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スペシャルトークイベント

 
1989 年にイギリス最高の文学賞であるブッカー賞、2017 年にノーベル文学賞を受賞し、二つの世紀を代表する小説家となったカズオ・イシグロの鮮烈な長編デビュー作「遠い山なみの光」を、『ある男』(22)で第46回日本アカデミー賞最優秀作品賞含む最多8部門受賞を果たした石川慶監督が映画化した『遠い山なみの光』は9月5日(金)より全国公開中です。
 
この度、本作の大ヒットを記念して10月13日(月・祝)に映画『遠い山なみの光』スペシャルトークイベントを開催いたしました。
 
イベントには石川慶監督とBiSH解散後、小説やエッセイなど文筆業でも活躍するモモコグミカンパニーさんが登壇!映画『遠い山なみの光』を数回鑑賞し、映画公開時にも作品への深い考察と熱い想いを語っていたモモコグミカンパニー。
公開から約1ヶ月、レビューサイトやS N Sで「今年を代表する1本」「年間ベスト級の感動」「映像が美しすぎる」と絶賛の声が絶たない本作について、公開後だからこそ明かせる制作秘話や、本作に秘められた「嘘」について語りました。
遠い山なみの光
 
スペシャルトークイベント
日時:10月13日(月・祝)
会場:池袋HUMAXシネマズ シネマ4
登壇:石川慶監督、モモコグミカンパニー

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本作を数回鑑賞し、映画公開時にも作品への深い考察と熱い想いを語っていたモモコグミカンパニーは、石川監督の他作品も何作か見たそうで「寒色寄りでクールな質感で、不穏な感じが常に流れている映画が多くて、めっちゃ怖い人だったらどうしようって思っていたんですけど(笑)、お会いしたら、まだわからないですけどめちゃくちゃ柔らかい方で、とっても安心しました」と胸を撫で下ろすと、石川監督は「表向きは柔らかいけど・・・(笑)」と微笑みを浮かべ、モモコグミカンパニーは「そういう方が1番怖いですよね(笑)」と苦笑した。
遠い山なみの光
改めて、最初に本作を見た際の感想を求められたモモコグミカンパニーは「最初は原作を読まずに見たんですけど、完全に騙されたって思いました」と打ち明け、「2人の女性(悦子と佐知子)が同一人物とは思わなかったので、そこで1回衝撃を受けて、ほかの記憶が飛んじゃって(笑)、2回目は、これは1人の女性の反省と葛藤を描いたものなんだと冷静に見たら、また見方が変わりました」とコメント。
石川監督の元には悦子と佐知子に関して様々な質問が寄せられているそうで「いろんな解釈をされる方がいらっしゃるんですけど、女性と男性でも受け止め方が違う感じがしましたね」と感触を明かすと、モモコグミカンパニーは「確かに『女性はもっと目覚めなきゃ』というセリフだったり、最後の最後のセリフが刺さりました。物語のエンディングのところk、(80年代の悦子の娘の)ニキと悦子が帰り支度をしているときに、『結婚・出産以外は特に何もないじゃない』みたいなことを言っていて、自分自身もそこで葛藤しているなと思って、それ以外に大きいことって自分の人生であるんだろうかと、うまく言語化できないんですけどそこは共感しましたね」としみじみと語った。
 
