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第1回新潟国際アニメーション映画祭開催へ

2023年3月、第1回新潟国際アニメーション映画祭を開催することが決定!
国際映画祭の名にふさわしく、カンヌ国際映画祭の会場と東京、新潟の3都市を結んだ記者発表会見を下記の通り実施しました。

東京会場では本映画祭の審査委員長に就任、日本が誇る映画監督・押井守と、フェスティバル・ディレクターとして、40年近くの歴史を持つアニメ情報誌月刊「Newtype」の元編集長にして現KADOKAWA上級顧問の井上伸一郎、東京の映画祭事務局長として、大ヒット作『この世界の片隅に』、『機動警察パトレイバー』のプロデューサーであり、プロデュース会社ジェンコ代表の真木太郎が登壇。カンヌ会場では、本映画祭のプログラミング・ディレクターとして国内外のアニメーションに精通するジャーナリスト数土直志が、更に本映画祭の本拠地となる新潟の会場では『スモーク』や最近作『アネット』など数々の国際共同製作作品のプロデューサーとして知られる配給会社ユーロスペース代表にして映画祭実行委員会代表の堀越謙三、新潟の映画祭事務局代表として、映画監督のナシモトタオが本記者会見に臨みました。
『新潟国際アニメーション映画祭』

第1回 新潟国際アニメーション映画祭」記者会見

日程:5月23日(月)
場所: (東京会場)有楽町朝日ホール
登壇:審査委員長:押井守<映画監督>
フェスティバル・ディレクター:井上伸一郎<株式会社KADOKAWA上級顧問、元月刊「Newtype」編集長>
新潟国際アニメーション映画祭事務局長(東京):真木太郎<株式会社ジェンコ代表『この世界の片隅に』『機動警察パトレイバー』製作>

オンライン中継参加

<カンヌ国際映画祭会場>会場:ジャパンパビリオン(インターナショナルビレッジ 116)
プログラミング・ディレクター:数土直志(ジャーナリスト)
<新潟会場>会場:新潟古町まちみなと情報館2階多目的スペース 
新潟国際アニメーション映画祭実行委員会代表:堀越謙三<有限会社ユーロスペース代表『アネット』、『スモーク』製作>
新潟国際アニメーション映画祭事務局長(新潟):ナシモトタオ<映画監督>

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記者会見

まず、フェスティバル・ディレクターを務める井上伸一郎による本映画祭の概要と方針説明からスタート。
「長編商業アニメーションにスポットを当てた、コンペティション部門をもつアジア最大の祭典として、新潟から世界にアニメーション文化を発信」「短編は扱わず、尺は40分以上を想定」「第1回目は2023年3月17日〜22日の6日間であり、今後毎年開催していく」ことが告げられ、拠点となる開催場所は「新潟県新潟市の<新潟市民プラザ>を中心とした約1.6キロ圏内の、開志専門職大学、T-JOY万代橋、シネ・ウインドの4拠点を会場」ということが発表、本映画祭を立ち上げた理由については、現在アニメーションは「日本を代表する文化となり、アニメと呼ばれる日本の作品は世界中のどこでも観ることができる」が、しかし、将来的にアニメーション文化を維持するためには、文化価値の共有や、作品への評価、人材やスタジオが存続する基盤を作る必要があり、そのために「商業とアート、国内と海外、専門家と大衆と様々に分断され、十分な力を発揮しているとは言えない現状を打破」、本映画祭で「日本のためにアニメに限らず、アニメーションの地位や価値の向上に貢献するため、中心的な役割を担おうとしている」と語った。

そして、本映画祭では単純にアニメーション映画を上映するだけではなく「アニメやコミックの研究論文を発表していく、そういうプログラムを作っていく」ことにも言及、「未だ世界中で黒澤明や小津安二郎の映画が観られているのは、海外の日本映画研究家が海外で作品を発表しているから」であり、しかし「残念ながら日本人の研究は、海外であまり発信ができない状態となっています。日本のアニメやコミックの研究論文や書籍等を本映画祭から発信し、アニメの地位向上に繋げたいと思っています」とも述べ、最後「日本のアニメは、昨今の全世界レベルの配信網によってグローバルコンテンツとして進化しました。この進化を更に進めることが重要です。そしてよりクリエイティブな側面からの研究によって、より深く作品を理解することで産業価値を上げていきたいと考えています」とその想いを伝えた。

