映画情報どっとこむ ralph 『EUREKA ユリイカ』などで世界的に知られる青山真治監督の7年ぶりの長編映画『空に住む』が、多部未華子を主演に迎え、ただいま大ヒット公開中です。

両親の急死という出来事を受け止めきれないまま、大都会を見下ろすタワーマンションの高層階で愛猫と暮らし始めることになる主人公を軸に、現実の中で葛藤しながらそれでも未来へ向かって歩き出す現代女性の姿を描いた本作。主演の多部未華子のほか、岸井ゆきの、美村里江らにより、葛藤や空虚感をうちに秘めながらも前へ進もうとする現代日本の女性たちにエールを送る物語となりました。

また、青山監督の古くからの盟友であり、第77回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した黒沢清監督の『スパイの妻』が本作の1週前に公開となっており、映画ファンにとっては見逃せない作品が立て続けに公開される<映画の秋>となっています。そんな2人の作品が同時期に同じ劇場で公開されるのは初とのことで、この度トークイベントが開催されました。

映画『空に住む』公開記念トークイベント
日時:11月9日(月)
場所:新宿ピカデリー
登壇:青山真治監督、黒沢清(映画『スパイの妻』監督)

映画情報どっとこむ ralph 2人の名監督の姿を見たいと本日新宿ピカデリーに集まった熱狂的なファンからの声援を受け登場したのは、『空に住む』の青山真治監督と『スパイの妻』の黒沢清監督。互いに照れた様子で観客からの熱視線に応えるとまずは黒沢監督からご挨拶。「今日はこんなにたくさんの方にご来場いただきまして、とてもうれしいです。僕もみなさんと同様に先ほど映画を観たばかりなので、思いついたままの感想を述べるかもしれません」と会場の笑いを誘い、青山監督は「『スパイの妻』が大ヒット上映中の黒沢監督と一緒にトークイベントができて非常に光栄です」と恐縮しつつ挨拶した。

まず本作を観た感想を聞かれた黒沢監督は宣伝になるかどうかわかりませんけどと前置きしつつ「本当に傑作だと思いましたよ。直実の鬼気迫る表情がとても怖かった。『ローズマリーの赤ちゃん』を思い出しました。直実はラストシーンだけ表情が明るくなるのですが、それまでは終始暗く髪の毛もバサッと顔にかかっていて表情が見えない。またタワーマンションでステキな生活をしているように見えますが、実際よく見ると位牌が飾ってあったり、いつ登場するかわからない不気味な叔父さん夫婦がいたりと。常に死と隣り合わせの狂気を感じました。特に猫が怖いですよね。普通猫って可愛く撮ると思うのですが、この猫がいつ登場するか見当がつかない」と独自の目線で本作を評論。黒沢監督ならではの鋭い独特な感想に思わず青山監督は「そんな見方をするのは黒沢さんだけですよ」と照れながらもすかさずツッコみ。続けて「僕もタワマンでの人間関係は『ローズマリーの赤ちゃん』を思い出しましたけども」と共感を見せた。

また結婚式の帰り道、直実が家族と歩く作家の吉田を遠くから見つめるシーンについて黒沢監督から「あの吉田の後ろを歩くのは愛子の生霊?愛子にしては小さい気がするし、直実が見た幻影なのかと思った」と質問。すると青山監督は「あれは吉田の子供です。だから幻影とかではないです(笑)」ときっぱり。「ただ直実がなぜ彼女(吉田の子供)のことをしばらく見つめていたのかという疑問はありますけど」と返答に含みを持たせた。

話は変わって『スパイの妻』に出演していた高橋一生さんと蒼井優の声を黒沢監督が絶賛していたという話になり、【役者の声】について議論する2人。黒沢監督は「演じる上で声って重要だと思います。俳優さんのもって生まれたものだから、独特の声の方はあの人が話しているってわかることは映画を作るうえで非常に重要です。多部さんの声もまろやかでいい声ですよね。あと髙橋洋さんもいい声ですよね」と話すと、青山監督は「高橋一生さんも蒼井優さんも目を瞑って聞いても、お2人だと分かる声の持ち主。柏木役の髙橋洋はいまなんて言った?と聞き返したくなる独特の声なのですけどね(笑)でも印象に残りますよね」とそれぞれの役者の声を褒めた。

さらに話は直実の苗字“小早川”について。地方によって読み方が違うというこの苗字は、岩下尚史演じる出版社社長の野村は岩下が関西出身ということもあり関西圏の呼び方“こはやがわ”さんと直実を呼び、髙橋洋演じる編集長の柏木は“こばやかわ”さんと直実を呼ぶと紹介。これは青山監督が助監督時代に、小津安二郎の『小早川家の秋』という映画のタイトルは“こばやかわ”と読むのに対し、劇中では関西圏の読み方で“こはやがわ”と呼ばれているねじれ現象が起こっている映画があると黒沢監督に教えられたことが印象に残っていたからだと明かした。

最後に黒沢監督は「青山のことは昔から知っているので雑談ぽくなってしまいましたが、この映画は物語だけみるとホンワカした映画に見えると思いますが、かなりショッキングな相当きわどいゾクゾクする映画だと思います。是非この映画のすごさを周りの人に勧めてください」と独特なコメントを残し、青山監督は負けじと「『スパイの妻』大ヒット公開中と紹介しましたが、黒沢さんの映画で3週連続ベストテン入りしこんなにも長くランキングにいたことのある映画は、今回の『スパイの妻』が初めてだと思います。これは弟子としてはかなり嬉しいことです。このままさらに大ヒットするといいなと思います」と最終的には互いの作品をお勧めしあい、和やかなムードの中イベントは終了した。映画『空に住む』は絶賛公開中。

映画情報どっとこむ ralph 映画『空に住む』

公式サイト:
soranisumu.jp

STORY
郊外の小さな出版社に勤める直実は、両親の急死を受け止めきれないまま、叔父夫婦の計らいで大都会を見下ろすタワーマンションの高層階に住むことになった。長年の相棒・黒猫ハルとの暮らし、ワケアリ妊婦の後輩をはじめ気心のしれた仲間に囲まれた職場、それでも喪失感を抱え、浮遊するように生きる直実の前に現れたのは、同じマンションに住むスター俳優・時戸森則だった。彼との夢のような逢瀬に溺れながら、仕事、人生、そして愛の狭間で揺れ続ける直実。果たして彼女は、見失ってしまった自分を取り戻すことができるのか?そして葛藤を乗り越えた末に下した大きな決断とは─?

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出演:多部未華子 / 岸井ゆきの  美村里江 / 岩田剛典  鶴見辰吾 / 岩下尚史  髙橋 洋 / 大森南朋  永瀬正敏  柄本 明
監督・脚本:青山真治 脚本:池田千尋 原作:小竹正人『空に住む』(講談社) 
主題歌:三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE「空に住む 〜Living in your sky〜」(rhythm zone)
プロデューサー:井上鉄大 齋藤寛朗 撮影:中島美緒 照明:松本憲人 音響:菊池信之 美術:清水剛 音楽:長嶌寛幸 装飾:石田満美 衣裳:篠塚奈美 ヘアメイク:田中マリ子 特殊造形:佐々木誠人 VFXスーパーバイザー:大萩真司 佐伯真哉 編集・グレーディング:田巻源太 助監督:七字幸久 制作担当:中村哲也 製作:HIGH BROW CINEMA 制作プロダクション:カズモ 宣伝:miracleVOiCE FINOR 配給:アスミック・エース 
©️2020 HIGH BROW CINEMA 
2020年/日本/118分/カラー/ビスタサイズ/5.1ch 
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