現在大ヒット上映中の、『しあわせのパン』のスタッフが再び北海道を舞台にしてお贈りする

映画『ぶどうのなみだ』

主演は、『しあわせのパン』につづき、北海道出身で映画・TVと大活躍中の大泉洋。共演に、デビュー後本格的な演技初挑戦となるシンガーソングライターの安藤裕子。そして、ヴェネチア国際映画祭で最優秀新人賞を受賞した若手実力派・染谷将太。監督は『しあわせのパン』を手がけ、同名小説も高く評価された三島有紀子。

今回もオリジナル脚本を書き下ろし、オール北海道ロケ!

本作の舞台は北海道・空知(そらち)のワイナリー。葡萄畑でワインの醸造に励む兄のアオ(大泉洋)と傍で小麦を育てる弟のロク(染谷将太)のもとに、ある日不思議な旅人エリカ(安藤裕子)が現れ、二人の生活に新たな風を吹き込んでいく、という物語。

そんな本作の公開を記念して、日本ワインの第一人者岩倉久恵氏を招いてのトークイベントが開催されました。
『ぶどうのなみだ』1

岩倉久恵トークイベント 
映画『ぶどうのなみだ』と日本ワインのお話 概要

日時:10月16日(木)
場所:代官山T-SITE 蔦屋書店)

ゲスト:岩倉久恵、映画『ぶどうのなみだ』プロデューサー岩浪泰幸

日本ソムリエ協会認定ソムリエであり、日本ワイン人気の裾野を広げてきた第一人者でもある岩倉久恵氏と大ヒット上映中の映画『ぶどうのなみだ』のプロデューサー 岩浪泰幸のトークイベント。映画『ぶどうのなみだ』の舞台となった空知のワインを試飲しながら映画の成り立ちや今注目を集めている北海道産ワインに関する話で盛り上がりました!
『ぶどうのなみだ』2

MC:北海道を舞台にした映画で「ワイン」を題材にした理由

岩浪:『しあわせのパン』と同じく企画の鈴井亜由美さんと企画しました。『しあわせのパン』のときは北海道産の小麦粉を使った“パン”を題材にしました。当時、道内ではすでにパンカフェがブームになっていたんです。その撮影時に映画本編でも登場している月浦ワイナリーに出会い、そのおいしさに驚きました。ちょうど北海道産のワインが力をつけてきている時期で、ちょうどそれ以前に亜由美さんが映画のモデルになった山﨑ワイナリーさんと出会っていたこともきっかけになり「次は道産ワインをやりたいね」と話すようになりました。そして、三島監督とプロデューサー陣で山﨑ワイナリーさんに取材に行き、東京に戻ってきて映画の内容を詰めていたときに、(プロデュースの)森谷さんが「東京でも北海道のワインが飲める店があるからそこで打ち合わせをしよう」と言って(笑)岩倉さんのお店をご紹介いただきました。お店で飲んだり・食べたりしながら企画を詰めているときに、岩倉さんからもワインやぶどうの品種の話を聞いて脚本に落とし込んだりしていきました。

MC:岩倉さんはそんな『ぶどうのなみだ』を実際にご覧になっていかがでしたか?

岩倉:私は2回観させていただいたんですが、ほんとうに色が美しいと思いました。土の茶色、空の青、ぶどうの木の緑、そしてアオの青い衣装、エリカの赤い衣装、ロクの白い衣装がとても美しいです。北海道をそのまま写したようだと思いました。

MC:映画の中で描かれていたワイン製造者に関して、思うところはありましたか?

