映画情報どっとこむ ralph 特定非営利活動法人映像産業振興機構(略称:VIPO、理事長:松谷孝征、東京都中央区)が、日本における商業映画監督の育成への取り組みとして、2006年度より企画・運営する、文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2022」において、今年度の製作実地研修で完成した短編映画4作品の「合評上映会」が都内にて開催されました。
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日時:2月7日(火)
場所:丸の内TOEI
登壇:
<岡本組>岡本昌也監督、福永朱梨、日下七海
<成瀬組>成瀬都香監督、ライディーン鋼、夏目朱里、中野深咲、草野航大、道田里羽
<藤本組>藤本楓監督、宮田佳典、大友一生、小野莉奈、若林時英
<牧組>牧大我監督、山根和馬、森優作、カトウシンスケ、デブリーズ
映画情報どっとこむ ralph 文化庁の事業である映像産業振興機構(VIPO)が企画・実施する「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2022」で製作された短編映画4作品が、一般公開に先駆けて合評上映会でお披露目された。舞台挨拶に登壇した4人の若手監督は、多くの観客で埋まった客席をみて、感激の表情を見せました。

この日上映されたのは、初監督作『光の輪郭と踊るダンス』がゆうばり国際ファンタスティック映画祭2021「ゆうばりホープ」に選定されるなど、演劇・映画ともに今後の活躍が期待されている岡本昌也監督作『うつぶせのまま踊りたい』、短編『泥』がソウル国際プライド映画祭、TAMA NEW WAVE、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭などに入選するほか、アマチュアでプロレスにて後楽園ホールのリングに立ったこともある成瀬都香監督作『ラ・マヒ』、多摩美術大学で舞台衣裳や特殊小道具のデザイン・製作を学び、卒業後東京藝術大学大学院に進学、桝井省志氏、市山尚三氏に師事し映画製作について学んできた藤本楓監督作『サボテンと海底』、慶應大学4年時に親友たちと映画制作を始め、写真家、作曲家、アニメーターと共に幡ヶ谷の古民家「凡蔵」を制作拠点にし、短編『ダボ』がSSFF & ASIA 2022に入選した牧大我監督作『デブリーズ』の短編映画4作品。

合評上映会は、文化庁の山田素子参事官のあいさつで開始。「今年で17回目となりました本プロジェクトですが、日本映画界の次世代を担う映画監督の育成を目的とした事業でございます」と切り出した山田参事官は、「本年度に4名の監督の皆さまにおかれましては、脚本指導を受けることに始まり、撮影、編集と、映画完成までの一連の流れを、経験豊富なプロのスタッフと共同で行うことを通じて、多くの貴重な経験を得られたものと感じております。この4名の監督が、情熱をもって制作した個性豊かな作品がこのスクリーンに映し出され、皆さまにご鑑賞いただける日を迎えられましたこと、大変うれしく感じております」と会場に呼びかけた。

1本目の『うつぶせのまま踊りたい』の岡本昌也監督は、本作を描こうと思った理由について「僕自身が突然、ここ(ステージ)から飛び降りたらどうなるんだろうとか、街中で叫んだらどうなるのかなとか、そういう子どもっぽい衝動にかられる時があって。自分の中に子どもが住んでいるのかなと思うことがあるんです。でも大人になるといろいろとまわりの人に助けてもらったりしながら、社会性を獲得していく中で、この子どもの部分をなかったことにしたくないなと思って、映画にしたいと思いました」と明かす。また本作のメインキャストとなる福永朱梨、日下七海というコンビについて「やはり二人じゃないとできなかったような曖昧さというか、「おとなこども」の季節みたいなもの、モラトリアムのようなものをちょっと俯瞰しながら、当時に戻って、思い切り演じてくださったので。その辺がとてもやりやすくて。お二人に頼んで良かったなと思いました」と笑顔。また、本作で印象的な美しい撮影などについても、「自画自賛するようでしたけど、自分でもとてもきれいだなと思いました。ついていただいたカメラマンと照明さんが本当に素晴らしくて。うちの現場って、全員が意見をガンガン言い合う、全員が作家さんみたいな人たちの集まりで。わたしはこう思う、ダメだと思うという言葉が飛び交っていて。僕はその言葉をジャッジするだけでした」と振り返った。

