オンラインQ&Aアカデミー賞®にノミネートされた『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』で全世界の映画ファンから熱狂的支持を集めたショーン・ベイカー監督の新作『レッド・ロケット』が、ヒューマントラストシネマ渋谷 、シネマート新宿ほか全国の劇場で絶賛上映中です。 A24が北米配給、カンヌ国際映画祭コンペティション部門で上映され、ショーン・ベイカーの新境地であると大きな話題を呼んだ本作は、口先だけの元ポルノスターを主役に、社会の片隅で生きる人々を鮮やかに描いた、ひとクセありのヒューマンドラマ。 本作公開の翌日4/22(土)に、監督・脚本・編集を務めたショーン・ベイカー監督がヒューマントラストシネマ渋谷にて上映後にオンライン登壇し、観客とのQ&A舞台挨拶を行いました。 |
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ショーン・ベイカー監督ロスから中継
上映中は場内で幾度も笑いが沸き起こり、非常にホットな雰囲気の中でイベントはスタート。監督はロサンゼルスの映画館の舞台裏にいるとのことで、ボンベや段ボールの詰まれた背景を「こんなところからすみません(笑)」と照れながら説明し、早速客席の笑いを誘った。客席からは次々と質問の手が上がり、笑顔でひとつひとつ丁寧に答えていったショーン・ベイカー監督は、キャスティングに懸けた思いやロケーションのこだわり、そして作品のテーマを掘り下げることについてなど、たっぷりと語りました。監督の過去作品をふまえて作風に迫る深い質問があがるなど、監督作品の熱心なファンが多数参加。ベイカー監督に憧れて映画作りをしているという観客へ監督がエールを贈る一幕もあり、非常に盛り上がりを見せた回となりました。 最初に監督が「映画館に足を運んでくださって本当にありがとうございます。『レッド・ロケット』が日本で劇場公開され、とても光栄に思っています。皆さんがここに来てくださっているということは、映画館で映画を見ることを支援してくださっているということだと思います。僕が映画を作っているのはそのためです。改めて、ありがとうございます」とあいさつすると、場内は大きな拍手に包まれた。 ――『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』の時に、『タンジェリン』での経験を指しつつ「iPhone GUYと呼ばれたくなかった」として35mmフィルムで撮影をしていましたね。今回はどのような新しい挑戦をしたのですか? 監督:挑戦という意味では、今作は製作費がかなりの低予算だったことです。『フロリダ・プロジェクト~』の4分の1くらいでした。実は元々は別の作品の制作を進めていたところ、コロナの影響でそれが叶わなくなってしまい、なんとか長編を作るだけの制作費はあったので、この作品を作ることになったんです。もちろん、どの作品でもいつだってお金は足りない状況なんですが、今作の一番の壁は予算でした。 ――出てくる俳優さんが本当に素晴らしかったです。解説をみると俳優ではない人たちばかりのようですし、監督はこれまでも一般人を起用していますよね。どのようにああいった人々を見つけるのですか? 監督:ありがとうございます。キャストのことは僕もとても誇らしく思っていて、実は自分の作品のキャスティングは自分で手掛けているので、褒めていただけると嬉しいです。大体は人づてか、“ストリートキャスティング”という街で見かけた人に声をかけるやり方、あるいは撮影場所で出会った方をキャスティングするというやり方を毎回組み合わせています。今作も本当に素晴らしいキャストに恵まれました。僕は現場で即興演技やアドリブを推奨する方なんですが、それにも素晴らしく対応できるすごいキャストが集まりました。 続いて場内から質問を募ると、次々と何人もの手が挙がった。 ――想像以上に楽しい映画でした。『レッド・ロケット』というタイトルの意味を教えてください。 監督:そう言っていただけて本当に嬉しいです。すごくダークなテーマもはらんだ作品ではあるのですが、ユーモアで包んで”シュガーコーティング”しているのは、まずは楽しんでほしいという気持ちがあったからです。 ――『フロリダ・プロジェクト~』では近くにディズニーワールドがあり、今作はずっと工場が画面に映っていています。監督の作品には大きな世界が近くにあり、小さな暮らしをしている人々がいるという構図があると思うのですが、それは意識的なのでしょうか? 監督:もちろんそれは意図的です。でもその意味するところや解釈は皆さんに自由にしていただきたいと思います。作り手である僕が細かくお話しするのは重要ではないと思っていますね。自分自身の政治的な思いを皆さんに伝えるよりは、皆さん自身の体験を通して、この映画を感じて参加していただくというアートの形である方がいいなと思っています。