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石黒賢×髙橋昌志

己の肉体、または乗り物を自在に操り、陸海空でアクションを魅せるスタントマン。常に生死を懸ける場に身を置きながら、自身が表に出ることは無い…。スタントの事故で父を亡くした星アキラと、その原因を作ったと懺悔の人生を歩む大久保豪。

菊池寛の短編小説「恩讐の彼方に」を彷彿とさせる人間模様が交錯する本格アクション映画『狼 ラストスタントマン』が、いよいよ12月23日(金)より、新宿武蔵野館他にて全国順次ロードショーとなります。

その公開に先立ち、本作に出演した石黒賢と出演の他、スタント、プロデューサーを務めた髙橋昌志のオフィシャル・インタビューをお届けいたします。隣の中学校の1学年後輩だった石黒賢と、学年先輩だった髙橋昌志は、約 40 年近い期間を経て、映画『狼 ラストスタントマン』で俳優として初共演を果たしました。石黒賢×髙橋昌志|狼 ラストスタントマン石黒賢×髙橋昌志|狼 ラストスタントマン

今回のオフィシャル・インタビューでは、二人の出会い、本作の映画化のきっかけから、撮影中のエピソード、スタント、俳優論まで幅広く、そして熱く語っております。
石黒賢×髙橋昌志|狼 ラストスタントマン

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オフィシャル・インタビュー

Q.10 代の頃からお互いを知っているとのこと。お二人の出会いを教えてください。
石黒「隣の中学の 1 学年上の先輩です。同じ学校の先輩から『バイクに乗ったらすごいヤツがいる』という話を聞いていて、個人的に名前はずっと知っていました」石黒賢 狼 ラストスタントマン
髙橋「共通の友達から賢ちゃんの話を聞いていて、テニスをやっていてすごく優しくていいヤツがいるって聞いていました。その頃はお互いに名前だけ知っている関係です」

Q.初対面はいつになるのでしょうか?
石黒「僕が 17 歳で俳優デビューして 1、2 年経った頃、18、9 歳のときに仕事の現場で『スタントで入る髙橋です』って挨拶に来てくださった時に『あのときの!』って(笑)。当時は連続ドラマでもスタントマンさんが入る現場がたくさんあって。すでにそ
の頃からこの業界で髙橋昌志を知らない人は“もぐり”と呼ばれるくらい有名でした。危険なシーンのスタントでは必ず来る人、そして決めていく人として知られていました。そこからは現場で頻繁に会うようになりました」
髙橋「最初は確か TBS の緑山のオープンスタジオだったよね? 賢ちゃんが俳優をやっているのは知っていたので、いつか現場で会えればいいなと思っていました。友達からも『なんか気が合いそう』とずっと言われていたので、すごく会ってみたくて。初対面の感想は聞いていた通りのいいヤツ。そして、優しさオーラがいっぱい出ていました」

Q.初対面でグッと近づいた感じなのでしょうか?
石黒「昌志さんはシャイだからあまり話してくれなかったけれど(笑)。でも、最初の現場はすごく鮮明に覚えています。僕の周りをオートバイでクルクル回って、鼻先に前輪のタイヤが来るというシーンがあって。スタッフさんからこの線から絶対に顔を出さないでくださいって指示されて、いざ本番。ある程度の距離は離れてやるだろうと思ったら、目の前までタイヤが来て。僕も若かったから、怖がってちょっとでも下がったらカッコ悪いって思ったし、何より画にならないのは嫌だから我慢したけれど。いやー、ビビりましたよ」
髙橋「普通は大体、体が勝手に動いちゃうし逃げちゃうけれど、賢ちゃんは言われた通りのポジションにしっかり立っていてくれて。僕を信頼してくれたのが伝わってきて、すごくうれしかったです。俳優さんには絶対怪我をさせられないですからね。何かあったら自分が怪我をしてでもかわすことを考えながらやっているので」
石黒「10 代からそれを考えてやっている、もう天職だよね」
髙橋「まあ、それはお互いにね」

Q.映画化のきっかけについて教えてください。
髙橋「2019年に弟が他界し、その4ヶ月後に愛犬ラムを亡くし、さらに数ヶ月後に母犬めじも心臓発作でと、精神的にすごく辛い時期がありました。生きる意味も見出せない状態だったけれど、弟と『いつか映画を作りたい』と話していたのを思い出したのが企画スタートのきっかけです」髙橋昌志 狼 ラストスタントマン

