映画情報どっとこむ mari 現在上映中の、直木賞受賞作家・小池真理子の半自叙伝的同名小説を矢崎仁司監督が成海璃子×池松壮亮×斎藤工で映画化した『無伴奏』が、4月28日から5月7日まで韓国の全州(チョンジュ)で開催された第17回全州国際映画祭(www.jiff.or.kr)に正式出品されました。

2000年に創設された全州国際映画祭は、韓国第2とも第3ともいわれる規模と実績を備えた映画祭で、インディペンデント映画に対するアジアの冒険心のある映画への窓口となっているそうです。

今年は、45の国から211本(長編:163本、短編:48本)の映画を、5つの劇場の計19スクリーンで上映。

映画祭パネル前矢崎仁司監督
映画祭パネル前矢崎仁司監督

全州国際映画祭「無伴奏」正式出品上映
期間:4月28日から5月7日
登壇:矢崎仁司監督

映画情報どっとこむ mari 『無伴奏』が上映されたのは、ワールドシネマの新しい美的感覚の領域を切り開いた、名高い巨匠や将来性のある監督の最新作を紹介する「WORLD CINEMASCAPE: Spectrum」部門。

映画祭のプログラマーのキム・ヨンジンさんは、

キムさん:『無伴奏』は、懐かしい人も多いであろう嵐と重圧の時代を扱っている。本作は、その時代の激しさを描く一方、ソフトなトーンでその時代をロマンチックに描いている。このアプローチは時代の特質を和らげてしまう可能性もあるが、『無伴奏』は、愛、裏切り、反抗などの個人的な感情と組み合わせることで、その政治的な時代を扱うことに成功している。本作は、美しい想い出によって難しい時代を回想するのではなく、まるで望遠鏡と顕微鏡の両方で主人公の生活を観察しているかのように、時代の浮き沈みを主人公の生活に投影している。

と評しています。

『無伴奏』映画祭オリジナルポスター
『無伴奏』映画祭オリジナルポスター
映画情報どっとこむ mari そして今回の上映に合わせ、矢崎仁司監督とプロデューサーが訪韓。

ベネチア国際映画祭受賞作の”From Afar”のLorenzo Vigas監督、サンダンス映画祭の受賞作”Morris from America”のChad Hartigan監督と主演のMarkees Christmas、第1回全州国際映画祭でデビュー作『ダイ・バッド 死ぬか、もしくは悪(ワル)になるか』が出品されて以来国民的監督になったリュ・スンワン監督などと共に、クロージングセレモニーのレッドカーペットを歩きました。

『無伴奏』は3回上映され、監督とプロデューサーが2回Q&Aを行いました。

Q:25年前の原作の映画化は難しくなかったですか?

Q&A左通訳、右矢崎仁司監督矢崎監督:この映画を“禁断の愛”だとかいう興味で誰かが撮ることを許したくなかった。僕はアブノーマルという言葉が大嫌いで、男性であろうが女性であろうが、人が人を好きになるという愛を描きたかったので、絶対僕が撮りたいと思った。

と熱い想いを語った。

MC:どうしてこの時代の映画を作ったのか?

矢崎監督:坂本龍一さんも当時同じように制服廃止闘争委員会を作ったそうですが、僕の世代は少し小さくて、憧れていました。

と答え、
Q:今の日本との共通点と違いは?
Q:家族や学校に対する反抗の映画なのか、民主化を求めている闘いの映画なのか?

という質問に、

矢崎監督:今も変わらないと思うのは、反抗心であったり、人を愛するということ。当時は、携帯やSNSがない時代なので、人と人のコミュニケーションの手段がダイレクトだったのが違う点。この映画は、学校の制服を廃止したいという身近な問題を変えようという女性が主人公です。その反抗心・闘争なら、そこは今も変わらず、今の若い人たちもわかるかなと思ったんです。僕が大学に入った時、学校の壁に書いてあったのは、政治的なことではなく、『学食の飯がまずい』ということでした。

と笑いを誘っていました。

映画情報どっとこむ mari Q:数多くの音楽の中でなぜ『パッヘルベルのカノン』を選んだのか?

矢崎監督:原作に既に『パッヘルベルのカノン』とありました。当時仙台にあったバロック喫茶「無伴奏」のオーナーに会いに行って、その当時かけていた『パッヘルベルのカノン』のレコードを貸してくださいとお願いしたら、『パッヘルベルのカノン』は、レコードがすり減ってしまう位リクエストが多かったと言っていました。僕の頭の中では、三島由紀夫と同じ日に死んだアルバート・アイラーのジャズが街の中でずっと流れていたので、ジャズを音楽の田中さんに作ってもらいました。

と話した。また、日本でも話題になっているクライマックスの祐之介(斎藤工)の微笑みの意味を聞かれ、

矢崎監督:自分の考えを信じて下さい!

