ぴあフィルムフェスティバル(PFF)スタート今年で45回目を数える映画祭「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」が2023年9月9日に国立映画アーカイブにて開幕。第1回から続く自主映画を対象とした日本初の本格的なコンペティション「PFF アワード」をメインプログラムとし、招待作品部門では、映画祭でしか観ることのできない特集上映企画、映画講座など、9月9日から23日にかけて多彩なラインナップで開催となりました。 「山中瑶子監督『あみこ』への道」9月9日の初日には、「山中瑶子監督『あみこ』への道」と題して、『ホーリー・マウンテン』(1973年/監督:アレハンドロ・ホドロフスキー)、『ポゼッション』(1980年/監督:アンジェイ・ズラウスキー)、『あみこ』(2017年/監督:山中瑶子)、『おやすみ、また向こう岸で』(2019年/監督:山中瑶子)の4本を上映。『あみこ』と『おやすみ、また向こう岸で』の2本立て上映後には、山中監督と『おやすみ、また向こう岸で』に出演する女優の古川琴音さんが登壇しました。山中監督(1997年3月生まれ)と、古川さん(1996年10月生まれ)は、『おやすみ、また向こう岸で』と、『回転てん子とどりーむ母ちゃん』(オムニバス映画『21世紀の女の子』内の一編)の2作品でタッグを組んでいますが、実は二人は同学年。これからの日本映画界を担う若き二人が、その思いを真剣に語り合う場となりました。 |
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山中瑶子監督&古川琴音登壇注目の二人が登壇するトークショーということもあって、この日のチケットは早々に完売。 この日上映された『おやすみ、また向こう岸で』は、2019年に放送された山中監督初のテレビ作品。山中監督をはじめ、三浦透子、中尾暢樹、そして古川と全員が同学年という座組となった。その理由について「『あみこ』の時からそうでしたけど、なるべく若い人たちで。同じ時代を肌で感じているような、若い座組でやりたいと思っていました」と説明する山中監督。 そして「みんなどこかおぼつかなくて。フレッシュでしたね」と続けた古川も、「あの時は事務所に入って1年たったくらいで、お芝居を始めたばかりの頃。当時は監督のことを大先輩だと思っていたんですけど、今回パンフレットを見返してみたら2017年の『あみこ』が初監督作だったということで。ということは、ほとんど同じキャリアなんだとビックリしました」と笑いながら振り返った。 大学時代は映像身体学科で学び、英語劇のサークルで活動していたという古川。「やはり大学というのは、自分の学びたいことを学ぶ場だと思って。当時、自分がやりたいことは人前に立ちたいということだったんで、将来のことをほとんど考えずにその映像身体学科に入ったんですけど、お恥ずかしいことにその時はほとんど映画を観てなくて。この仕事をはじめるまでにただひたすら部活とサークルで舞台に立っているのが好きだったんです。だから就活の時にお芝居を仕事にしてみようと思ったんですけど、でも舞台のお芝居しかしたことがなかったから、映像のお芝居をやってみたいと思ったんです」と振り返った古川。そこから「映画のお芝居ってなんだろう?」と考えていたという古川だが、その時に満島ひかり主演、越川道夫監督の映画『海辺の生と死』が上映されていたことを知り、それを観ることにしたという。「その映画には満島さんが裸になって身を清めるシーンがあって、その時に月に照らされた顔がアップになるシーンがあったんですけど、それが本当にキレイで鳥肌がたって。舞台というのはお客さんに想像してもらったり、自分で想像しながら演じるものですけど、映像ってそれがちゃんと残るんだなというのが新鮮で。わたしもその中に入りたいと思って。ちょうどその映画を製作していたのが(現在、古川が所属する芸能事務所の)ユマニテだったので、応募して入りました」と明かす。 一方の山中監督が映画の道を志そうとしたきっかけは、この日上映されたアレハンドロ・ホドロフスキー監督の『ホーリーマウンテン』。それまで漠然と映画を観ていたという山中監督が、その背後にいる“つくり手”の存在を強烈に認識するきっかけになった作品だったという。その言葉を聞いた古川も「分かる気がします」と深くうなずくと、「この仕事をはじめてみて分かったのが、カメラの後ろにこんなにも人がいるんだということ。ある意味、舞台と一緒だなと思って。やはり観ている人がいないと、どこに向けて芝居をしたらいいのか分からないんです」と明かす。 自主制作の『あみこ』の時は少人数のスタッフで、手の届く範囲でものづくりをしていたという山中監督だが、商業作品を任されるようになるとスタッフの数もおのずと増えていくようになった。「ある意味のコントロール不可みたいな感じが生まれているんですけど、でも編集でつないでみると自分のものになっているのが不思議なんですよね」と笑う山中監督は、「そもそも脚本も、まずは無意識の状態で最後まで書くんですけど、その後からこことここがつながっているかも、というような構造的な何かを見いだせたりするんです。意外と自分で分かっていなかったことをスタッフさんが、こことここはつながりがあって、こういう意味になっているんですよねと聞いてくれたりして。そういう意味ではひとりでやっていた時よりも映画の奥行きだったり、多面的な視点が入ってきてはいます」と変化を感じている様子。 ただし撮影前からすべてを完璧に構築してそれを伝えることはなるべく避けたいという思いがあるという。「やはりスタッフの皆さんは、ここはどういう意味なのかと、その意図を知りたがっているんですけど、ここはこういう意味なんです、と言い切ることによって取りこぼすことも大きいから。わたしは具体的には言わずに、ニコニコして煙に巻いたりします。分かってないことを分かったふりして言ったとしても、それが良くなった試しがないので」と語る山中監督の言葉に、「確かに監督から演出が入る時にハッキリ言われるよりも、監督ですら言葉にならないようなものを、わたしも分かりたいと思いながらやった時の方がゾクゾクしますし、自分のキャパシティーを越えるというか。目に見えないことができたら最高だなと思いますし、(過去にも)そういう経験があったなと思います」と山中監督の考えに共鳴している様子だった。 そして「山中監督は大好きな監督です」と語る古川も、「それこそ自分の力を自然と引き出してくれる監督なので。さっきも言った通り、この監督の考えていることをもっと知りたいと思ったり、自分のその頭の中の一部になりたいと思うような、そういう気持ちを役者に起こさせてくれる監督なので。その若い力に加わらせていただけたらと思っています。ついていきます!」とラブコール。山中監督も「すでに加わっていただいています」と感激した様子を見せた。 |
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映画祭「第45回ぴあフィルムフェスティバル2023」開催公式サイト: <東京> <京都> |