみのジェイソン・アレキサンダーとラスベガスで電撃結婚をしたスピアーズが、それから55時間後には婚姻無効の申し立てを行った、というゴシップを踏まえつつ、「アノーラとイヴァンもリトル・ホワイト・チャペルに夜中に飛び込んでいきますが、あそこは簡単に結婚式が挙げられることで有名。ブリトニー・スピアーズが幼なじみと行ったんですが、その後すぐに結婚を無効にしているんですよ。だから少なくともそういう舞台としてピッタリなホテルなんです」と解説する。
 
アノーラとイヴァンの恋は盛り上がり、衝動的に結婚式まで行うことに。だがロシアにいたイヴァンの両親が、息子が娼婦と結婚したと聞きつけ、猛反対。ふたりの結婚を無効にさせるべく、あらゆる強引な手口を駆使してアノーラに嫌がらせをし、彼女の尊厳を傷つけ、彼女を踏みにじろうとする。そして当のイヴァンは両親に怯えてしまい、アノーラの前から逃げ出してしまう始末だった――。そんなイヴァンについて宇垣は「今回観たのは2回目なんですけど、その後どうなるのか分かって観ると『結婚しよう』とイヴァンが言うところでブチ切れそうになった」と怒り心頭。
すっかり物語に感情移入している様子の宇垣は「『お前がはじめた物語だろ!』と思うんです。アノーラは結婚しようと言われて『そんな冗談言っちゃって。できるわけないじゃん』と言ったのに、結婚しようと言うから結婚しました。じゃ責任をとれよ。彼女は一回腹をくくってるんですよ。『結婚しようと言ったよね。わたしたち愛し合ったと思っているからこそ頑張れるし、わたしの目を見て。頑張るって言ったよね。お母さんとお父さんに話せるって言ったよね』ってあんだけ話している間、アイツ目を見ない!」と熱のこもった訴えに、女性の観客を中心に力強くうなずいている人の姿も多数見受けられた。
そんな宇垣の言葉に宇多丸が「あいつはアノーラが大事な話をしようとする時に限ってゲームをやっていたりして、とにかくまともな会話が成り立っていないよね」と指摘すると、「それだけ彼女のことをなめていたんだと思います。本気じゃなかった。きっとこうなることも分かっていた。一夜の夢だと思っていたのかもしれないけど、それに付き合わされる身にもなってみてよと思うし。あの目のそらし方、目も見ない感じはリアリティーがあるなと感じました」とキッパリと吐き捨てた宇垣。
そうした具合に自業自得とはいえ、言われ放題のイヴァンだったが、宇多丸が「もちろん彼の行動は本当に卑怯で、許されないものなんですけど、イヴァンはイヴァンで、彼もまたあらかじめ人生を奪われている人なんですよね。あれ以上成長も見込めないし、大人になる機会を奪われているという意味では彼も哀れな人間なのかもしれない」と少しばかり同情してみせると、村山も「一回目に観た時は、クソガキだし、ドラ息子だし、嫌いだなと思ったんですけど、2回目に観るとこいつ可愛いなと思うようになってきた。というのも遊んでいる時はアイツ本当に楽しそうな顔をしているんですよ。もちろん鬱屈がある人の裏返しというのは分かるけど、その瞬間瞬間を楽しむんだという、やけっぱちな明るさがあるな、というのは2回目に観た時に感じました」と指摘してみせた。
さらに「イヴァンは本当に幼くて、責任をとるという意識もないという」という宇多丸に「アホなんですわ」と切り捨てる宇垣。そして村山も「本当にアホなんです。だから会わなきゃ良かったと思うんですけど、アノーラもポジティブな方向が見つかるなら絶対にそっちにいこうとする人で。だから映画の9割9分まで自分をはかなんだりしないし、どんなお客さんも楽しませて帰らせようとする職業柄もあると思うんですけど、でもいい方に転ぶならいいでしょうというスタンスの人があのバカ息子と出会った。もちろんそれは勘違いでしたけど、ふたりのポジティヴィティの相性がいいんじゃないかと思った」とコメント。
ANORAアノーラ
さらに宇多丸が「イヴァンは途中で楽天性を投げ出して無理じゃんという風になるけど、最初のバカな勢いを押し通せばそれこそロマンチックコメディ的な結末にもなりえたのかも」と続けると、「でもショーン・ベイカーの映画ですからね」と村山。さらに「ショーン・ベイカーの映画って、いつも地を這うような現実を扱いつつ、最後にちょっと飛躍するところがあって。もちろんその飛躍もちょっと切なかったり皮肉だったりな飛躍なんだけど、今回は、しっとりと現実というか、ちゃんと“地面に帰ってくる”感じがあって。だからこそのこの余韻なんだと思う」と宇多丸が指摘すると、村山も「やっぱり新境地だと思います」と付けくわえた。
そんな村山はショーン・ベイカー監督の作風の変化を感じたという。「ちょうど前作の『レッド・ロケット』あたりから変わってきたと思うんですが、今回は途中で急にアクセルをバーンと踏んで離さないまま続く。これをやったことなかった」と指摘すると、宇多丸も「今回はジャンル的な型でいえばスクリューボールコメディで、スピーディな会話の応酬で引っ張ってゆく作りだから、過去作にない密度になっているのかもしれない」とコメント。さらに村山が「今までで一番娯楽性が高い。これまではナチュラルな映画空間を作っていた監督が、ガンガン映画をまわしていきますよと。腕力を使い始めたら、こんなパワープレイヤーだったのか!という感じがしました」と語った。
 