審査委員長を務める押井守からは「映画祭にとってコンペは、一番求心力のある大きなイベントだと思っています。これまでアニメーションのコンテストは、たくさんありましたが、例えばアヌシー(国際アニメーション映画祭)とか、有名な広島(国際アニメーションフェスティバル)などは、基本的にはアート系の作品のアニメーションのコンテストだったと思います。(本映画祭の特徴は)商業作品に特化し、エンターテイメント作品のコンペにしていることだと思います」と説明、その上で「今までそういったコンテストは確かに聞いたことが無いし、なぜ無かったか?というのはいろいろ理由があると思うのですが、一つには僕らのアニメ業界というのが、人の作品の評価をしない、という特殊な世界だったんです。それが最大の理由かなと僕は思っています。しかしそれは悪しき伝統で、今回はそういったものをぶち破る契機になればいいな、と思っている」と同時に「出品する人たちにどんなメリットを作ってあげられるのか考えなければなりません」と映画祭としての役割も提示、「『何をやっても許されるのか、許されないのか』どちらにせよ、審査委員長が決めたことだから、ということになるのかもしれない」「僕の方針としては審査委員長を引き受けた以上は、自分のポリシーで作品を選びたいと思っています。作品の規模であるとか、興行成績であるとか、作った会社の規模であるとか、監督の評判であるとか、そういったことは全部無視して本当にクリエイティブで情熱が感じられる作品を選びたいと思っています」と述べた。

更に、「アニメーションという文化は、確かに真ん中に作品がある」「周辺に様々な文化が集まってること」も魅力だと述べ、そのため、本映画祭に期待することとして「例えば、声優さんの人気だったりとか、コスプレイヤーであったりだとか、ゲームであったりとか、たくさんあるわけでそういったものが全体として盛り上がって、楽しいお祭りになればいいんじゃないかと」「業界の人間とか、日本のアニメファンが集まった楽しいイベントになれば最高だと思ってます」そして「あとは業界の人間にとっては6日間の期間があるわけです。普段なかなか観る機会の無い作品をまとめて観るチャンスだったりしますし、普段会うことがない監督同士が会ったりして、そういった交流の場になれば最高だなと思います。昼間のコンペが終わった後に、語り明かす、悪口言うとかね(笑)。意義のあるイベントになってくれればと思っています」と期待を込めた。

続いて、カンヌの会見場にいるプログラムディレクターの数土直志より、プログラムの内容及びセレクションの方針を説明。<アニメーションの楽しさをもっと多くの人に知ってもらいたい。アニメーションの新たな意味づけをしたい>との想いとともに新潟国際アニメーション映画祭がスタートすること、そして、現在のアニメーション文化の多様性の最先端である<長編アニメーション>を重視することで「ヨーロッパの巨匠たち、巨大な予算をかけるハリウッド製作のCG、“アニメ”と呼ばれる日本の2Dスタイル、さらに多くの地域から独自の文化と歴史を背負った作品」に共通の視点を与えることで、分断を超えた新しい価値づけ、そこに作品の並列化を生み出したいこと、様々な作品を手軽に観られる時代になったからこそ、映画祭を通して<アニメーションを観る体験>を提供したいことなどが語られました(※宣言全文は別途資料添付)。

最後は新潟の会場より「なぜ新潟で開催されるのか?」ということについて、本映画祭の実行委員会代表である堀越謙三より説明。「新潟では約30年の間に3000人のアニメ、マンガのクリエーターが育成されている。人材育成では日本で最も刺激があり、なおかつ大学にはアニメ・マンガ学部がある。これはアニメーションの技術者だけではなくて、プロデューサー等も含めた、アニメーション業界が必要とする人材を全て新潟で、しかも制作現場で育成できる、ということは強調しておきたい」「また新潟は、ロシア、朝鮮半島、中国に向かった日本海最大の国際貿易都市として、300年以上の歴史を持つ。それはイタリアのジェノヴァやヴェネツィアなどの地中海に向いた海洋都市、あるいはドイツのンハンブルクなど、北海に向いたハンザ都市などの自由都市と同様に、新潟は、市民が自分たちで統治してきた市民都市としての歴史がある」ことが非常に特徴的であり「批評精神、自由な想像力が培われて来た。その土壌こそ新潟が多くの著名なマンガ家やアニメーション・クリエーターを輩出してきた理由であり、この映画祭をやる理由だと言えます」と述べ、また「新潟は海外貿易ばかりでなく、映画祭のロゴに採用した北前船で北海道から京都へと最高の食材を運び、日本食の味の基本を決めた港でもあります。新潟は日本で一番お酒のおいしい所、飲んだり海の幸を食べたりしながら楽しくアニメーションを語れる場所を提供して、新潟で映画祭を開催するもう一つの理由にしたい」と語りました。

