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マーガレット・クアリーxシガニー・ウィーバー

この度、ハリウッドの新星マーガレット・クアリーと名優シガニー・ウィーバーがタッグを組んだ『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』が5月6日(金)より、新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開となります。
『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』
90年代ニューヨークを舞台に、老舗出版エージェンシーで厳しい上司に振り回されながらも、自分らしく輝くために奮闘する主人公の成長物語。

公開に先立ち、4月12日(火)都内にて、一般試写会を行いました。
本編上映後には、「女子文化」をキーワードに、映画や文学、音楽など幅広くコラムを執筆されている山崎まどか、そして、昨年公開された『あのこは貴族』の原作者で、地方都市に住む若者や現代女性のリアルをテーマにした作品が高く評価されている作家の山内マリコが登壇しました。
マイ・ニューヨーク・ダイアリーイベント
日付:4月12日(火)
登壇:山崎まどか、山内マリコ

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山崎まどかx山内マリコ

山崎:もともと原作「サリンジャーと過ごした日々」のファンなのですが、映画も期待以上でした。原作をもとにした劇映画として、最高のクオリティで実現しているなと思いました。山崎まどかマイ・ニューヨーク・ダイアリーイベント

山内:実は2015年の発売当時に山崎さんが原作を推しているのを見かけてすぐに読んだんです。そして、2020年に映画化されるまでの間にマーガレット・クアリーという逸材の俳優が成長していて、このタイミングで映画化されたからこそ、いい映画になったんだなと感じました。すごく大好きな作品です!

「ハプワース」出版裏話。実は日本人はラッキーだった!?

山崎:邦題は『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』ですが、原作と映画の原題は「サリンジャーと過ごした日々(My Salinger Year)」。主人公はサリンジャーを読んだことがないという設定ですが、原作では日本からのファンレターがものすごく多いという話も。実は、日本はとりわけサリンジャー人気が根強い国なんです。劇中では、サリンジャーが生前に発表した最後の小説「ハプワース16、1924年」の出版をめぐる騒動の一部が描かれますが、結局「ハプワース」はアメリカで出版されなかったんです。なぜかというと、この頃からネット書店をやっていたアマゾンのジェフ・ベソスが出版に気がついて大量注文し、彼がきっかけで大ニュースになり、サリンジャーが企画をひっこめちゃったんです。サリンジャーは偏屈で孤高の人で、全然出版をさせてもらえないことで有名ですから。とてもネット黎明期らしいお話ですよね。うっかりというか…。でも、嬉しいことに日本では「ハプワース」が読めるんです。サリンジャーの目が届かなかったのか、1970年代に日本で書籍として出版された関係で、新訳版が出せるようになったんです。2018年に「このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる/ハプワース 16、1924 年」(金原瑞人 訳/新潮モダン・クラシックス)が刊行されています。
みなさんすごく、ラッキーなんですよ!

老舗文芸界を表現するセット、衣装…。
「さりげない部分まですごく凝っている映画」

山崎:アメリカではエージェントが著者の代理人として作品に適した出版社に作品を持ち込んだり、ギャランティーの交渉をしたり、作家の権利を守る役割を果たしています。

山内:ジョアンナが就職した老舗出版エージェンシーのあの雰囲気、ときめきましたね。

山崎:あと、登場人物全員が文芸界の人の恰好をしてましたね。秘書のエレガントな雰囲気とか、同僚男性がタートルネックを着ている感じとか…。オフィス内で「ジーンズは禁止」なので、全体的に文学の世界というか、少し浮世離れしている人々のような感じ。

山内:マーガレット・クアリー演じるジョアンナの衣装も本当に可愛かった。今日、花柄のワンピースの上に紺のブレザーを着て完コピしようと思ったんですが、あまりにも普段の自分と違ってしまってブルゾンに変えてきました(笑)。そのくらいカチッとしていて、上品でクラシカルな雰囲気がありますよね。山内マリコマイ・ニューヨーク・ダイアリーイベント

山崎:シガニー・ウィーバー演じる上司も素敵でしたね。彼女の衣装は大御所衣裳デザイナーのアン・ロスが手掛けていて、シガニー・ウィーバーとは『ワーキング・ガール』(88)からの付き合い。だからシガニーに似合う服がよく分かっているし、本作ではオリエンタルな服やカーディガンの小粋な巻き方も本当に素敵で…。そういったさりげない部分もすごく凝っていて、作りがきちんとしている映画だなと思います。

『プラダを着た悪魔』を現代版にアップデートした作品!