その後もショーン・ベイカー監督が「好きに解釈してくれて構わない」というラストシーンの考察について深く語り合った3人。村山は宇多丸と宇垣の意見を聞いたのち、男性の自分が言うのも気が引けるがと前置きした上で「アノーラは基本ポジティブ。でもそれはこの世の中で女の人がどうやって生きていくかっていうときに、彼女の道がどれだけ戦いであったかということだと思うんですよね。本当に孤独な戦いで、もしかしたらドラ息子(との結婚)で終わるかも。 (この戦いは)止められるかもって思ったのかもしれない。 でも全然そうじゃなかった。絶対に泣き言を言わない人がどれだけ無理してきて、どれだけ大変なことだったのか。それが最後にわかるっていう映画なんだなと思った。」と、見解を述べた。
観客もそんな彼らの話に終始興味深い様子で、最後まで熱心に耳を傾けていた。

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『ANORA アノーラ』

 
公式 X:
https://x.com/anora_jp
#アノーラ #ANORA
 
 
第97回米アカデミー®賞 作品賞をはじめ、主演女優賞(マイキー・マディソン)、助演男優賞(ユーリー・ボリソフ)、監督賞、脚本賞、編集賞の6部門にノミネートされた『ANORA アノーラ』。先日発表されたオスカーの重要指標である「第30回クリティクス・チョイス・アワード」で作品賞、「第77回全米監督協会賞」で長編映画監督賞、「第36回米製作者組合賞」で作品賞、「第77回全米脚本家組合賞」で脚本賞を受賞。「第78回英国アカデミー賞」では、主演女優賞とキャスティング賞に輝き、アカデミー賞作品賞最有力候補と目されている。
 
物語・・・
NY でストリップダンサーをしながら暮らす“アニー”ことアノーラは、職場のクラブでロシア人の御曹司、イヴァンと出会う。彼がロシアに帰るまでの 7 日間、1 万 5 千ドルで“契約彼女”になったアニー。パーティーにショッピング、贅沢三昧の日々を過ごした二人は休暇の締めくくりにラスベガスの教会で衝動的に結婚!幸せ絶頂の二人だったが、息子が娼婦と結婚したと噂を聞いたロシアの両親は猛反対。結婚を阻止すべく、屈強な男たちを息子の邸宅へと送り込む。ほどなくして、イヴァンの両親がロシアから到着。空から舞い降りてきた厳しい現実を前に、アニーの物語の第二章が幕を開ける。
ANORA_アノーラ

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監督・脚本・編集:ショーン・ベイカー
製作:ショーン・ベイカー、アレックス・ココ、サマンサ・クァン
出演:マイキー・マディソン、マーク・エイデルシュテイン、ユーリー・ボリソフ、カレン・カラグリアン、ヴァチェ・トヴマシアン
配給:ビターズ・エンド ユニバーサル映画
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2024 年/アメリカ/カラー/シネスコ/5.1ch/139 分/英語・ロシア語/R18+
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