Q.石黒さんが企画を聞いたのはどのタイミングだったのでしょうか?
石黒「『映画を作りたいんだ』って昌志さんから電話がかかってきて。口数の多くない人が、電話でわざわざ言ってくるってことは余程のことに違いないと思いました。弟の幸司くんとは現場で会ったこともあったので、僕でよかったらとすぐに答えました」

Q.内容についてはどのように感じましたか?
石黒「ほぼ髙橋昌志のドキュメンタリーだと思いました。例えば、カフェのシーンひとつとってもそう。南翔太くん演じる星アキラの亡くなったお父さんの写真が幸司くんだったりして。こっちは幸司くんも知っているから、なんとも言えない気持ちになるわけです。それが直接的にどう作用したかを言葉にするのは難しいけれど、俳優はいろいろなものを手がかりに役を演じるので、そういう環境で芝居をすれば何かしらの影響は受けているはずだし、僕にとってはありがたかったです。(自分が準備したもの以上に)よりその気にさせてくれたように感じました」

Q.映画化するうえで、自分のことを知っている方をという気持ちはあったのでしょうか?
髙橋「ありました。芸能界に友達はたくさんいるけれど、この話を受け止めてくれるのは賢ちゃんしかいないと思っていました」
石黒「僕もすごく印象に残っています。多分、台本にはもっとセリフが書いてあったはず。でも、長年の知己でもあるので、監督と昌志さんと相談して、以心伝心じゃないけれど目で会話するだけで伝わるんじゃないかなって。削いでシンプルに行くほうが想像力を掻き立てるものだし、セリフで説明するのは最後でいい。ましてや映画だからスクリーンは大きいわけです。そういう理由もあって、目線での芝居になったシーンです。僕は初日に撮影したラストシーンもすごく印象に残っています。本人を目の前にしていうのは、ちょっと嫌なんだけれど…(笑)」
髙橋「何?」
石黒「豪が現場にやってくるだけのシーンだけど、ほんとかっこいい、敵わないなと思いました。だって、本物ですから。本物はいるだけでいいんだから(笑)。ここにあの伝説のスタントマンがいる、もうそれだけでこの映画はうまくいったなと思いました。気恥ずかしさと本人の覚悟、そして不安と自信と、いろいろあったと思うけれどなんとも言えない表情でくるんですよ。本当にいい
シーンでした」
髙橋「ありがとうございます(笑)」

Q.「今は、CG で何でもできる時代。生身のスタントマンなんて…」といったセリフがありますが、お二人が仕事をする中で「昔はこうだった」と感じることはありますか?
石黒「我々俳優は、最近は撮影で運転すらさせてもらえないからね…」
髙橋「賢ちゃんくらい昔から俳優をやっている人は、体を張っていた時代を知っているからね。本人が立っている真横をオートバイが通過するなんて、今は絶対やらないね。カメラの切り返しでうまく見せることもできるし。ただ僕が個人的に思うのは、できるところは俳優さんがやったほうが、感情を作りやすい気はしています」
石黒「安全になったことはとても良いこと。でも中には僕みたいなやりたがりもいるわけで(笑)。ギリギリのところまでは自分でやって、危険なシーンはプロに任せる。そこで生まれる信頼関係でいいものができるという相乗効果は今のやり方ではなかなか難しい。チームで作るものだけどリレーションシップの希薄は正直感じているし、寂しいとも思っています。すごく難しい判断にはなるけれど」

Q.「スタントマンは臆病な人間じゃないとなれない」とコメントもありましたが、石黒さんは俳優、髙橋さんはスタントマンに必要な要素をどう捉えていますか?
髙橋「恐怖と責任感。恐怖がなくなったら怪我をしてしまうから、恐怖は絶対持っていなくてはダメ。そして自分が怪我しても相手には絶対に怪我をさせないという責任感を大切にしています」
石黒「共感性です。悲しいから泣くわけじゃない、楽しいから笑うわけじゃない。感情の裏返しが分かると表現の幅が広がるような気がしています」

