1月24日(土)より公開となった『二重生活』を引っ提げ来日を果たした中国の鬼才ロウ・イエ監督が24日の公開初日、新宿K’s cinemaでトークイベントを行いました
概要 社会学者の宮台真司氏が24日、東京・新宿K’s cinemaで初日を迎えた映画『二重生活』のトークイベントに出席し、ロウ・イエ監督と作品における街の描き方や本妻、愛人、そして女子大生と交わりを持ちながらも満たされない主人公の心情について熱いトークを展開しました。 |
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本作は、経済発展が著しい武漢市を舞台に、交通事故で死亡した女子大生、彼女と最後に接触した二つの家庭を持つ男、その妻と愛人が織り成す複雑な物語がスキャンダラスな内容。
いきなり宮台氏は、 宮台さん:私は1980〜90年代、街のフィールドワーカーであり、援助交際のフィールドワーカーでもあった。いわゆるニンフォマニアでしたね。 監督:そういえば、宮台さんはヨンチャオ(二重生活を送る主人公)と雰囲気が似ていますね。 と大いに共感した様子を見せ、会場は笑いの渦に。 |
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さらに宮台氏は、
宮台さん:ここ10年、20年、街が冷えてしまって恋愛のカオスが無くなった。そういった意味でこの映画に懐かしさを感じた。監督の中で、何か失われつつあるカオスを描いているという意識はなかったのか? と切り込むと、ロウ監督は、 監督:確かにそうですね、カオスの中にさまざまな階層の人たちが集まってくるところに凄く関心がある。 と同意。経済発展が著しく、貧富の差が激しい武漢を舞台に選んだのも、監督が意図する街のイメージに合致したからだろう。 |
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また、ロウ監督は、
監督:本国では、この映画は女性に焦点を当てた作品だと思われている。その点について一部分は認めるが、これは男性を描いている映画だと私は思っている。 と強調。これに対して宮台氏は、 宮台さん:ヨンチャオと自分を重ねてみたが、彼は決して性欲過剰な男ではない。それは、思い描いていた中流家庭にどこか満たされない、心の空洞のようなものを埋めるために、次々と女性とセックスを重ねていているように感じる。 と分析。これに対してロウ監督は、 監督:中国のメディアから、『彼は全て揃っているのにいったい何がしたいんだ?』とよく聞かれることがある。彼はずっと何かを探し続けている男。ところがそれが何かわからないから、最後に危険な道に走ってしまう。 と、主人公に込めた思いを語った。 とある事件。被害者の女性と数時間前まで一緒にいた男は、二つの家庭を持っていた。 『二重生活』 新宿K’s cinema、渋谷アップリンクほか全国順次公開中 公式サイト: http://www.uplink.co.jp/nijyuu/ httpv://www.youtube.com/watch?x-yt-cl=84503534&v=wbcjauaG8q4&x-yt-ts=1421914688 |
優しい夫と可愛い娘。夫婦で共同経営する会社も好調で、なにも不自由のない満ち足りた生活を送る女ルージエ。愛人として息子と慎ましく生活しながらも、いつかは本妻に、と願う女サンチー。流されるまま二人の女性とそれぞれの家庭を作り、二つの家庭で生活する男ヨンチャオ。いびつながらも平穏に見えたそれぞれの日常は、ほんの少しの出来事でいとも簡単に崩壊し、その事件は起きた。3人の男女、事件を追う刑事、そして死んだ女。それぞれの思わくと事情が何層にも重なりあい、物語はスリリングに進んで行く。
監督・脚本:ロウ・イエ
脚本:メイ・フォン、ユ・ファン
撮影:ツォン・ジエン
編集:シモン・ジャケ
音楽:ペイマン・ヤズダニアン
出演:ハオ・レイ、チン・ハオ、チー・シー、ズー・フォン、ジョウ・イエワン、チャン・ファンユアン、チュー・イン
配給・宣伝:アップリンク
(2012年/中国、フランス/98分/1:1.85/DCP)
<プロフィール>
■宮台真司
社会学者。映画批評家。首都大学東京教授。1959年3月3日仙台市生まれ。京都市で育つ。東京大学大学院博士課程修了。社会学博士。
権力論、国家論、宗教論、性愛論、犯罪論、教育論、外交論、文化論などの分野で単著30冊、共著を含めると100冊の著書がある。
著作には『権力の予期理論』(理論書)『14歳からの社会学』(青少年向け)『〈世界〉はそもそもデタラメである』(映画批評)などがある。
キーワードは、全体性、ソーシャルデザイン、アーキテクチャ、根源的未規定性、など。
■ロウ・イエ監督
1965年劇団員の両親のもと、上海に生まれる。1985年北京電影学院映画学科監督科に入学。
『ふたりの人魚』(00)は中国国内で上映を禁止されながらも、ロッテルダム映画祭、TOKYO FILMeX2000でグランプリを獲得。1989年の天安門事件にまつわる出来事を扱った『天安門、恋人たち』(06)は、2006年カンヌ国際映画祭で上映された結果、5年間の映画製作・上映禁止処分となる。禁止処分の最中に、中国では未だタブー視されている同性愛を描いた『スプリング・フィーバー』が、第62回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞。パリを舞台に、北京からやってきた教師と、タハール・ラヒム演じる建設工の恋愛を描いた『パリ、ただよう花』は第68回ヴェネツィア国際映画祭のヴェニス・デイズ、および第36回トロント国際映画祭ヴァンガード部門に正式出品された。
2011年に電影局の禁令が解け、中国本土に戻って撮影された本作『二重生活』は、第65回カンヌ国際映画祭ある視点部門に正式招待。ほか、第7回アジア映画大賞(アジアン・フィルム・アワード)で最優秀作品賞ほか3部門を受賞。中国現代文学の代表的作家でありロウ・イエと親しい友人でもあるピー・フェイウー(畢飛宇)の小説を原作にした『ブラインド・マッサージ(英題:Blind Massage/原題:推拿)』は第64回ベルリン国際映画祭銀熊賞(芸術貢献賞)を受賞。日本では2014年9月にアジアフォーカス・福岡国際映画祭にて先行上映された。