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世界難民の日イベント
本年度アカデミー賞にて、史上初となる国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞、長編アニメーション賞3部門同時ノミネートの快挙を成し遂げた、デンマークほか合作によるドキュメンタリー映画『FLEE フリー』が、全国の劇場で絶賛上映中です。
  
本作は、主人公のアミンをはじめ周辺の人々の安全を守るためにアニメーションで制作された。いまや世界中で大きなニュースになっている難民やアフガニスタンを巡る恐ろしい現実、祖国から逃れて生き延びるために奮闘する人々の過酷な日々、そして、ゲイであるひとりの青年が自分の未来を救うために過去のトラウマと向き合う物語を描いています。
世界難民の日である6月20日に、青山学院大学にて特別授業「大学生が考える、私たちの難民問題」が行われました。
世界難民の日とは、2000年12月14日に国連総会で、難民の保護と支援に対する世界的な関心を高め、UNHCRを含む国連機関やNGOによる活動に理解と支援を深める目的で制定された日。これを記念して青山学院大学では未来を担う学生たちに映画『FLEE フリー』を通して難民問題を身近に考えてもらうべく、総合文化政策学部 飯笹佐代子教授のゼミにて特別授業が行われた。

この特別授業では、青山学院大学4年生の市川優果さん(いちかわ・ゆうか)、ラサン イースターさんの二人により司会進行が行われ、映画の上映後にはゲストスピーカーによる講演、学生たちによる感想のやりとり、難民にまつわる3つのトピックについてのディスカッションが行われた。
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『FLEE フリー』の上映が終わると、監督であるヨナス・ポヘール・ラスムセンの特別メッセージが上映された。
監督は、本作の主人公アミンとの出会いを語り、「映画の中心は私の家で収録したアミンとの会話です。そんな作品が日本や世界で観られるなんて幸せです。世界中で共感してもらえて、とても嬉しく光栄です」と改めて日本を含む多くの国で『FLEE フリー』が公開された喜びを述べた。さらに監督はウクライナやアフリカ、ミャンマーなどの難民問題に触れ、「彼らの物語は“難民の話”ではなく“人間の話”と考えることが大切です。彼らの物語を人間的な視点で観ることで、初めて助け合うことができるはずです」と学生に向けてメッセージを送った。
続いて難民を助ける会(AAR Japan)のプログラム・コーディネーターである鶴岡友美さん(つるおか・ゆみ)がゲストスピーカーとして登壇し、自身の難民支援活動の経験を踏まえ、アフガニスタン難民の現状についての講義が行われ、学生たちのディスカッションパートに移った。

学生たちによるディスカッションは、3つのトピックを軸に行われた。
【日本の難民支援の現状についてどう思うか】というトピックでは、今年の8月からスウェーデンに留学予定の学生より、日本とスウェーデンの難民支援制度を比較して「日本の難民受け入れの人数を増やすことは、もちろん大事ですが、受け入れた人、これから受け入れる人に対して、皆が生きやすい社会を作るための制度と考え方を、他国を参考にしながら改めて考えてみる必要があると思った」といった意見や、「難民としてではなく、一人の人間として向き合うことが大切とあったように、日本として何をするべきか、私にはまだ言えないが、映画やアニメの力を借りるなどして、一人一人が学ぶこと、無関心のままでいないことが今の私たちがやらなければならないことだなと感じた」と映画を通じて難民問題に関心を持つことについての意見もあった。

【ウクライナの避難民と難民制度について】と【日本社会は難民に対してどう対応すべきなのか】というトピックでは、「ウクライナの避難民だけが特別視されているという点に着目するのではなく、もっと根本的な所に目を向けなくてはいけない」といった意見や「監督のメッセージにもあったように、難民問題として物事を見ていくのではなく、一人の人間の問題として見ていく必要があると感じた。どうするべきか考えることも、もちろん必要だが、その前段階の、どういう社会にしていきたいのか、そういった所から議論を進めていけるような場があったらいいなと感じた」といった意見が述べられた。ディスカッションは予定の終了時間をオーバーするほどの盛り上がりを見せ、監督のメッセージにあった“難民の話”ではなく“人間の話”として考えることが大切であるという言葉に、多くの学生から賛同の意見が述べられたことからも、『FLEE フリー』と監督のメッセージを通して、より難民問題に対しての意識が強まった印象を受けた。
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『FLEE フリー』
原題:Flugt 英題:FLEE

新宿バルト9、グランドシネマサンシャイン 池袋 ほか全国公開中。
公式HP:
@flee/
公式Twitter:
@FLEE_JP
STORY
アフガニスタンで生まれたアミンは、幼い頃、父が連行されたまま戻らず、残った家族とともに命がけで祖国を脱出した。やがて家族とも離れ離れになり、数年後たった一人でデンマークへと亡命した彼は、30代半ばとなり研究者として成功を収め、恋人の男性と結婚を果たそうとしていた。だが、彼には恋人にも話していない、20年以上も抱え続けていた秘密があった。あまりに壮絶で心を揺さぶられずにはいられない過酷な半生を、親友である映画監督の前で、彼は静かに語り始める…。
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監督:ヨナス・ポヘール・ラスムセン
製作プロダクション:Final Cut for Real『アクト・オブ・キリング』
製作総指揮:リズ・アーメッド、ニコライ・コスター=ワルドー
2021年/デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フランス合作/シネスコ/カラー/89分/5.1ch/G/原題:Flugt 英題:FLEE
日本語字幕:松浦美奈/後援:デンマーク大使館、特定非営利活動法人 国連UNHCR協会/配給:トランスフォーマー
© Final Cut for Real ApS, Sun Creature Studio, Vivement Lundi!, Mostfilm, Mer Film ARTE France, Copenhagen Film Fund, Ryot Films, Vice Studios, VPRO 2021 All rights reserved
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