6月30日(土)映画『正しい日 間違えた日』は、世界的名匠ホン・サンスが、公私共にパートナーの女優、キム・ミニと初めてタッグを組んだ記念碑的作品『正しい日 間違えた日』は、運命的に出逢った男女が、あるタイミングの違いによってまったく違うラストにたどり着くまでを二部構成で描いた新感覚ラブコメディ。
漫画家・コラムニスト辛酸なめ子さんと映画ライターよしひろまさみちさんが、あの日あの時あの場所で、もし・・・?誰もが覚えのあるタラレバと、運命の分かれ道について語りました。 日時: 6月30日(土) |
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大きな拍手で迎えられた辛酸なめ子さんとよしひろまさみちさん。
まずよしひろさんに、この映画の感想を求められ 辛酸さん:美女を落とすには、こうしたらいいんだよという、一言でいうと“恋愛テクニックを教えてくれる映画” と解説。 実は本作、同じ登場人物で同じ物語が【第一部】と【第二部】として2度繰り返されるユニークな設定。登場人物たちは「こうしていたら」の選択やタイミングの違いで、異なる2つの結末にたどりつく。まさに恋愛テクニックが試される、恋愛ロールプレイングゲームのような映画だ。一方で よしひろさん:同じ話がまた始まったから、うちのDVDデッキが壊れたのかと思った! と会場の笑いを誘いました。 また辛酸さんは、キム・ミニ演じるヒロインについて 辛酸さん:女性には嫌われるタイプだけど、モテる女というのはこういうものというのが良くわかる。いつも口が半開きです。 と辛酸節炸裂!!これに対し、 よしひろさん:今日驚いたのは男性客の多さ!やはりキム・ミニ目当てなのかしら~ と会場を物色。この主演女優キム・ミニといえば、ホン・サンス監督とこれまでに5作品でタッグを組み、プライベートでも恋人同士であることを公言して一大スキャンダルとなったこともあり、監督は現在離婚訴訟の真っ只中。 よしひろさん:ホン・サンスはこれまでもわりと下がゆるい人だったけど、今度ばかりは本気っぽい。さすがにこれだけ何作品も一緒に撮られたら、奥さんからしたら旦那を奪われている!と思いますよね。キム・ミニは大ヒット作『お嬢さん』の演技をみていると本当にすごい女優さんだと思うけど、特にホン・サンス監督の映画の中ではカメレオンのようで、なんでもやっちゃう。そりゃあ、落ちちゃうよね。 と、熱愛に至った経緯を考察。 辛酸さん:自分色に染まってくれるということですものね。 と続けた。 |
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脚本を用意しないことでも有名なホン・サンス監督。そのスタイルについて
よしひろさん:是枝監督の子役の扱いのようなもの。 と、今最も注目を集める『万引き家族』を引き合いに出して解説すると、映画ファンの集まる会場は興味津々に。 よしひろさん:以前ホン・サンス映画に出演した加瀬亮さんが、現場がこれ以上ないくらいに楽しいと言っていたの、ホン・サンスのスタイルは役者としたら楽しいのでしょうね。自由に演じさせてくれて、良いところで止めてくれる。演じるのが好きな役者にしてみたら最高の現場ですよね。 と解説。 辛酸さん:そんなに楽しい現場だから、イザベル・ユペールみたいな大女優もホン・サンス映画に出たがるのですね。 この後に公開を控えるホン・サンス監督×キム・ミニ作品『クレアのカメラ』には、『エル ELLE』でアカデミー賞ほか世界の映画賞を席巻し、フランスの至宝と呼ばれる大女優イザベル・ユペールが出演している。この『クレアのカメラ』は、ホン・サンス、キム・ミニ、ユペールがそれぞれ別の作品でカンヌに来ていて、その滞在中に撮影された。そんな撮影背景について、 よしひろさん:カンヌ映画祭期間中に映画撮っちゃうなんてありえない!今年は是枝監督で注目を集めたカンヌ映画祭は、数ある映画祭の中でも最も世界中からたくさんの映画関係者、お偉いさんが集まる映画祭。小さな街で開催されているし、そんなところでゲリラ撮影なんかしたら、誰が映り込んじゃうかわからないわけです。そんな危険なことでも、ホン・サンスは「まいっか」って撮っちゃう(笑)。 それを聞いて 辛酸さん:それこそお偉い映画関係者と愛人が映り込んでる、なんてこともありそうですよね。 とあるあるネタを続け・・・映画関係者とその愛人…『クレアのカメラ』は、そういうお話。 |