とはいえ、もちろん言いたいことや提示していることはあります。それは我々がいかに資本主義社会で生きているかということで、平均的な人々は大企業の陰に生きているのだということです。それとともに、僕は物語の舞台を具体的にすることが好きなんです。ロケーションもキャラクターの一つとして考えています。今回はテキサスシティという、360度カメラをどこに向けても製油所に囲まれているような場所が舞台です。視覚的に非常に興味をそそられて、絶対にここで撮りたいと思いました。 ――ドーナツ店の店長さんは『タンジェリン』や『フロリダ・プロジェクト~』でも登場した気がします。確かプロデューサーの方だったと思うのですが、今回は台詞が増えていたのでぜひ次の作品でも拝見したいです。 監督:(指差して“さすが!”というジェスチャーをしながら)はい!彼女はプロデューサーのツォウ・シンチンという方です。長年一緒に仕事をしていて、僕の2本目の長編『Take Out』では共同監督をしました。実は、彼女は長編デビュー作を作り終えたところで、絶賛編集中です。『Left-handed Girl』というタイトルの台北の夜市を舞台にした物語で、僕は共同脚本を務めました。来年皆さんにお届けできると思うので、ぜひ楽しみにしていてください。 ――素晴らしい作品をありがとうございます。自分は監督の作品に憧れて映画を撮っています。現場でのアドリブを重視すると仰っていましたが、本作の終盤の、壁にぶつかったマイキーの頭に写真フレームが落ちてくるシーンが大好きなのですが、あれは演出だったんですか? 監督:(大笑いしてうなずきながら)実は他では全く言っていないここだけの話なんですが、あれは完全なアクシデントでした(笑)。正直に言うと、写真フレームをちゃんと壁に留めていなかったので、マイキーの頭にゴツンと落ちてきてしまったんです。僕は、現場でそういうことが起きた時に「誰もケガしていないのなら使っちゃえ!」というタイプなので、今回もそのまま使いました。そういったハッピーなアクシデントにあふれた作品でした。映画を作っていらっしゃるのですね、グッドラック! ――監督が一番こだわった演技やキャストを教えてください。また、全体を通してのテーマやメッセージはなんでしょうか? 監督:どのキャラクターも等しく重要ではありますが、今回の物語的にはやはりマイキーが肝心でした。彼はアンチヒーローでもあって、紙の上だけで見ると最悪なダメ人間なわけです。でも観客には、そんな彼に共感して「しょうもないやつだけど」と物語についてきていただかなければいけません。それができる役者はそう多くありません。特殊な人間性などが必要ですが、サイモンにはそれがあります。彼はすごく人柄が素敵で格好良くて、ユーモアがあって人から好かれるんです。そんな彼なら、どんなダークな瞬間に物語が陥っても、観客はマイキーにきちんと付いてきてくれると信じていました。 最後に、日本のファンへのメッセージとして、「本当にありがとうございます。作品が日本で劇場公開されるということは、自分にとって本当に本当に大きな意味があることなので、すごく嬉しいです。『レッド・ロケット』は情熱と愛で作った大事な大事な作品です。東京には何回か行ったことがある大好きな場所なので、近いうちにまた日本に行きたいと思っています」と締めくくった。そして笑顔でピースサインを向けると、客席から大きな拍手が贈られた。 |
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『レッド・ロケット』
ヒューマントラストシネマ渋谷、シネマート新宿 公式サイト 公式Twitter 公式facebook 公式Instagram 人生は、スウィートだ。 有害なほど利己的で、破壊的にナルシスト A24北米配給!アカデミー賞®にノミネートされた『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』で全世界の映画ファンから熱狂的支持を集めたショーン・ベイカー監督の新境地。 |
レッド・ロケット(2021年/アメリカ/英語/130分/カラー/シネスコ/5.1ch/原題:Red Rocket/ R-18+/日本語字幕:岩辺いずみ)
監督:ショーン・ベイカー(『タンジェリン』『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』)/ 脚本:ショーン・ベイカー、クリス・バーゴッチ / 撮影:ドリュー・ダニエルズ
(『WAVES/ウェイブス』)
美術:Stephonik
編集:ショーン・ベイカー
出演:サイモン・レックス、ブリー・エルロッド、スザンナ・サン ほか
提供:トランスフォーマー、Filmarks 配給:トランスフォーマー
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