今日の映画界で活躍するフィルムメイカーたちの新鮮な視点でヒッチコックの“映画術”をひも解くドキュメンタリー、『ヒッチコック/トリュフォー』が12月10日(土)より、新宿シネマカリテほかにて大ヒット全国順次公開中です。
このたび、大ヒットを記念して新宿シネマカリテにて、現代を代表する10人の映画監督の一人として、本編にも登場する黒沢清監督してトークイベントが行われました。 日付:12/23(金) |
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大入りの客席から拍手で迎えられ、『ダゲレオタイプの女』の黒沢清監督が登場し、トークイベントは始まりました。
出来上がった作品を観た感想を聞かれ 黒沢監督:本当に面白いと思いました。ヒッチコックとトリュフォーのインタビューを元に、ヒッチコック映画の有名なシーンを分析しているというだけでもワクワクするんですが、一方でちゃんとトリュフォーの側も描かれていて、『大人は判ってくれない』(59)のシーンが後半急に登場して、それだけで感激してしまいます。二人の関係が描かれているだけでなく、一見二人と関係の無いような現役の映画監督たちが登場して、映画全体にまで想いを馳せさせてくれる映画でした。その片隅に僕も登場することができて非常に光栄だと思っています。
黒沢監督:何か1本観ようと思った時、大分昔に観て痛く感動した記憶があったが、細部を忘れているというのもあり、これでいいかなと『汚名』(46)を選びました。 と軽い気持ちで見返したそうですが 黒沢監督:これは凄いなと。インタビューでは主に『汚名』について語ったんですが、出来上がった映画を見ると、最後を『汚名』で締めくくっていたのでビックリしました。 と、語ります。 |
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その『汚名』の魅力について、
黒沢監督:2つの鍵をめぐるショットがあって、鍵をやりとりしているシーンは天使的なショット。ただ、パーティーの席でぐわーっと鍵まで行くショットは、とても強烈で、観てはいけない物を観てしまったような胸がざわつくような悪魔的なショットなんです 続けて 黒沢監督:アメリカのジャンルがはっきりしている映画の中で、物語を語る上でこういうカットを撮っていいのかという、普通の感覚で物語を語るという時に頭に浮かぶものから大きく逸脱している。しかし、だからと言って物語が大混乱しているかといえば、そうでもなく、こんな語られ方をしてしまうと、語られた物語の外側に明らかに存在している“何か”が確実にあるように感じさせられる。 と語る。 しかしそのヒッチコック映画術について、 映画を作る立場から言うと、じゃあ誰でも真似が出来るのかというと、これが真似出来ないんです。これが映画の原理だという天使的なショットがあって、ここに映画の秘密があると思われる瞬間もあるんですが、『汚名』の鍵に寄っていく悪魔的なショットなどは、こうやればエモーションが生まれるんだと思うとこれが落とし穴で、同じことを別の映画でやると“何それ?”と言われるだけ。うっかり真似すると大変なことになる。 と締めくくった |
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『ヒッチコック/トリュフォー』 原題: HITCHCOCK/TRUFFAUT 1962年、フランソワ・トリュフォーは、敬愛する偉大な監督アルフレッド・ヒッチコックに、インタビューをさせてほしい と長い手紙を送りました。この対談によって1冊の伝説の本「Hitchcock/Truffaut」(「映画術 ヒッチコック/トリュフォー」訳:山田宏一・蓮實重彦)が生まれました。その後、世界中で出版され、 “映画の教科書”として読みつがれています。本作は、ヒッチコックとトリュフォーの貴重な音声テープと彼らを慕う、マーティン・スコセッシ、デビッド・フィンチャー、黒沢清、ウェス・アンダーソンら、今日の映画界を牽引する10人のフィルムメーカーたちのインタビューを交え、ヒッチコックの時代を超えた映画術を新鮮な視点で蘇らせるドキュメンタリー。 |
監督:ケント・ジョーンズ
脚本:ケント・ジョーンズ、セルジュ・トゥビアナ
出演:マーティン・スコセッシ、デビッド・フィンチャー、アルノー・デプレシャン、黒沢清、ウェス・アンダーソン、ジェームズ・グレイ、オリヴィエ・アサイヤス、リチャード・リンクレイター、 ピーター・ボグダノヴィッチ、ポール・シュレイダー
提供:ギャガ、ロングライド
配給:ロングライド
協力:アンスティチュ・フランセ日本/フランス大使館
2015年/アメリカ・フランス/英語、仏語、日本語/80分/ビスタ/カラー/5.1ch//日本語字幕:山田宏一
Photos by Philippe Halsman/Magnum Photos© COHEN MEDIA GROUP/ARTLINE FILMS/ARTE FRANCE 2015 ALL RIGHTS RESERVED.