これに、石川監督が「50年代の女性たちが抱えている問題も、80年代の女性たちが抱えている問題も、自分たちが今、直面しいていることと大して変わらないというか、少しずつ前進はしているけど、と海外の女性の方から感想をいただくことが多いです」と明かすと、モモコグミカンパニーは「カズオ・イシグロ作品って回想の作品が多いなと思っていて、今回の作品も過去にはいろんな自分がいて、一貫していないのが人間だよなって思いました。佐知子みたいな自分もいるし、悦子みたいな自分もいて、別人格がたくさんあるのが人間らしさだよなとすごく感じました」とコメントし、石川監督は「それすごく嬉しい感想です。ここで話している自分と、家に帰って家族といる自分って違うじゃないですか。でも今って人格は1つじゃなきゃダメだよねって感じになっているけど、いろんな自分を認めてあげられると、いろいろと生きやすくなるよねっていうことを前回の作品で扱っていて、今回も近いところがあって、最近の女性の生き方ってエンパワーメントで、子どもも大事で夢も大事で、でも現実ってうまくいかないこともあるじゃないですか。その辺をちゃんと受け入れつつというのがこの原作にあって、そういう思いで作っていたので、今の感想を嬉しかったです」と笑顔を見せた。
また、モモコグミカンパニーから「カズオさんの作品と、石川監督の作品って、見ている人に余白を委ねるところがすごく似ているなと感じて、今回、作品を作るにあたってカズオさんにオファーしたと思うんですけど、そういうシンパシーを感じたりしたんですか?」と質問された石川監督は、「ノーベル賞作家にシンパシーを感じるって恐れ多いんですけど(笑)」と恐縮しつつ、「イシグロ文学って最後に1〜10まで全部わかるってものではないじゃないですか。自分も、あとを引きずりながら映画館を出て、その後にご飯を食べたりする時間を含めて映画を完結してほしいなという思いがいつもあるので、そういう意味では共通していると言ったらおこがましいんですけど」と回答。
これを受け、モモコグミカンパニーは「久々にいい意味でわかりづらい文学的な映画を見たなって思って、衝撃を受けて後ろ髪を引かれるというよりも、もっと人間的な深い部分で自分に問いを投げかけられているような感じで。見たあともずっと考えちゃったり、2・3回目は映画館で見たんですけど、メモ帳を持参して(笑)、ここはこうなんじゃないかって書き留めながらじゃないとうまく自分の中で消化がしきれないくらい深い作品だなって感じました」と目を輝かせた。
イベントでは、観客とのQ&Aも行われ、編集をする際に苦労したことを聞かれた石川監督は「今回はいろんな国の人たちが関わっているので、ラストのバランスみたいなものも全然違って、日本ではこれくらいだろうと思ってイギリスとポーランドのプロデューサーに投げてみると、イギリスのほうはもっとはっきりとわからないとダメだって言うし、ポーランドのほうは回想のフラッシュバックは全部抜いて、もっとぼやっとしたほうがいいって言うし…」とエピソードを明かすと、モモコグミカンパニーは「へー!」と思わず声を漏らし、石川監督は「お国柄だけではなくて、今ここにいるお一人おひとりでも全然違うと思うんですよね。最終的にカズオさんに言ってみたら、カズオさんは『これはあなたの映画だから、最終的にはあなたがこれだというものを支持します』と言ってくれて、今の形になりました」と告白。
続けて、石川監督から「ちなみにモモコさんは、ラストはもうちょっと明瞭なほうがよかったですか?」と尋ねられたモモコグミカンパニーは、「私は…勝手なことは言えないんですけど、これがカズオ・イシグロ作品の小説を読んでいるときとの差があまりないなって感じました」と吐露し、「映画館を出たあとも後ろ髪を引かれてしまう感じというか、エンドロールですごく考えさせられるなという感じでした」と返答した。
また、佐知子はアメリカに行きたがっていて、実際に悦子はイギリスに行ったが、その違いに意味はあるのか質問されると、石川監督は「カズオさんの原作を読んでいたときも、悦子と佐知子が厳密なイコールで結ばれていたわけではなくて、時空を超えて重なって見える感じというか、逆に全部一緒じゃないほうがいいなって思ったところもあって、悦子が佐知子でしたってだけじゃなくて、娘のニキとかも同じような問題を抱えているし、実は女性たちの物語だとも言える気がして、その人たちが遠い山なみみたいにぼやっと重なってきて、最終的にスクリーンの前の2025年の自分たちにも重なってくるといいなと。そういう風に小説を書かれていると自分も思っていて、ギミックとして「この人がこの人でした。びっくりしました。」という話では全然なくて、自分たちに投影できるような仕掛けにするためにも、少しずつずらして、山がぼやっと重なっているような形にしたいなと思ったところで、アメリカ・イギリス、それ以外にも微妙に違う点はあったと思うんですけど、もう1回見る機会があったら、探っていただけたら嬉しいです」と意図を明かした。
遠い山なみの光
さらに、自身も小説とエッセイを出版しているモモコグミカンパニーは、自身の作品の映像化に対する考えを聞かれると「映像化ってしようと思ってできるものではないんですよね…」と遠くを見つめつつ、「あとで言おうと思ったんですけど、私、BiSHが解散の時期に『悪魔のコーラス』というサスペンスものを初めて書いたんですけど、監督の作品を拝見して是非読んで頂きたいと思って自分の本棚から見つけ出して今日持ってきたんです。さっきメイクをしているときにリュックを開けて、どんな小説だったっけって見返そうと思ったら中身が白紙だったんですね…。やっちまったなと思って。見本本でした(笑)」と明かして会場の笑いを誘い、「こんな人生です…」と肩を落としたが、石川監督は「買います」と優しく声をかけた。
 
