映画情報どっとこむ ralph 公開が延期されていた『許された子どもたち』が、公開となった。その監督である内藤瑛亮監督が、“映画を語る”配信番組「活弁シネマ倶楽部」に登場。収録はリモートで実施され、MCを務める映画評論家・森直人を前に、本作が制作されるに至った経緯や、撮影の裏話など、多くを語っている。

映画情報どっとこむ ralph この『許された子どもたち』は、実際に起きた複数の少年事件に着想を得たオリジナル作品。『先生を流産させる会』(2012)、『ミスミソウ』(2018)など、そのセンセーショナルな内容により、作品が発表されるたび物議を醸す内藤監督が、8年もの歳月をかけて構想し、自主映画として完成させたもの。本作の制作にあたり、10代の出演者を対象にワークショップを開催。“少年犯罪”や“贖罪”というものについて、共に考えを巡らせたという。いじめや少年事件という社会問題を通じて、現代に蔓延する生きづらさを鋭く切り取った本作は、観る者の価値観や倫理観を激しく揺さぶるものとなっている。

『先生を流産させる会』が公開された2012年以来の対談となった、森と内藤監督。
森はまず今作を、「これまでの内藤監督作品のエッセンスが、すべて詰め込まれている映画」と評している。さらに「個人的に、『これを待っていました』という思いです」と続ける。本作の構想にかけられた時間は8年。『先生を流産させる会』の評価を受けた当時の内藤監督は、「いろいろなプロデューサーの方から声をかけていただけるようになり、希望としては『許された子どもたち』を最初の商業作品としてやりたい思いがあった」と明かす。しかしその後に内藤監督は、『パズル』(2014)、『ドロメ 男子篇・女子篇』(2016)などの商業作品を手がけてきた。そんな過程を経て誕生した今作に対して森は、「内藤瑛亮監督の、初期集大成的な面持ちの作品」だとも評する。内藤監督は、他の作品と並行して本作の脚本について考えていたものとあって、過去作品とリンクする要素も多いのだ。

本作の最初の着想として、1993年に起きた“山形マット死事件”を題材に映画を撮ろうとしていたという内藤監督。監督自身、事件当時は小学校高学年で、これまでずっと心に引っかかっていたのだという。「自分と同世代の人間が被害者になり、加害者になっている。なおかつ、その罪を彼らは受け止めることをしなかったことがショックでした。僕自身、体格に恵まれていた方ではないので、プロレス技をかけられることなどあり、いじめに発展するのではないかという恐怖感がある一方、明確にいじめられている子も近くにいました。でもそれに関して傍観者でしたし、そのいじめを止めさせない自分を正当化しているフシもあり、それに対して罪悪感も抱いていました。なので、作品を作る上では被害者側に寄りがちなのですが、“加害者であり得る”という意識で描いています」と、自身の体験と本作の重なりも語っている。内藤監督は親戚に学校関係者が多く、自身も『先生を流産させる会』制作時には特別支援学校に勤めていた。これに森は、「内藤監督にとって“学校空間”というものが、つねに身近なものなわけですよね。大人になってもつきまとうもの。宿命的ともいえる」と述べている。
本作において事件が起こるのは河川敷だ。これに森は「河川敷とは子どもたちにとって、秘密の遊び場みたいなところがある」と指摘をし、「例えば『スタンド・バイ・ミー』(1986)的な思春期の物語だと、ああいう場が聖域ともなり得る。しかし今作の場合、遊びの延長線上に決定的な悲劇が起こる。これは現実を踏まえたリアリスティックな設定でありながら、同時に“現実でり寓話である”という印象を受けた」と続ける。これに内藤監督は、「“遊びの延長である”、というのが重要です。彼らとしては遊びのつもりだったのに、それが悲劇を招いてしまうんです」と答えている。
商業映画を多く経て、内藤監督自身、久しぶりの自主映画となった本作。暗い印象の作品ではあるが、学生時代の仲間たちの協力もあり、現場は楽しいものであったらしい。演じ手である子どもたちにカメラを持たせたり、演出への彼らの意見を採用することもあったようだ。そのほか今回のトークでは、『ドラえもん』における子どもたちの関係性の構図が思春期の美しさであるのと同時に闇黒な面へと転じる可能性や、内藤監督作品と真利子哲也監督作品の類似点、時代の流れとともに変わっていく思考、さらには、現在の映画界の現状にも話題は及んでいる。

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『許された子どもたち』

6月1日(月)ユーロスペース他にて全国順次公開
(※コロナの影響で5月9日公開より変更となりました。)

http://www.yurusaretakodomotachi.com/

あらすじ
とある地方都市。中学一年生で不良少年グループのリーダー・市川絆星(いちかわきら)は、同級生の倉持樹(くらもちいつき)を日常的にいじめていた。 いじめはエスカレートしていき、絆星は樹を殺してしまう。警察に犯行を自供する絆星だったが、息子の無罪を信じる母親の真理の説得によって否認に転じる。そして少年審判は無罪に相当する「不処分」を決定する。絆星は自由を得るが、決定に対し世間から激しいバッシングが巻き起こる。そんな中、樹の家族は民事訴訟により、絆星ら不良少年グループの罪を問うことを決意する。果たして、罪を犯したにも関わらず許されてしまった子どもはその罪をどう受け止め、生きていくのか。大人は罪を許された子どもと、どう向き合うのか。
信じることが愛なのか、守ることが罪なのか。
倫理観が試されるーー。

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出演:上村侑 黒岩よし 名倉雪乃 / 地曵 豪 門田麻衣子 三原哲郎 相馬絵美
監督:内藤瑛亮
脚本:内藤瑛亮 山形哲生
制作協力:レスパスフィルム 
製作:内藤組 
2020年/日本/カラー/1.90:1/5.1ch/131分
配給: SPACE SHOWER FILMS
©2020「許された子どもたち」製作委員会 (PG12)
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