山内:本作は『プラダを着た悪魔』と比較されるようですが、上司と部下のふたりの関係性は割とフラットで、「鬼上司!」という感じではないですよね。

山崎:『プラダを着た悪魔』は、部下がカリスマ性のある人に振り回されて必死についていく話で、「男性」vs「男性」でも置き換えられるような関係性ですが、最近は女性同士のメンター(助言する人)とメンティー(指導される人)の関係性をフラットに描いた作品が少しずつ増えてきています。上司マーガレットは凄くセンスがいいし、キャリアもあるけれども、一方で人間的に脆い部分もある。そんな彼女が部下との会話の中で自分の弱さに気付いていく、というところに光が見える瞬間があるし、ジョアンナはその人間的な弱さも含めて上司マーガレットのことを好きになる。それが現代らしい上司と部下の関係性の描き方なのかなと思います。こういう映画が見たかったんです!社会人1年目の働き始めは自分自身のことがわからないけど、都会の中でだんだんと自分を理解し、大人になっていく映画はいくつかあると思いますが、本作はそれがすごくうまく描かれているなと思います。

山内:ジャンル映画と言えばジャンル映画なんだけれども、このクオリティでちゃんとエンタメとして楽しませてくれて、観終わったあとにスキップしたくなるような映画はそんなにないですよね。

恋愛優先でなく、自分の足で立つことを選ぶ主人公の姿がイイ!

山内:ジョアンナが同棲している作家志望の彼氏は、かっこいいんですけど、ダメ男なんですよね…!でも元カレも素敵でしたね。

山崎:私は元カレの方が素敵だなと思いました!でも、ジョアンナは恋愛優先ではなく、自分の足で立つことを選んでいて、そこがまた良いですよね。

山内:人生で自分のためになる選択をできたかどうかは、結構重要なポイントですよね。リアルタイムでは客観的にわからなくて、恋愛感情に流されてしまうことが多いけれども、あとから振り返ると「私、あの時自分の足で立とうとしたんだわ」って気づく瞬間がありますよね。私も作家になりたいけどなかなかうまくいかなかった下積み時代に、無意識に自分の励みになるような言葉を見つけると採集していました。そのときに一番励まされたのが『デート・ウィズ・ドリュー』(04)のドリュー・バリモアの「リスクを取らないのは人生の浪費だ」というセリフで。その時ニートだった私に「リスクを冒しながら何かやろうとしていて、それは間違ってないんだ」と思わせてくれた言葉でした。本作の主人公ジョアンナはサリンジャー宛に届くファンレターを通して自分自身を見つけていくのがいいですね。私もいただいたファンレターはちゃんと読んでいますし、捨てたりなんてせずに大事にとっていますよ!

と、本作の魅力について、そして出版業界の裏話など、たっぷりと語りました!

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『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』

『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』
5月6日(金)新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』

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監督・脚本:フィリップ・ファラルドー(『グッド・ライ~いちばん優しい嘘~』)
原作:「サリンジャーと過ごした⽇々」(ジョアンナ・ラコフ 著/井上里 訳/柏書房)
出演:マーガレット・クアリー、シガニー・ウィーバー、ダグラス・ブース、サーナ・カーズレイク、ブライアン・F・オバーン、コルム・フィオールほか
提供:カルチュア・パブリッシャーズ、ビターズ・エンド
配給:ビターズ・エンド
2020年/アイルランド・カナダ合作/101分

9232-2437 Québec Inc – Parallel Films (Salinger) Dac © 2020 All rights reserved.

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