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『さがす』対談イベント

長編映画監督デビュー作『岬の兄妹』が国内外から高い評価を受けた片山慎三監督最新作で佐藤二朗主演の映画『さがす』が公開中です。

2月7日(月)に池袋シネマ・ロサにて片山慎三監督と𠮷田恵輔監督、映画評論家・森直人氏による対談イベントが行われました。
『さがす』対談イベント
日時:2月7日(月)
場所:池袋シネマ・ロサ
登壇:片山慎三監督、𠮷田恵輔監督、森直人

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初対面:片山慎三監督と𠮷田恵輔監督

「すごい作品なので(登壇オファーがあってから)すぐに来ました!」と挨拶した𠮷田恵輔監督は「僕はエッジの効いた作品が好きなんです。片山監督の前作『岬の兄妹』もそうですけど、かなりエッジがギリギリのラインを攻めてくるなと感じた。ただ個人的な気持ちとしては嫌な気持ちにならない。俺の作品のレビューでは“露悪的”ってよく書かれるんだけど、露悪的な感じがしない。羨ましい。テレビでは観られないようなものがこの映画にはいっぱいある」と片山監督に率直な感想を伝えた。さがす_吉田恵輔監督

それを受けてこれまで多くの𠮷田監督作を観てきたという片山監督も「𠮷田監督の作品は”逃げて”いないところが素晴らしい。」と返し、進行役の映画評論家・森直人氏も「お二人とも”逃げていない”というところは共通していますよね」と同意する。片山監督は続けて「𠮷田監督はちゃんと身体(しんたい)を撮っている。(ともすると)寄りに逃げちゃったり、表情をカットバックで撮ってしまったりするんですけど、そういうことをせずにちゃんと撮っているのが素晴らしい」と称賛した。さがす_片山慎三監督

𠮷田監督は片山監督について「僕と近いところにいるなと思うんです。どす黒さをピンク色でラッピングしているみたいな!」と言及、片山監督も「『ヒメアノ~ル』の警官を殺すシーンを観て、僕が好きな今村昌平監督の『復讐するは我にあり』を思い出しましたし、自分と好きなものが似ているんじゃないかなと思います。」とお互いにシンパシーを感じている様子。

制作のきっかけに森氏が触れると、片山監督は「『さがす』は、自分の父親が指名手配犯を見かけたという僕の実体験から着想を得ました。実体験や実在事件から発想することが多いかもしれませんね」と述懐。一方、𠮷田監督は「俺の場合は“感情”。感情を描くためには、どのような行動をさせるべきか、と考えることが多い」と明かす。両監督の違いを受け、「その差は作品に強く出ているように思います。片山監督の作品はどこか俯瞰的ですよね」と森氏はコメント。

片山監督作品と𠮷田監督作品の”共通項”に。

森氏が「『さがす』も𠮷田監督の『空白』も伊東蒼さんをキャスティングしている」と切り出すと、𠮷田監督は「『空白』と『さがす』で伊東さんが演じたキャラクターは真逆なんだけど、同じ人を選ぶっていうっていうね。伊東蒼さんがバケモノなんですよ」と本作を観て彼女の才能に改めて驚いたと明かし、片山監督も深くうなずいていた。さがす_森直人さらに片山監督が『さがす』のオーディションで伊東蒼を一目見るなり即決したと語る一方、𠮷田監督は60人ほどが参加したオーディションで、強い「何か」を感じた伊東蒼にだけ唯一2回目の演技をお願いしたのだという。「伊東蒼がその時“勝ったな”という表情を一瞬見せて、それを俺は見逃さなかったんですよ!」と続け、会場を大きく沸かせる。