と答えました。

それ以外にも、「事前情報なしで観たので、女性監督かと思っていたので年配の男性監督が出てきてびっくりしました。」「最近の日本映画は食べ物映画が多いので、まじめな映画でよかったです。」というコメントも。

『無伴奏』というタイトルの意味や、渉(池松壮亮)と勢津子(松本若菜)の関係、電話をしてきたのが勢津子だった理由、池松壮亮さんと斎藤工さんが年が離れているけれどどういう設定か、キャスティング理由、製作費はいくらだったかなどの質問が出ました。

上映では、ワールドプレミアとなったスウェーデン・ヨーテボリ国際映画祭の時と同じく、動物園のシーンで笑いが起き・・・
「無伴奏」成海璃子、池松壮亮、松本若菜@遊亀(ゆうき)公園付属動物園
韓国・全州では、響子(成海璃子)が親友のレイコ(酒井波湖)とジュリー(仁村紗和)と高校の朝礼でアジ演説をして妨害するシーンと卒業式を粉砕するシーンでも笑いが起きていました。
「無伴奏」酒井波湖、仁村紗和、成海璃子アジ演説
なお、映画『無伴奏』は、今月末にドイツ・フランクフルトで開催される第16回ニッポン・コネクションに正式出品されることも発表されています。

映画情報どっとこむ mari で、気になる現在公開中の劇場は・・・
宮城・フォーラム仙台、神奈川・横浜ニューテアトル、山梨・シアターセントラルBe館、群馬・シネマテークたかさき、大分・別府ブルーバード劇場

そして、今後の上映が発表されている劇場は、次の通り。お近くで上映の際は是非足をお運びください。
5/14 佐賀・シアター・シエマ
5/21 宮城・イオンシネマ石巻、宮城・イオンシネマ名取、広島・シネツイン、広島・福山駅前シネマモード、宮崎・宮崎キネマ館

順次公開予定 熊本・Denkikan、静岡・シネマイーラ

HP:mubanso.com
twitter:mubansou_movie

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「無伴奏」ティザービジュアル1969年。日本中で学生たちが学生運動を起こす混沌とした時代に仙台の高校に通う多感な女子高校生の響子(成海璃子)。同級生のレイコやジュリーとともに、時代に流されて制服廃止闘争委員会を結成し、学園紛争を行っていた。そんな響子が気がかりな両親は仕事の都合で東京に引っ越すが、仙台の進学校に通う響子は、仙台の叔母のもとで過ごすことになる。

レイコに連れられ、初めてクラシック音楽の流れる喫茶店「無伴奏」へ足を運ぶ響子。そこで偶然にも渉(池松壮亮)、祐之介(斎藤工)、エマ(遠藤新菜)と出会う。

「無伴奏」クラシック喫茶無伴奏内成海璃子、池松壮亮、斎藤工この喫茶店では、好きな音楽をリクエストできるのか、バッヘルベルのカノンをリクエストする渉。響子は、席が隣り合わせになったそんな渉に興味を抱く。

だが、いつしか見えない糸が絡み始め、どうすることもできない衝撃に包まれていく・・・。

キャスト:
成海璃子 池松壮亮 斎藤工 遠藤新菜
松本若菜 酒井波湖 仁村紗和
斉藤とも子 藤田朋子 光石研

監督:矢崎仁司   
原作:小池真理子『無伴奏』(新潮文庫刊、集英社文庫刊) 
製作:重村博文/川村英己/西田宣善  
プロデューサー:登山里紗/山口幸彦/楠智晴  
脚本:武田知愛/朝西真砂  
ラインプロデューサー:野村邦彦  
撮影:石井勲  照明:大坂章夫   
録音:吉田憲義 美術:井上心平   
音楽:田中拓人 編集:目見田健
衣裳:宮本茉莉/江頭三絵   
ヘアメイク:宮本真奈美   
音響効果:佐藤祥子 助監督:塩入秀吾 
制作担当:三浦義信
主題歌:「どこかへ」Drop’s(STANDING THERE, ROCKS / KING RECORDS)
配給:アークエンタテインメント
製作:「無伴奏」製作委員会(キングレコード/アークエンタテインメント/オムロ)

   

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