特別上映後トークイベント『パリ、テキサス』『ベルリン・天使の詩』『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』など、数々の傑作を世に送り出し続けてきた名匠ヴィム・ヴェンダース。彼が長年リスペクトしてやまない役所広司を主演に迎え、東京・渋谷の公共トイレ清掃員の日々を描いた『PERFECT DAYS』は、TOHOシネマズ シャンテをメイン館として全国公開し、興行収入は13億円を突破し、世界での興行的にもヴェンダース映画最高の興行収入を記録しています。 この度、韓国・ソウルにて行われた『PERFECT DAYS』特別上映後トークイベントに役所広司、ソン・ガンホが登壇しました。 特別上映後トークイベント |
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役所広司、ソン・ガンホ登壇
<役所:「もし、『PERFECT DAYS』の監督がポン・ジュノ監督だったら…>ソン・ガンホが本作の感想を求められると、「無音の木々の間にさす一筋の光。日本の役所広司という偉大な俳優の微笑。役所さんの俳優としての演技の深み、そして作品が描く、人生の深みというものが計り知れないものだと思いました」と熱を込めて語り、役所は「カムサハムニダ」と深く礼をした。 <ソン・ガンホ「役所さんだけに裏でお話しします」ポン・ジュノ監督に言われた言葉とは…?>最小限の台詞で、俳優の表情や身体の動きが物語をつくる本作へ、俳優としての質問はあるかと問われるとソン・ガンホは「名場面はたくさんありますが、ラストシーンは外せないと思います。長回しで、平山の顔の寄りで撮っていますが、どういうことを考えながら演じたのか、監督がどういうディレクションをしたのか?ということです。『殺人の追憶』(2003)でラストシーンを撮る前に、ポン・ジュノ監督が数十人のスタッフの前で聞こえる声で指示するのではなく、僕に耳打ちをしたことがあったので、そういうことがあったのか気になりました」というと、役所は「俳優人生のなかで、あれほど自分の顔がスクリーンに大写しになったのは初めてで、目線をそらすこともできず、カメラを見つめなければいけないというのが少し照れ臭かったですね。ト書きには“バックミラーに平山の目に涙が見える、でも悲しそうではない。これから自分が選んだ仕事に向かう”というような詩的な文章が書かれていました。撮影の前に監督に”涙を見せたほうがいいのですよね?”と聞いたら、”泣かなくてもいい。でも泣いた方がいいかな”と言われて、”じゃ、頑張ります”と言って、やりました。本編と同じようにFeeling Good を流しながらの撮影だったので、歌っているニーナ・シモンの魂が影響していると思いました」と撮影時を振り返った。 <他国の監督と自国で映画作りをするということ>役所は『PERFECT DAYS』でヴィム・ヴェンダース監督と、ソン・ガンホは『ベイビー・ブローカー』(2022)で是枝裕和監督と、他国の監督と自国で映画作りをした経歴を持つ。それぞれにどういった刺激的影響を与えたのか問われると、役所は「ヴィム・ヴェンダース監督を尊敬している俳優とスタッフが集まって、毎日映画の作り方を学んでいるような、ヴィム・ヴェンダース教室のような撮影でした。監督はいつも笑顔でユーモアがあって、映画作りってこんなに楽しいものなんだぞということを教わったような気がします。ドイツ人である有名な監督が日本での物語をこれだけ違和感なく作品にできたというのは、やはり監督が日本という国を好きで、そして日本人というものを好きでいてくれたことが一番大きいと思います」と振り返った。 <役所広司×ソン・ガンホ、お互いの出演作で好きなのは…?>役所は悩みながら、「初めてソン・ガンホという俳優をみたのが『シュリ』(1999)で、そのあとが『JSA』(2000)で最近の作品もみてますけど、やっぱり『殺人の追憶』(2003)ですね。作品も素晴らしかったし、あの田舎者の捜査員がとても一緒には付き合えないような刑事でしたね(笑)作品自体がユーモアもあって緊迫感もあって、少年に両足で飛び蹴りした時には大笑いしました。ソン・ガンホさんはやっぱり実在感があるというか、リアリティがあるというか。ユーモアと、シリアスな部分のギャップの大きさが観客としてはとても魅力的なんです。すごい俳優さんがいるんだなと思っていました」 <芝居というのは完璧なもの、目に見えないものに向かって絶えず走っていく仕事>本作にちなんで、「平山のように、自分でちょっとした満足感、幸福感を得るためにどういった取り組みをしているのか」という質問に対し、役所は「自分がイメージした通り、なかなか自分の体も芝居も上手くいかず、落ち込みもしますけれども、撮影が終わった時に、“今回はダメだけど、次にやるとひょっとしたらうまくいくかもしれない”というのを繰り返し、繰り返して40数年やってこれているような気がします」と答えた。 <日本と韓国でいい交流ができたら…>最後に、ソン・ガンホが「今の時代の映画は、物語の展開が速く、刺激的じゃないと注目を集められない時代です。そんな時代に、我々にあるべき姿は何か、まず大切な価値は何か、それを立ち止まって考えさせられるという意味で『PERFECT DAYS』は本当に大切な作品だと思います。また、人生というのは完成がないんだという真理を語ってくださったような気がして、本日この場は本当に素敵な時間でした。改めて役所広司さんという俳優さんの偉大さを感じました」というと、隣同士で座る二人が頭を横に近づけてお辞儀。 |
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『PERFECT DAYS』
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監督:ヴィム・ヴェンダース
脚本:ヴィム・ヴェンダース、 高崎卓馬
製作:柳井康治
出演:役所広司、柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和
製作:MASTER MIND 配給:ビターズ・エンド
2023/日本/カラー/DCP/5.1ch/スタンダード/124分/G
原題:『PERFECT DAYS』 邦題:『PERFECT DAYS』
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