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カール・マルクスの末娘エリノア・マルクスの激動の半生

19世紀を代表する哲学者、経済学者カール・マルクス(「資本論」)の末娘エリノア・マルクスの激動の半生を描き、2020年ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門2冠に輝いた映画『ミス・マルクス』が9月4日(土)より待望の日本公開となりました。
これを記念して行われた初日舞台挨拶がおこなわれ、イタリア・ローマからスザンナ・ニッキャレッリ監督がオンラインで登場しました。
『ミス・マルクス』スザンナ・ニッキャレッリ監督オンライン舞台挨拶
『ミス・マルクス』初日オンライン舞台挨拶
日程:9月4日(土)
会場:シアター・イメージフォーラム
ゲスト:スザンナ・ニッキャレッリ監督

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オンライン舞台挨拶にスザンナ・ニッキャレッリ監督

(※以下の内容は映画本編の内容について触れております。閲覧の際にはご注意ください。)

スザンナ・ニッキャレッリ監督からの挨拶
『こんにちは。今日は劇場までお越しいただきありがとうございます。日本で本作が公開されてとても嬉しく思っています。また、映画も気に入ってもらえたら嬉しいです。』日本では父親カール・マルクスのことはよく知られていますが、エリノアについては初めて知った人がほとんどだと思います。監督は本作の脚本も手掛けられていますが、なぜ今、彼女の物語を取り上げ、映画化しようと思ったのでしょうか。 
『ミス・マルクス』スザンナ・ニッキャレッリ監督オンライン舞台挨拶
『エリノアは、女性や子どもたち、特に工場で働く労働者の権利のために闘ってきた革命的な女性ですが、彼女の父親のような哲学者ではなく、歴史を変えるようなことをしたわけではありません。もちろん彼女は、いくつか小冊子も書き残し、文学作品の翻訳など手掛けましたが、19世紀の終わり頃には、そうやって、労働者のため、権利のために闘い、行動した人々がたくさんいたのです。その一人であった彼女について非常に興味がありました。しかし、彼女が最終的に、愛のため、ある男性のために、自ら命を絶ったという事実を知り、このような女性が、こうした矛盾を抱えていたということ、人間は矛盾を抱えているということを見せるのはとても興味深いのではないかと思い、彼女を描きたいと思ったんです。』

映画情報どっとこむ ralph 19世紀が舞台にもかかわらず、パンクロックの音楽を使用しているのが印象的で、作品に新しい視点をもたらしていると思います。現在もアメリカで活躍するパンクロックバンド、ダウンタウンボーイズ(Downtown Boys)を使用するというアイデアはいつ生まれたのでしょうか?

『私が脚本を書く時には、音楽を切り離すことができません。もっと言えば音楽が聞こえているような感じがします。本作の場合、特に音楽が、キャラクターの一つであったり、物語そのものを語ったりするものだと思い書いていました。今回、エリノアがどういう人間か考えた時、革新的なところがあるにも関わらず、暗い側面や、ある意味で破壊的な部分、絶望的な部分があると思い、そしてパンク音楽も、そういう意味で、革命的でありながら、暗い面や破壊的な面、絶望的な面も持っていると思ったので選びました。気が付かれたと思いますが、最後の歌声はダウンタウンボーイズの女性ボーカルの声なんです。とても力強く、エネルギッシュで、まさにエリノアが現代的なメッセージを持っていた女性だということを、あの声で伝えてくれると思ったのでダウンタウンボーイズを選んだんです。

映画のラストに登場する子ども時代のエリノアと家族の「告白ゲーム」のシーンがとても印象的です。なぜ、成長したエリノアのシーンではなく、子ども時代の彼女のシーンで作品を終えようと思ったのでしょうか? 

『子どもとしてのエレノアを見せたかったのです。あの時代の女性たちは、もちろん男性と同等の教育を受けられなかったのですが、彼女は子ども時代から父親を通して、歴史や政治など、普通であれば当時の女性は学ぶことのできなかったことを学んできました。そうして彼女について調べる中で、子ども時代のエリノアが普通の女性以上に夢やエネルギーにあふれていたということが分かり、とても心を動かされました。最後のシーンで気が付かれた人もいたかと思いますが、彼女はこのシーンを通して、ずっと父親に視線を向けています。実際にマルクス家がこのような告白ゲームをしていたということ、彼らの答えも、ほぼあの通りに資料が残っています。例えば、「幸せとは何か?」という問いにカール・マルクスは「闘うことだ」と答えています。ではなぜこのシーンで締めくくったかというと、彼女が父親を見つめ、さらにスクリーンを通して私たちを見つめているように映画を終えたかったのです。なぜなら、闘いというのはとても複雑で、さらには女性たちが闘うということはもっと複雑なものだと思います。だからエリノアは父親を見つめて「前へ進め」と言うのです。』

告白ゲームの最後の質問を監督にもお聞きしたいと思います。監督の「好きな格言とモットーは何でしょうか?」

『最後の質問だけではなく、マルクスが告白ゲームで答えた回答と私の回答はまったく同じです。とても気に入っています。マルクスと同じく、私の好きな格言とモットーは「私にとって、人間たるゆえんのもので、相容れないものは存在しない」です。

映画情報どっとこむ ralph 最後に・・・

『映画を楽しんでいただけたようでしたら、お友達にもぜひおすすめください。本当にありがとうございました。エリノアというのは複雑な人間で、本作もある意味とても複雑な物語です。確かに彼女は悲しみや複雑な問題を抱えていましたが、彼女が私たちに与えてくれるエネルギーは、良い側面もあって、多くの様々な場面で私たちにとって得るものがあると思っています。この一年半、このコロナの状況の中で皆さんにも本当に色々なことが起こり、社会の中で闘う必要があるということを、皆さんご自身も経験されたと思います。残念ながら、世の中はまだ平等ではありません。ある意味で、非常に多くの人々が搾取され、犠牲を払ったりしています。そんな現実社会の中で、エリノアは闘うことがどれほど重要か、例え私たち人間が不完全であったとしても、闘い続けることこそが重要だ、という素晴らしいメッセージを私たちに伝えてくれると思っています。』

舞台挨拶は、スザンナ・ニッキャレッリ監督から観客へのコメントで締めくくられた。

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19世紀を代表する哲学者、経済学者カール・マルクスの末娘エリノア・マルクスの激動の半生を描いた

『ミス・マルクス』

は本日9月4日(土)よりシアター・イメージフォーラム、新宿シネマカリテほか全国劇場にて絶賛公開中!

STORY
1883年、イギリス。最愛の父カールを失ったエリノア・マルクスは劇作家、社会主義者のエドワード・エイヴリングと出会い恋に落ちるが、不実なエイヴリングへの献身的な愛は、次第に彼女の心を蝕んでいく。社会主義とフェミニズムを結びつけた草分けの一人として時代を先駆けながら、エイヴリングへの愛と政治的信念の間で引き裂かれていくエリノアの孤独な魂の叫びが、時代を越えて激しいパンクロックの響きに乗せて現代に甦る。
ミス・マルクス_新ビジュアル

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監督・脚本:スザンナ・ニッキャレッリ
出演:ロモーラ・ガライ、パトリック・ケネディ、ジョン・ゴードン・シンクレア、フェリシティ・モンタギュー、フィリップ・グレーニング

2020年/イタリア=ベルギー/英語・ドイツ語/107分/カラー/ビスタ/5.1ch
字幕:大西公子 

後援:イタリア大使館、イタリア文化会館、ベルギー大使館 配給:ミモザフィルムズ 
©2020 Vivo film/Tarantula  
Photo by Emanuela Scarpa

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