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質疑応答のダイジェスト

Q:スペインのジャーナリスト(@カンヌ)
長編映画ということで日本と西洋の国が交わっていくと思うが、アニメの中でも違うタイプがある中で、長編としてどのようなカテゴリーを作るのか。また広島国際アニメーションフェスティバルは長い歴史があり、東京アニメアワードフェスティバルもある中で、本映画祭がやること、やらないことがあれば教えてください。

A:プログラミング・ディレクター:数土直志
<広島国際アニメーションフェスティバル>と<新潟国際アニメーション映画祭>は、相当違います。広島はわりとヨーロッパの映画祭の伝統を引き継いでいるオーソドックスなものですが、新潟についてはもう少し新しく、ハリウッドやヨーロッパの作品などと同じ視点で観ることによって、「そもそもアニメーションってなんだろう?」「突出する面白さがあるのではないか?」ということを訴えることができるのではないかと思っています。

Q:東京のジャーナリスト
新潟での長編のコンペに、沢山の人に来ていただくには、全国のシネコンなどで公開される前に作品を集めてこなければいけないと思いますが、昨今は長編アニメの出来上がりが遅く、お金がかかった作品であればあるほど露出には綿密なプランが立てられています。この2つの障害を乗り換えて、どのようにフレッシュな作品を国内外から集めるのでしょうか。

A:新潟国際アニメーション映画祭事務局長(東京):真木太郎
今回はジャパンプレミアにこだわっています。したがって海外からの作品は比較的に集まりやすい。国内のアニメーション作品についてはおっしゃる通り、かなりのハードルがあると思う。少なくとも第1回で「どういったメリットがあるのか?」というのを明らかに伝えていかなければいけないと思っています。

A:審査委員長:押井守
確かにアニメ作品は公開当日まで基本的に露出しないんです。扱いがとてもシビア。漏洩することを極端に恐れている。しかし海外には、公開前の作品を一晩だけ観せるスニークプレビューという伝統があります。やらない映画はないんじゃないか?と思います。そこでアンケートをとったり市場調査をするわけです。興行側にとっては必要なことだと思います。残念ながら日本にはスニークプレビューというシステムが、ほぼない。お互いの製作会社でやっているものを交換して観せる機会にもなり、とても良いと思うが、日本にはそれがないので(本映画祭で)先駆けになってほしい。公開するわけじゃない、興行じゃない。映画祭の中で一回だけ。プレミア感もありつつ、出展する側にとっても大きなメリットが出せるのではないかと思います。

Q:フランスのジャーナリスト(@カンヌ)
吹き替えのアーティストやシナリオも含め、どういうところで大きい賞を与えるのでしょうか?

A:プログラミング・ディレクター:数土直志
コンペティションはグランプリ、そして観客賞を考えています。さらに追加するかはまだ未定ですが、アニメーションのテクニカル部門で何名か選出したいと思っています。例えば背景美術や音響や録音など。そこにひょっとしたら声優の方達も入ってくるかもしれません。

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【第1回新潟国際アニメーション映画祭】

長編商業アニメーションにスポットを当てた、長編アニメーション映画のコンペティション部門をもつアジア最大の祭典として、新潟から世界へアニメーション文化を発信していく映画祭。

英語表記:Niigata International Animation Film Festival
主催:新潟国際アニメーション映画祭実行委員会
後援:経済産業省、文化庁(後援申請予定)
企画制作:有限会社ユーロスペース+株式会社ジェンコ
特別協力:開志専門職大学/日本アニメ・マンガ専門学校
会期:2023年3月17日(金)~22日(水) 毎年開催
公式サイト(記者会見後にOPEN):
https://niaff.net

海外ビジュアル『新潟アニメーションョン映画祭』

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