東京国際映画祭コンペティション
昨日、『ニーナ』のゲストによる記者会見が行なわれましたので、ご報告いたします。

■ 日時・場所 10月25日(木) 15:30~ @ムービーカフェ
■ 登壇者 エリザ・フクサス(監督)
     ナタリー・クリストィアーニ(編集)

エリザ・フクサス監督、そして編集のナタリー・クリストィアーニさんに様々な質問にお答えいただきました。

Q&A内容

Q: 構図がとても美しい作品でしたが、影響を受けたアーティストや映画監督、参考にしている絵画などあれば教えてください。

エリザ・フクサス(監督): 愛する映画監督はデヴィッド・リンチそしてフェデリコ・フェリーニ、文学はレイモンド・カーヴァー、写真家はナン・ゴールディンです。ただ、好きな文学などいろいろな影響を無意識に受けているとは思いますが、この映画を~風に撮ろうという意識はありませんでした。

Q: 主人公の女性は監督に年齢が近いと思いますが、自伝的な要素はありますか?

監督: ええあります。この映画を撮るまでに8年かかりましたが、脚本の1番最後のバージョンを1か月半で書き上げなければいけなかったため、複雑なストーリーを作り出す時間がなく、自分にいちばん近い題材を描き、自分の領域で勝負しました。とはいえ、ニーナは私に似ているというより、結果的にいろいろな人に似ているのだと思います。この映画をイタリアの著名な脚本家、サンドロ・ペトラリアに見せたときに、「30代を描いた映画といえば食前酒を飲んで、男女がくっついたり別れたりする映画ばかりで、今まで30代の人間が何を考えているのかわからなかったが、これを見てわかった。30代の人間もいろいろな問題を抱えているんだね。」と言ってくれ、とても嬉しかったです。

Q: 映像がとても美しく、習字の先生の部屋やニーナのファッションなど舞台美術が輝いていましたが、監督のこだわりが反映されているのですか?

監督: ディテールはとても大切だと思っています。地球を遠くから見ると青いだけですが、近くで見るとローマやLAや東京が見えてくるわけです。映画の中でファッションははっきりと描かれていなければならないと思っていました。ニーナは夏の期間、人の家に客として滞在するわけですが、彼女の生活や普段どんなことをして過ごしているのかということは作品の中で語られず、観客は彼女のことを何も知りません。彼女の世界、もっている文化や雰囲気というものをファッションで表現することがとても重要だったのです。習字については、ニーナがイタリアを出て中国にいかなければならないという展開にした時に、習字は視覚的インパクトがあるので映画に取り入れました。

Q: これだけ画がはっきりしている映画では、編集者として監督の世界観を表現するのは難しかったですか?また気を使ったことはなんですか?

ナタリー・クリストィアーニさん:この映画の編集が難しかったか簡単だったかということはわかりませんが、感情を表現した映画なので、本質的な部分を選び出すよう心がけました。エリザのことは以前から知っていたのですが、彼女は若い監督なのにとてもオープンな人で、編集作業の際に作品をどんどん変えていくことを積極的に受け入れていました。普通は、特に初めての監督作品では、自分が思い描いたとおりの構図にしたいと主張するものだと思いますが、おかげで色々とイメージで遊ぶことができました。さまざまなシーンで場所や空間を変えたり、またこの作品で重要な役割を果たしている音楽についてもシーンによって変化をつけたり、リズムを変えたり、彼女との仕事はとても楽しかったです。

Q: ラストシーンはオープンな形になっており、エンディングについて観客に解釈する余地が残されていました。

監督: ラストシーンの折り紙の場面のためにこの映画を撮ったと言ってもいいくらい、私にとって重要なシーンでした。朝食を食べてこれでまた一人になるんだというシーンで、恐らくニーナは人と同じ普通の生活もいいものかもしれない、と思い始めているわけです。恋をしたり別れたりする普通の生活も、単純なだけではないと気づき、そんな生き方もいいかもしれないと思うようになったのです。あの場面ではそんな感情を、折り紙を使って表現してみました。

『ニーナ』
監督/脚本:エリザ・フクサス
出演: ディアーネ・フレーリ、ルカ・マリネッリ、アンドレア・ボスカ
(2012/78 分/イタリア語/イタリア)

夏休みで無人となったローマ郊外を舞台に、声楽を教えたり犬の世話のバイトをしたりして暮らす孤独な少女ニーナの見る世界。彼女の漠たる不安を象徴するかのような、広い空間をスタイリッシュに切り取る独特の映像感覚に注目。新人女性監督デビュー作。

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