3Dを手に入れ、ポップに戻ってきたゴダール
先週末の1月31日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国で公開中のジャン=リュック・ゴダール監督の最新作 『さらば、愛の言葉よ』 シネスイッチ銀座では、公開初日の1月31日に熱狂的なゴダール・ファンが多数来場、翌日曜日は前回満席立ち見になるなど、大ヒットを記録!その公開を記念し、著書「ユングのサウンドトラック」でゴダールの作品を「音楽」と「恋」から読み解といた音楽家の菊地成孔さんと、ELLEなどで活躍する映画ライターの久保玲子さんをお迎えしてトークショーが行なわれました。 日 時: 2015年2月3日(火) 20:00開始 |
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イベントのチケットは告知解禁からわずか3日で完売しただけあって、20代から40代を中心に、菊地さんやゴダールのファンと思われる方が多数詰めかけ、トーク後のQ&Aでも、熱い質問が飛び出し、終了予定時間を大幅に超えた充実の時間となりました!
菊地さん: 私が文筆家になってゴダールについてお話したりするようになったのは2001年公開の『愛の世紀』からで。いわゆる21世紀ゴダールになってから『アワーミュージック』、『フィルムソシアリスム』(日本語公開タイトル:ゴダール・ソシアリスム)がありまして、そのなかでも『さらば、愛の言葉よ』は一番オススメできる。映画館に行った方がいいですよ、と言える映画です。『アワーミュージック』はハリウッド映画ばかりを観ている方も楽しめる(笑) ただ欠点があって長かったんですね。 今回の『さらば、愛の言葉よ』は69分なので映画自体にも興味がない、ゴダールにも興味がない、でもモダンアートには興味があって映像作品にも興味がある、というだけの方がご覧になっても、十分楽しめる、十分意味がある映画だと思います。 |
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ゴダールの映画史においてポップだった時代、ポップじゃなくなった時代、ポップじゃないのかなんなのかわからない時代の3段論法に分かれるんですが、この映画は間違いなくポップだと言えると思います。どのくらいポップかというと、『気狂いピエロ』くらいポップだと言えると思いますけども。
ゴダールはあるときから、自分の作品から女性の裸と資本主義と音楽っていうものをーおそらく同一視していると思うんですけどー全部捨てたと思ってるんですね。ゴダールにトラウマを与えたのは『女は女である』だと思うんですけども、ミシェル・ルグランに発注した音楽をさばききれなかったということと、アンナ・カリーナがさばききれなかったということと、興行成績をさばききれなかったことを同一視したんではないかと私は考えていて。まあ仮説ですけど(笑)で、一気に全部捨てたと思うんですね。ところが、女優と資本主義ということは解決できなかったゴダールですが、音楽のことは解決できてしまって。それはフランソワ・ミュジーというゴダールの切り貼りした音・・・ それは技術的には非常にへたくそなんですけども、それを様式美に高めて継承してくれる非常に優秀な整音監督がいて、彼だけが人間嫌いでどんどんスタッフやキャストが変わっていくゴダール組の中で唯一30年以上ゴダールのパートナーを務めた彼が、前回の『ソシアリスム』から外れて、ファブリス・アラーニョに継承されていった。ミュジー時代よりややしつこくやっていて、ゴダール漫画といってもいいくらい戯画化されている。 3D映画って、娯楽エンターテイメントに属するものが3Dの出自だと思うんですね。ディズニーアトラクションのようなビックリ企画の一つとして。一方でラファエロみたいな、2Dの絵のなかに遠近法が入ってきたような出自と2つあると思うんです。西洋美術史とつながっているような監督が、高尚でとてもポップな・・・これは商品性という意味ですけど、無計画にやっているのかなと。だから、一度は捨てた「女優」もこれから取り戻していくかもしれないですね。そこまでいくのか、刮目して見守りたいと思います。 |
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一般の方とのQ&A Q. 『さらば、愛の言葉よ』のなかに「ググる」というスラングが出てくることについては? A. 前田さん: |
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『勝手にしやがれ』で華々しく世界の映画界に現れたゴダール監督は今84歳。
50年以上、世界の映画の最前線で映画表現を模索してきた巨匠が今、3D技術を手に入れ、さらに色鮮やかに軽やかに放つ野心作 映画『さらば、愛の言葉よ』 シネスイッチ銀座ほか全国公開中です。 |
監督・編集・脚本:ジャン=リュック・ゴダール
撮影:ファブリス・アラーニョ 『ゴダール・ソシアリスム』(2010)
出演:エロイーズ・ゴデ、カメル・アブデリ、リシャール・シュヴァリエ、ゾエ・ブリュノー、ジェシカ・エリクソン、クリスチャン・グレゴーリ、withロクシー・ミエヴィル(アンヌ=マリー&ゴダールの愛犬)
2014年/フランス映画/フランス語他/69分/原題:Adieu au Langage 3D/英題:Goodbye to Language 3D
© 2014 Alain Sarde – Wild Bunch
配給:コムストック・グループ / 配給協力:クロックワークス