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そして、『正しい日 間違えた日』に話は戻り、
よしひろさんは辛酸さんに自身のタラレバについて尋ねると、 辛酸さん:この映画を観て、自分の人生のタラレバを考えたんですが、恋愛のタラレバは全く思いつかず、思い出されたのは『あの時なんで銀行の外貨預金に契約しちゃったんだろう』ってことでした。 と会場を笑かします。一方 よしひろさん:自分の恋愛のタラレバではなく、『ラブ・アクチュアリー』という恋愛映画を思い出してしまいました。恋って結局タイミングでしかなく、タイミングさえ合ってしまえばタイプじゃなくても好きになって、結果その人が運命の人となってしまう。逆に、運命の人でもタイミングを逸してしまうと結ばれることはないですよね。 と映画ライターならではの視点で語った。これに辛酸さんは頷きながら 辛酸さん:あとは自分の体調も影響しますよね。体調が良いと相手が素敵に見えて、体調が悪いと相手が気持ち悪く見えることもあります。 と続けると、 よしひろさん:その通りですね。この映画の中でも、第一部、第二部それぞれ同じ設定でお酒を飲むシーンがあるんですが、酔っぱらい方が全然違う。是非そこに注目してください!。 と、映画の見所を語った。 |
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主人公が映画監督であることの多いホン・サンス作品。
よしひろさん:登場人物に監督自身を投影するウディ・アレン方式。ホン・サンス映画には脚本がなく、いつも3行くらいのプロットだけを見せて出資を募るそうなのですが、それではなかなか集まらない。なのでどこかで腹をくくってある種自主映画的に撮っているからなんとか作れているんです。 とホン・サンス映画の製作裏話を披露。これを聞いて 辛酸さん:でも本人が投影されている監督がすごく褒められるじゃないですか。有名というだけでは言い足りないですね…みたいなことを言われたりして。それってどういうことですか? と疑問を投げると、 よしひろさん:自己顕示欲ですよ~。これまで数々のイケメン俳優と付き合ってきたキム・ミニが、なんでホン・サンスと?と思うんですが、俳優を立てて立てて、俳優の才能に頼って頼ってという監督なので、キム・ミニに『私がいないきゃ!』って思わせたんでしょうね。 とも語った。 辛酸さん:キム・ミニは、ホン・サンスのミューズとして生きたいと思ったんでしょうね…。 とホン・サンスとキム・ミニの運命の出逢いに感慨深い表情を浮かべていた。 最後に・・・ よしひろさん:『正しい日 間違えた日』を観ると、ホン・サンスとキム・ミニがどう惹かれ合っていったかが良く分かります。キム・ミニがすごく可愛く撮れているんです。それから、これまでのホン・サンス作品には起承転結がなく、オチもあまりないというものが多かったのですが、『正しい日 間違えた日』はしっかり物語になっているんです。これまでのホン・サンスっぽくない。それもキム・ミニがいかに特別かを物語ってますよね。 辛酸さん:この映画、雪が降っているシーンが出てくるんですけど、今日はとても暑いので、映画で体感を冷やしてください。 と、トークイベントは終了したのでした。 『正しい日 間違えた日』 運命的に出逢った男女が、「タイミング」の違いによってたどりつく、2つのラスト。
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監督・脚本:ホン・サンス
出演:チョン・ジェヨン、キム・ミニ、コ・アソン、チェ・ファジョン、ソ・ヨンファ、ユン・ヨジョン
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2015年/韓国/121分/ビスタ/5.1ch/カラー/