![]() |
ロマン・ポランスキー監督最新作この度、巨匠ロマン・ポランスキー監督最新作19世紀のフランスで起きた歴史的冤罪事件“ドレフュス事件”を映画化した『オフィサー・アンド・スパイ』を、6月3日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他にて全国公開となります。 |
![]() |
黒沢清x松崎健夫トーク
そこから話題は本作の感想について。黒沢さんは「ある真実を貫くために、権力システムの恐ろしさとある意味執拗な“面倒くささ”が描かれている。後半、すごいなと思うのがこれだけ真実を暴くのに苦労したピカール自身がその権力システムの中に取り込まれているところ。彼は、ある場面でついに真犯人と対峙するが、その時点で、彼の目的がそこにはないのでもう無関心。さらに、その後、ある人物が目の前で襲撃され、犯人を追いかけて捕まえようとするけども、森の中に逃げたらそれ以上は追おうとしない。任務=目的に忠実。そして、最後に、そんな自身がすでに権力のシステムに絡め取られている。実は、物語の中で真実というのはとても単純なことなのに、それを証明するために、非常に面倒なことを繰り返して、なんとかたどり着いても、実は権力に埋もれて何も解決していない。」と、独自の目線で作品に隠された深いテーマを語る。 松崎さんは「真実に興味があるのであれば、ドレフュスの視点になる。でも、ピカールの視点にしているのが作品として面白いところですよね。」と話すと、黒沢さんは「ドレフュスの視点であれば、もう少し何か感情的なこととか、真実を強く訴える部分が全面に出てくると思う。でも、物語をピカールの視点で描く時点でそこに関心はない。ピカールはこの事件に義務のようにとりつかれて、押し通していく。ドレフュスに対する同情や感情的な部分は描写されないし、関心もない。それがこの映画の面白いところ。ドレフュス事件を客観的に、その特異性と、巻き込まれる人々を描いている。すごくかわいそうな犠牲者の話としては描きたくないんだなと思った。」と鋭い視点でピカールという男の読み解きポランスキーの意図を分析する。 それが意識して描いた演出なのかとズバり尋ねられると、黒沢監督は「そうしたシーンを取り入れるのは本当に難しい。何か起こるんじゃないかと、ドアに向かってずっと歩いていく間が怖いんじゃないかな。でも、編集でつないでみると、その部分は長いと思って真っ先にカットする対象になる。でも、何が起こるんだろうかと思うその間が実はとても良くて。ただ、そうしたシーンは編集でつかうのには結構勇気がいる。この映画でも冒頭をあんなに長く見せるのはすごい、そこで聴かせる足音が後半で別の意味を持って権力の象徴として聴こえてくるように、後で効いてくる」と自身の映画作りとも重ねながらコメント。 最後にこの映画について、「一見は、紙をつぎはぎしたりして、証拠を見つける古い話だけど、それをインターネットやスマホに置き換えれば全部現代になる。様々なシステムに絡め取られていて、なんでもない簡単な真実を公表することがどれだけ難しいか。一度決められた事実を覆すのがいかに難しいか。本当に現代に通じる話。」と語り、イベントを締めくくりました。 |
![]() |
『オフィサー・アンド・スパイ』原題:J’accuse 公式サイト: STORY ドレフュス事件1894年、フランス。ユダヤ系のドレフュス大尉がドイツのスパイとして終身刑に処せられる。1896年に真犯人が現れるが軍部が隠匿。これに対し小説家ゾラや知識人らが弾劾運動を展開し政治的大事件となった。1899年、ドレフュスは大統領の恩赦により釈放。1906年に無罪が確定した。2021年10月には本国で、その生涯に敬意を表するドレフュス博物館が開館。マクロン大統領も来訪し「記憶伝承の場」と世界に訴えた。 |
監督:ロマン・ポランスキー脚本:ロバート・ハリス、ロマン・ポランスキー原作:ロバート・ハリス「An Officer and a Spy」
出演:ジャン・デュジャルダン、ルイ・ガレル、エマニュエル・セニエ、グレゴリー・ガドゥボワ、メルヴィル・プポー、マチュー・アマルリック他
2019年/フランス・イタリア/仏語/131分/4K1.85ビスタ/カラー/5.1ch//日本語字幕:丸山垂穂字幕監修:内田樹
提供:アスミック・エース、ニューセレクト、ロングライド
配給:ロングライド
写真:©;GuyFerrandis-Tousdroitsréservés
作品:©;2019-LÉGENDAIRE-R.P.PRODUCTIONS-GAUMONT-FRANCE2CINÉMA-FRANCE3CINÉMA-ELISEOCINÉMA-RAICINÉMA