また、『さがす』の特徴はその脚本の巧みさ。物語構造について森氏が触れると、片山監督は「本当は娘だけの話にしようとしたんです。ただ途中で大人の話も入れようと考え、前半と後半でそれぞれ娘と父親の話になったんです。それだけだと面白くないなと思ったので、間に殺人犯の話を織り交ぜていくことで、最終的に3編(構成)になっていった」と本作の構成が出来上がっていくまでの秘話を明かす。それに対しても𠮷田監督は「俺はそういうミックスされた感じが好き。前半と後半でテイストやジャンルすらも変わる『フロム・ダスク・ティル・ドーン』のような2部構成とか3部構成とか。」と首肯。

『さがす』の構成の妙について壇上では様々な意見が飛び交う中、#x20BB7;田監督はこれまでの片山監督の作品とは異なる本作の手触りについて言及。「今までの作品よりも世界観が広がったなっていう気がする。以前は”四畳半”のような世界で展開される物語を作っていたのが、商業映画デビューというタイミングで、より膨らませた物語を撮るということは良い嗅覚をしていると思う」と語ると、片山監督は前作『岬の兄妹』の海外映画祭での上映時にかけられたある一言が印象に残っていた、と返す。それは「日本の映画は一人称で登場人物をずっと追う、”一人称で語られる映画”が多い」というもの。「だからこそ、色々な角度から物語を観られるものやろうと思った」と予測不能な物語が展開していく本作にかけた強い想いを語る。

森氏は、片山監督と𠮷田監督のさらなる共通点についてもコメント。それは両者とも助監督(片山監督)や照明部(𠮷田監督)など、クルーとして映画制作に携わっていたキャリアがあるというもの。その中で、森氏は助監督が監督としてデビューすることの珍しさやその困難さについても言及。すると𠮷田監督は「助監督は(その人員数が)全然足りていなくて、1年先までスケジュールが押さえられているが多い。だからある意味で助監督は経済的に安定している。それだけに、次は自主映画で撮りますよ!という助監督は多いが、撮らない!」と語気を荒げた。片山監督も「助監督をやっている方が収入面は安定するんですよ。だから、そこは踏み切るしかない」と続ける。「口だけ番長の助監督がいっぱいいる中で、ほんとにね、『岬の兄妹』のようなデビュー作を作ってワンチャンスでここまでくる人がいるんです。面白いもの作るって相当大変ですからね。自主映画でデビューすることは自分の時代で言えば、当時はフィルムだったこともあって、塚本晋也監督からは「マイホームを一軒建てるようなもの」と言われていました」と、自主映画として前作『岬の兄妹』を上梓し、今回『さがす』で商業映画デビューまで漕ぎつけた片山監督の胆力に感服した様子。

森氏は両監督の作品について「どれだけひどい状況になってもまだ生きていけるということが描かれる」と分析。「最終的には生命力みたいなものを感じてもらえたら嬉しい」と片山監督。最後に𠮷田監督は「これから発表になりますが、今年1本公開作が控えているので、近々発表します!」とファン待望の新作の存在をアピールしつつ「(片山監督のことは)敵視しております!」と片山監督にエールを送ると、会場からは拍手。

最後に片山監督より、「口コミでの話題を受けて本作が2月18日(金)より19館の追加拡大上映が決定した」と報告すると、再び会場からは熱い拍手が鳴り響く。ミニシアターランキングで3週目にして興収ランキング第1位に返り咲くなど、大ヒット中の本作をめぐる今後の日本映画界を牽引する2人の監督による貴重な対談イベントは大盛況のうちに幕を閉じました。

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佐藤二朗/伊東蒼 清水尋也/森田望智 石井正太朗 松岡依都美/成嶋瞳子 品川徹
監督・脚本:片山慎三/共同脚本:小寺和久 高田亮 /音楽:髙位妃楊子 /製作:アスミック・エース、DOKUSO映画館、NK Contents 
製作協力:埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ 
制作協賛:CRG
制作プロダクション:レスパスビジョン 
制作協力:レスパスフィルム 
製作幹事・制作・配給:アスミック・エース
©2022『さがす』製作委員会 英題:Missing /映倫:PG12
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