これまでロッテルダム、ヴァンクーバー国際映画祭などで受賞を重ねてきた池田暁監督の最新作『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』が、2021年3月にテアトル新宿ほか全国順次公開いたします。この度、東京フィルメックスにてワールドプレミアが行われ、池田暁監督と主演・前原滉による舞台挨拶&上映後のQ&Aを行いました。
いつの時代でもないある町。何十年も向こう岸の町と目的も分からず戦争をしている。 長編第2作『山守クリップ工場の辺り』(2013)がロッテルダム国際映画祭、ヴァンクーバー国際映画祭でグランプリを受賞し、続く『うろんなところ』(2017)もロッテルダム、東京、台北、エルサレムといった国際映画祭に出品されるなど、国際的な評価を積み上げてきた池田暁監督の最新作『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』。 いつの時代でもない、ある町。この町は何十年も向こう岸の太原町と目的も分からず戦争をしている。毎日、朝9時から夕方5時までが戦争の時間だ。ある日、町で兵隊として暮らす露木は向こう岸から聴こえてきた音楽に心惹かれていく。そんな中、新しい兵器と部隊がやってくるという噂が広がり、露木や町の人々の生活も変化していく… |
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独特のセリフ回しと間を用いた演出で、ユーモラスに人間を描き、国際的な評価を積み上げてきた池田監督。本作でも不条理な世界で生きていかなければならない人間をユーモラスかつシニカルに描きだした。東京フィルメックスでのワールドプレミアにいち早く駆けつけた観客に大きな拍手で迎えられ、池田暁監督は「撮影から約1年。やっとこのような形でみなさんにお披露目できて本当に嬉しい」と語り、感無量の面持ちを浮かべた。 主人公・露木を演じる前原滉は「未だに続くコロナ禍の中で、このように映画を上映できること、そして皆さんがこうして劇場に足を運んでくださることがすごく嬉しくて。映画は観てもらって初めて完成するものだと思うので、その完成の場に僕も立ち会えて嬉しいです」と観客に感謝の意を述べた。 日本映画の若手映画作家を支援してきた「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」の一環である「長編映画の実地研修」。数多くの応募の中から池田監督の企画が選ばれ、本作の製作に至った。企画の発想を問われると「毎朝、家の窓から見る一本の線のような川。ふと、川の向こう岸を想像することがあって。一本の線はまるで国境のようにも見えますよね。いまの日本は平和だけど、世界には韓国や北朝鮮のような国もあって。他人事のように思えてしまうときもあるけど、その外側を想像することや知ることは必要なのではないかと思ったんです」と語った。 とある町の軍楽隊に所属する主人公を演じた前原。「僕は3ヶ月間練習を重ね、トランペット担当を楽隊員を演じました。1日中トランペットを吹くので、1日の終わりには唇の厚さが変わっていたそうで(笑)。トランペットが嫌いになりかけたんですが、最終的には楽しく吹くことができていい経験になりました」と撮影中の苦労話を語った。 前原演じる露木の同僚たちを今野浩喜、中島広稀、清水尚弥が演じ、更には橋本マナミ、竹中直人、矢部太郎、片桐はいり、嶋田久作、きたろう、石橋蓮司といった豪華な面々が池田ワールドを彩っているが、キャスティングは「演技というよりも個性的な外見の特徴がある俳優を軸に選んでいる」という。 いつの時代でもないある町を舞台にした本作。その設定について、池田監督は「現代ではない時代で、日本でもない架空の街を舞台に本作を描きたいと思っていました。なので、実は登場人物の衣装は、米軍の衣装や自衛隊の衣装を改造したものが使われています。一貫はしてるけど、あえてごちゃ混ぜにしたいと思ったんです」と語った。 池田監督は改めて、ワールドプレミアに駆けつけた観客に感謝の意を述べ、「観客として通っていた東京フィルメックスで本作を上映することができて、さらにこれが出発点になるのが本当に嬉しい。この上映をきっかけに多くの人にこの映画が広まっていけばいいなと思っています」と語り、Q&Aを締めくくった。 |
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『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』
2021年3月、テアトル新宿ほか全国順次ロードショー! |
監督・脚本・編集・絵 : 池田暁
出演 : 前原滉 / 今野浩喜 中島広稀 清水尚弥
橋本マナミ 矢部太郎 片桐はいり 嶋田久作 きたろう / 竹中直人 石橋蓮司
2020 年/日本/カラー/105 分/ビスタ
企画・製作:映像産業振興機構(VIPO)
制作協力:東映東京撮影所
©2020「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」フィルムプロジェクト(VIPO、カルチュア・エンタテインメント、ビターズ・エンド)
配給:ビターズ・エンド