続く2本目『ラ・マヒ』の成瀬都香監督は、自身も熱心なプロレスファンであり、アマチュアプロレスでリングに立った経験もあるという。「わたしは2年前くらいにプロレスにドはまりして。今は追っかけをやってるんですけど、それまではひたむきに頑張るような主人公がそれほど好きではなかったんです。むしろ正反対のタイプの性格だったんで。でもプロレスを見たら若くてかわいい、細身の女の子がレスラーとしてがんばっていたんですよ。そういうのを見ていて、なんでこの人たちは諦めずに何度も立ち上がるんだろう、ということに純粋に感動して。帰りの電車でボロボロ涙を流しながら帰って。この感動ってなんだろうと思っていたんですけど、まず自分が映画を作りたいと思ったときに、まず初めに思ったのが、頑張ってる人を描きたいなというのがあって。そのやりたいことに合致するのがプロレスだと思いました」と熱い思いを吐露。そして『ラ・マヒ』というタイトルについても「本来はラ・マヒストラルという名前の技の名前なんですけど、スペイン語で“あっぱれな技”という意味で。登場人物たちにもあっぱれな人生を送ってほしいという意味を込めて、このタイトルになりました」とコメント。さらに今後について「プロレス映画の長編を撮りたいなと思いました」と展望を語った。

3作目『サボテンと海底』の藤本楓監督は、普段は美術スタッフや制作部などを担当。「わたしが5分以上の映像作品を撮るのはこの作品が初でした」と語る藤本監督は、「美術部としてCMに参加した時に、スタンドインという方を初めて見て。この人たちを主人公に映画を撮ってみたいと思っていたタイミングで、自分の参加した現場で宮田さんをお見かけして。ご本人に無許可で宛て書きをしてndjcに応募しました」と明かすと、さらに大友一生、小野莉奈、若林時英という学生のスタッフ役の3名についても「実はお三方も勝手に宛て書きをさせていただいて。皆さんのお顔が頭に浮かんでいる状態で書いてオファーを出したら見事に出ていただけることになって。特別に演出をつけなくても、勝手にいい感じにしてくださるので。素晴らしかったです」と笑顔を見せた。そして今後の展開について質問をされると、「わたしはけっこう人よりジタバタしてきた経験があるという自信があって。失敗してきたこととか、恥ずかしいこととかも、時間が経てば笑い話になるみたいなことをテーマに、これからも自分のネガティブな経験とかを作品に昇華させて、それを観て人が救われたり、笑ってくれたらいいなと思っています」と意気込んだ。

そして最後に4作目『デブリーズ』の牧大我監督は「もともとSFウェスタンの企画をしていたんです。ゴミのある惑星に降りたって脱出するというウェスタン物語だったんですけど、ndjcのためにそれを改良して30分で撮れないかなということになり。それでいろいろあってこうなりました」とその経緯を明かすと、「前回の映画のバジェットが5,000円なので。これだけの規模が大きい映画を作れる機会がなかなかないので、ならば普段は作らないSFがいいんじゃないかと思って作ることにしました」とコメント。一方、その脚本を読んだというCM監督役の山根和馬は「まず脚本を読んだら理解できなくて。これは監督に会いたいと思って会ったんですけど、もっと分からなくなって。それならもうやるしかないと思って。やって理解するしかないなと思いました」と述懐。そしてカメラマン役の森優作も「牧監督のプロフィール写真がパンチがありすぎて。どんな人なのかなと思ったんですけど、現場で会ってみたら、人としてめっちゃ面白い人だなと。そこからは自分も楽しもうと思って、楽しめました」と続けた。さらに本作の製作プロセスなどについて語った牧監督は、今後の展開について「1カ月くらい籠ってて、映画とかドラマを観ていたんですけど、妄想によって生じるロマンというか、露悪的じゃないですけど自分の失敗を笑いにするという、その3点セットで物を作りたいなと考えていて。直近で作りたいと思っているのが、クレイアニメと実写を織り交ぜて、何か実験的なことができないかなと。そういうのを家で作ろうかなと思いますね」と明かした。

そんな個性豊かな4人の監督のあいさつを聞いていた西ヶ谷寿一スーパーバイザーは、「皆さんは一応、今日でひと段落ということですね」と呼びかけると、「シナリオは自分ひとりでもできますが、映画をつくるというのは本当に大きなお金が必要となってきます。なので監督たちは本当に貴重な体験をされたと思っています。映画を撮る機会は貴重なものなので、一回撮った経験を、次のチャンスに活かせるようにしておいていただけたらと思っております。これからいろんな人に出会うと思いますが、映画監督は作り続けていかないと真価を発揮できないと思うので、これからも作り続けて、次にチャレンジしていただけたら」とメッセージを送った。

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