Q.「本番前に本物のスタントマンが降りてくる瞬間がある」というくだりもありましたが、お二人にもそういう経験はありますか?
髙橋「よくあります。スタントに入る前は、心臓が破裂するんじゃないかというくらい怖くてドキドキしています。でも『よーい、スタート』と言われた瞬間に、周りが真っ暗になって、もう 1 人の自分が出てきます。僕はぼーっとしているだけで、あとはすべて感覚とイメージでもう 1 人の自分がやっているから、本番のことは全く覚えていないんです。感覚でやるためにはとにかく普段の練習が大切。練習は 100%の力で、本番は 70〜80%くらいに止めるようにしています。余力がないと何か起きた時に対応できなくなるので」
石黒「僕も同じです。準備は最大限にして、演技プランも立てオプションも持って、セリフは当然全部入れて現場に入ります。でも、本番になったら全部捨てて相手役との空間に委ねる感じなので、すごく昌志さんのやり方と似ているなと思いました。演じている自分とそれを俯瞰して見ている自分の両方がいないと、良いパフォーマンスは出ない気がしています。」
髙橋「ひとつ聞いてみたいことがあって。俳優さんってテストをたくさんやったほうがいいの?」
石黒「難しいね。僕は割とすぐに本番に行きたいタイプ。でも何度もテスト、リハーサルを重ねて、徐々に気持ちをあげるタイプの人もいます。僕はテンション上げて入ってるから、テストを繰り返したり、本番まで時間が空くことで湧き上がっていたパッションもだんだん下がってしまい、調整が必要になることもよくある(笑)」
髙橋「僕も一緒。テストをすると速度に慣れちゃうからあまりしたくないんだよね。速度に慣れてしまうとスピードオーバーしやすくなって、アクシデントが起こりやすくなる。だから、しっかりトレーニングして 1 回目のテストで思いっきり飛ばして、必要な確認作業をしたら、それ以上は走らない。今の話を聞いていて賢ちゃんと僕はアプローチが似ているなって思いました。」
石黒「つきあいは長いけれど、普段こういう話はしないもんね(笑)」
髙橋「しないね(笑)」

Q.では最後に。劇中で映画『テルマ&ルイーズ』のようなスタントシーンにしたいというリクエストが飛ぶシーンがありました。お二人が印象に残っているスタントシーンが出てくる作品はありますか?
髙橋「アメリカの伝説的バイクスタントマン、イーブル・クニーブルさんのジャンプはいつか自分もやってみたいという気持ちがあります。たくさんの人が挑戦し、チャレンジして命を落とした人も 10 数人いるほどのすごいスタントマンです。彼が出演した映画『VIVA KNIEVEL!』も小さい頃から何度も観ています」
石黒「僕は『大脱走』。スティーブ・マックイーンが最後に逃げていくシーンは本当に最高で大好きです。子どもの頃に観た映画で本当に印象に残っているシーンです」
髙橋「あれ、オフロードのタイヤを使っているから、芝の上でも滑らずに走れているんだよね」
石黒「そっか。草原をカッコよく走るならそうなるんだ。タイヤなんて観てないよ。僕は『マックイーンかっこいい!』っていうのと『バイクでは逃げきれなかったか…』ってくらいだもん。やっぱり目のつけどころが違う、さすがだね(笑)

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『狼 ラストスタントマン』

12月23日(金)より、新宿武蔵野館にてロードショー

ストーリー
星アキラ(南翔太)は、早くに父を亡くして母親とアメリカへ渡ってモトクロスのプロレーサーになるが、母の死をきっかけに帰国する。
その理由は、父の事故死の原因となった元スタントマン、大久保豪(髙橋昌志)への復讐の為。
叔母の夏目瞳(池上季実子)から「殺さないと約束するなら」と居場所を聞き出し、
「俺もスタントマンになってケリをつける」と啖呵を切るが、豪は何も語らず、日本を代表する存在だった頃の面影はなかった。
アキラは元スタントマンの藤堂仁(石黒賢)の下でトレーニングを始めるが、得意だったバイクも上手く操れない。
藤堂から「事故なく早く走るのがレースだが、カースタントは派手にクラッシュを起こす。生きるか死ぬか。スリルの芸術だ」と諭されて練習を重ねていく―。
ある日、車を回転させながら空中へと飛ばして海にダイブする仕事の依頼がアキラに舞い込む。
それは、父が事故死したスタントだった…。さらに風雲急を告げる事態が巻き起こる。
映画「狼-ラストスタントマン」

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キャスト

南翔太/髙橋昌志/石田卓也/池上季実子(友情出演)/粟野如月/藤澤志帆/丸りおな/倉田昭二/安田龍生/石黒賢

スタッフ

監督・脚本:六車俊治 
プロデューサー:髙橋昌志 六車俊治 
音楽:谷地村啓
製作:「狼 ラストスタントマン」製作委員会(シールズ/六歌仙フィルムス) 
配給:武蔵野エンタテインメント株式会社
2022/カラー/日本/86分/ビスタサイズ/G
©2022「狼 ラストスタントマン」製作委員会

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