前作『人生はビギナーズ』が世界中で称賛されたマイク・ミルズ監督が、アカデミー賞オリジナル脚本賞にノミネートされた最新作『20センチュリー・ウーマン』を携え来日。
3月28日(火)にApple 銀座(東京・銀座)で行われたApple Store「Meet the Filmmaker: マイク・ミルズ」に、プライベートでも親交のある現代美術作家で、COSMIC WONDERを主宰する前田征紀さんと共にトークを繰り広げました。 日付:3月28日(火) |
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前作『人生はビギナーズ』はゲイであることをカミングアウトした自身の父をモデルにしたが、本作の型破りなシングルマザーのドロシア(アネット・ベニング)のモデルは自身の母親。ここで描かれる物語について ミルズ監督:僕の人生の物語です。 と明かし、自らのパーソナルな部分を描き続ける点について ミルズ監督:決して最初からそういうものを作ろうと思っていたわけじゃなかった。 と、語ります。 映画の中には姉、そして監督自身がモデルの登場人物もおり、当然、作品作りにおいて、自分自身と向き合うことが必要となるが、この点について ミルズ監督:脚本の執筆の段階が一番大変かな。自問自答し、自分に疑いを向けながら延々と机に向かわないといけないんだ(苦笑)。パーソナルな部分をパブリックなものに変えて、自分だけのものをみんなにシェアするという作業が必要になる。大切なものが遠くに行ってしまうような感覚になるんだ。でも、撮影が始まると、そこには家族のような仲間たちがいて、夢がかなうような楽しい日々で、現場では有頂天だったよ。 と振り返りました。 |
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パリで出会い、アーティストとして互いに影響を受けながら、親交を深めてきたという前田さんは、映画以前にミルズ監督のドローイングを目にしたそうで
前田さん:瞑想的な部分があり、そこに惹かれました。映画は全ての場面が美しく、その連続。まさにドローイングで見せたような瞑想的な効果が表れていると思います。 と称賛。 映画はまさに監督が思春期を過ごした1979年のカリフォルニア州のサンタバーバラを舞台に展開していますが、劇中、カーター大統領の演説シーン、登場人物たちが耳にする音楽や当時のカルチャーなど、歴史的背景が細かく描写されています。 ミルズ監督:今回、母親を中心に3人の女性を描いてますが、全員、パワフルでユニーク。特に母は、大戦中は戦闘機のパイロットになりたくて、その後も建築家を目指すなど、当時の価値観から言っても女性らしくない人間であり、そんな人物を描く上で、歴史的な背景は必須でした。 と説明する。前田さんは特に、このアネット・ベニングが演じる母親・ドロシアが心に深く残ったよう。 前田さん:興味深く、感動しました。表情が素晴らしかったです」と絶賛!ミルズ監督は自身の母をモデルにした役柄にアネット・ベニングを起用した理由について「母親は、反逆児的で『こうあるべき』という価値観に従わない女性。アネットのこれまでの作品を見ると彼女は男の子のようなところがあり、力強くファニーで、先の読めないところがすごくよかった」と説明した。 |
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改めて、なぜいま、母親を題材にした映画を? という質問には
ミルズ監督:自分でもわからないし、これまでも自分は自分のタイミングで作ってきた」と説明しつつ「トランプ大統領の時代を迎えて、その『なぜ?』を考えて今後は作っていくべきなのかもしれないです。母は、多くのものと戦いながら生きてきた女性で、どうしたら枠を飛び越えて行けるのかを考え続けて生きた人間。そんな女性を描くことは素晴らしいことだと思ったんです。 と述べました。また、もしもお母さんがこの映画を観たらどんな感想を持つと思うか?と言う質問に ミルズ監督:母は、自分の気持ちを語ろうとしない人で、何を言うのか予想ができない人でした。僕自身、そこに葛藤を感じることもあったけど、彼女はひとりの女性であると同時に、僕の母親でもあったわけで、割り切って描いてしまえばいいんだ! という気持ちでこの映画を作ることにしました。だから、彼女がこれを見て何というかは僕には予想がつかないね… と笑みを浮かべながら語っていました。 『20センチュリー・ウーマン』 は6月3日(土)丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国公開です。
物語・・・ |
監督・脚本:マイク・ミルズ『人生はビギナーズ』
出演:アネット・ベニング『キッズ・オールライト』、エル・ファニング『ネオン・デーモン』、グレタ・ガーウィグ『フランシス・ハ』、 ルーカス・ジェイド・ズマン、ビリー・クラダップ『スポットライト 世紀のスクープ』
提供:バップ、ロングライド
配給:ロングライド
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