活弁シネマ倶楽部で『漁港の肉子ちゃん』特集!明石家さんまが企画・プロデュースを務め、西加奈子原作の同名小説をSTUDIO4℃制作でアニメ映画化した『漁港の肉子ちゃん』。“映画を語る”配信番組「活弁シネマ倶楽部」の企画「ANIME HOUSE」では、前・後編の2回にわたり、現在大ヒット公開中の本作を特集。 |
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渡辺歩監督インタビュー《前編》のインタビューで渡辺歩監督は、まず作家・西加奈子と原作小説の印象について「女性の視点から書かれた、女性の生き様、世の中に対してつま先立ちで歩いているような姿が機敏に描かれていて、映像にする時にはどう変化させるべきかという印象があった。『漁港の肉子ちゃん』は各キャラが非常に立っていて、生きていくことを肯定していく前向きなメッセージを感じた」と話す。小説をアニメ化した本作だが、「ほかの作品とアプローチの仕方はそんなに変わらない。提示されていないビジュアルを形にしなければいけない作業も、作り上げていく面白さがあった。一番重視したのはディティールの難しさだった。ただ今作では細かいディティールを上げて場所を限定するより、原風景である“海辺の町”というイメージを作る方が良いのかなと思っていた」という。 そうして描かれた美術へのこだわりは並々ならぬものがあったようで、徐が「懐かしさと良い意味での汚れ、そして原風景」という言葉で本作を表現すると、「もしかするとどこにもないかも知れないけれど、それは転じるとどこかにあって欲しいということにもなる。映画全体を通して、現実を描いているようで理想を描いている」と振り返る。そのこだわりはもちろん演出にも通じるもので、徐が『男はつらいよ』の寅さんを彷彿させると話題を振ると、渡辺監督は同意しながら「ちょっとめちゃくちゃだけど言っていることは筋が通っている存在。そういったものを許容することが社会全体にとっての幸福で、それと人が幸福を感じる瞬間はどういうことなのかということと合わせていった。小説の本当のテーマを聞いたわけではないけれど、多くの人がそう感じる作品だと思う」と語っている。 そして今回公開される《後編》では、まずSYOが「めちゃくちゃ泣いた」と切り出すと、徐も「昔の松竹喜劇映画のよう。オーソドックスで童話的な世界の中に、日本の原風景を追求するところもあって、非常に満足の一本」と大きくうなずく。「実写的に見えるけれどアニメにしか表現できないことを追求している」とSYOが続けると、話題は作品の舞台である漁港の町の描き方へ。徐が「実在の場所を舞台にしていなくて、日本のどこにでもこういった町があることを象徴している。リアルな風景をアニメ化する潮流の中で、今回はあえてそうせず、観客に想像させるところがすごく良い」と語ると、「僕らの中にある日本の原風景のイメージを具現化しているところが面白い。何もないけれど色々なものがあるというユートピア感を出している」とSYO。《前編》で渡辺監督が語ったディティールの描き方の狙いは、二人も賞賛する部分のようだ。 さらに本作でとりわけ印象的なのが“食べるシーン”だ。「生きることに必要なものをちゃんと描いている。伏線にもなっているフレンチトーストとか、あんなに美味しそうに描けるんだというのもすごい」とSYOが興奮気味に話すと、徐も「メッセージ性の強い食べ物として肉まんが出てくる。この使い方は衝撃的だった」と続ける。「原点に戻りつつ今風のアニメ表現で、ドラマ的な脚本の盛り上がりと演出の盛り上がりが有機的に絡んでいる」と本作を絶賛する二人のトークは、さらに劇中の音楽やキャラクター・デザインといった細部にも話題が及んでいる。 前編・後編とそれぞれ別の角度からひとつの作品を語る今回の特集で、幾度となく出てくるのが「日本の原風景」や「食べること」「多幸感」と言った言葉。これらをキーワードに紐解いていくことで、『漁港の肉子ちゃん』に込められた背景やメッセージを一層深掘りできる必見の収録回となっている。 |
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■活弁シネマ倶楽部■『漁港の肉子ちゃん』特集・前編:渡辺歩監督が“肉子”の魅力を語り尽くす ※配信済み |
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『漁港の肉子ちゃん』あらすじ 企画・プロデュース:明石家さんま |