戦後80 周年となる 2025 年の夏にスクリーンに描かれるこの物語は、終戦間もない長崎という、まだ過去にしきれない「傷跡」と、未来を夢見る圧倒的な「生」のパワーが渦巻いていた時代を生き抜いた女性たちの姿を鮮明に描き出す。先の見えない時代を生きる私たちに前へ進む勇気をくれる、感動のヒューマンミステリー『遠い山なみの光』は全国絶賛公開中です。是非劇場でお楽しみください。
 
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『遠い山なみの光』

 
大ヒット上映中
 
カンヌ国際映画祭、上海国際映画祭に続き、トロント国際映画祭への出品も決定し、海外でも益々評価を高める本作が満を持して日本で公開となりました。
メインキャストの広瀬すず・二階堂ふみ・吉田羊と石川慶監督が登壇!
花束ゲストとして、広瀬&二階堂もその演技を絶賛の子役・鈴木碧桜(みお)が登場!
 
イベントには、1950年代 長崎時代の悦子を演じた広瀬すず、悦子が長崎で出会った不思議な女性 佐知子役を演じた二階堂ふみ、1980年代のイギリスで暮らす悦子を演じた吉田羊、石川慶監督が登壇します。5月のカンヌ国際映画祭への出品に引き続き、6月の上海国際映画祭、9月にはトロント国際映画祭への出品も決定した本作。海外からの評価も益々高まる中、イベントでは映画の撮影秘話を語るほか、一緒のシーンが多かった広瀬、二階堂が口を揃えて「お芝居が素晴らしかった」と称える佐知子の娘 万里子役を演じた子役の鈴木碧桜(みお)がお祝いに駆けつけ、広瀬、二階堂、吉田、石川監督に花束を贈りました。
 
戦後80 周年となる 2025 年の夏にスクリーンに描かれるこの物語は、終戦間もない長崎という、まだ過去にしきれない「傷跡」と、未来を夢見る圧倒的な「生」のパワーが渦巻いていた時代を生き抜いた女性たちの姿を鮮明に描き出す。先の見えない時代を生きる私たちに前へ進む勇気をくれる、感動のヒューマンミステリー。
 
物語・・・
日本人の母とイギリス人の父を持ち、大学を中退して作家を目指すニキ。彼女は、戦後長崎から渡英してきた母悦子の半生を作品にしたいと考える。娘に乞われ、口を閉ざしてきた過去の記憶を語り始める悦子。それは、戦後復興期の活気溢れる長崎で出会った、佐知子という女性とその幼い娘と過ごしたひと夏の思い出だった。初めて聞く母の話に心揺さぶられるニキ。だが、何かがおかしい。彼女は悦子の語る物語に秘められた<嘘>に気付き始め、やがて思いがけない真実にたどり着く──。
 
遠い山なみの光

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原作:カズオ・イシグロ/小野寺健訳「遠い山なみの光」(ハヤカワ文庫)
監督・脚本・編集:石川慶 『ある男』 
出演:広瀬すず 二階堂ふみ 吉田羊 カミラ・アイコ 柴田理恵 渡辺大知 鈴木碧桜 松下洸平 / 三浦友和
製作幹事:U-NEXT
制作プロダクション:分福/ザフール
共同制作:Number 9 Films、Lava Films
配給:ギャガ 助成:JLOX+ ⽂化庁 PFI 上映時間123分
©2025 A Pale View of Hills Film Partners
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