岩倉:(映画のモデルになった)山﨑ワイナリーは家族5人で経営しているワイナリーです。私が7年前初めて畑にお邪魔した時、雨の中お父様が案内してくださいました。ワイナリーが閉まっている寒い時期だったのですがお母さまもご丁寧に対応してくださいました。その後東京でのワインの勉強会で息子さんとご一緒して恋バナを聞いたりして(笑)、ああ彼らもあのワイン畑の中でいろいろなことを考えながら生きているんだなと思ったりしました。ワインを頼むといつもお母さまが一言メモを添えてくださったり心遣いが素晴らしいんです。ボトルのラベルには5枚の花弁があしらわれているんですけど、「家族でやっていくんだ」という覚悟を感じます。そんな山﨑ワイナリーさんの姿が映画の物語の中にもうまくアレンジされていました。

MC:今日試飲していただいたワインに関して

岩倉:今日皆さんに飲んでいただいているのは「ピノグリ」という品種です。映画に出てくる「ピノノワール」から派生した品種ですごく繊細でフレッシュで香りが豊かです。

『ぶどうのなみだ』3

MC:国産ワインと日本ワインの違い

岩倉:日本で醸造・瓶詰されたワインはすべて国産ワインになります。一方、日本で栽培された生のブドウを醸蔵したものを“日本ワイン”と言って、私も応援しているんですけど、なんとなく使い分けています。国産ワインの中でも20%、日本で流通しているワインの中だと3~4%しかありません。

MC:北海道には“日本ワイン”の作り手が多いんですか?

岩浪:映画の舞台にもなった空知地方には特に多いと思います。山﨑ワイナリーや映画のロケ地として貸していただいた宝水ワイナリーも空知ですし。

岩倉:NAKAZAWAヴィンヤード、KONDO、TAKIZAWA、10R(トワール)など。元々炭鉱だった土地がワイナリーへと姿を変えています。そのほかの地域ですと今話題になっている余市、余市は果物の産地として有名なところでもあります。あとは先ほども出た月浦や奥尻などもあります。

MC:北海道のワイナリーの特徴

岩倉:とにかく畑の大きさが広大です。外国にいるみたいに感じるまさに夢の世界です。フランスにいるイメ
ージですよね。

岩浪:空知のぶどう畑を見てその美しさを「この景色を映画にして皆さんに届けたい」と思ったんです。

MC:岩倉さんが注目しているワインの作り手の方を教えてください。

岩倉:ブルース・ガットラブさんです。彼は栃木県のココ・ファームでブドウの栽培担当をしていたんですが、栽培するだけでなくワインづくりをするためにトワールをはじめました。北海道のぶどうを育てている人たちの委託醸造も行っているんです。そこの人たちは体調の悪い人がいたら自分の畑作業を休みにしてその人の畑を手伝ったり、近隣のぶどう農家同士が助け合いながらワインを作っているんです。そんな空知の中でも山﨑ワイナリーさんは日本で初めて100%ドメーヌ(自分の畑で作ったぶどうだけでワインを作る)を行おうとした画期的なワイナリーですが、空知は炭鉱に代わる産業をということで行政が後押しをしていたワイン造りが“町おこし”になっているという側面もあります。

MC:ぶどうと日本の土地との相性はどうなんですか

岩浪:なんかワインの専門家みたいになっていますが…(笑)。空知は北海道の中でも豪雪地帯なんですが、世界的に見ても豪雪地帯のワイナリーというのは稀なんです。冬になるとぶどうの木を雪の中にあえて埋もれさせます。これは世界にもないやり方だそうです。先ほどのブルースのようにこの土地に可能性を感じて移住してきた人もいます。春先雪解けの頃にぶどうの木は雪解け水をぐんぐん吸収して、剪定されたぶどうの木の枝からしずくが落ちるんです。そのしずくが「ぶどうのなみだ」と言われていて今回の映画のタイトルにもなりました。

MC:ほかにこの映画の作り手だから知っている豆知識はあったりしますか?

岩浪:先ほどもありましたが空知は昔炭鉱で栄えていた地域で、みなさんもよくご存じの夕張が極端な例で炭鉱がダメになり市が破綻してしまったほどです。だから北海道の皆さんは自虐的に「空知=カラチ」なんて言っていたりするんです。そんな中で空知の新たらしいあり方としてみなさんがワインに力を入れています。昔石炭が黒いダイヤと言われていましたが、これからはワインがひいてはピノ・ノアールが黒いダイヤになると言っていました。それもあって映画ではピノ・ノワールを使っているんです。とにかく空知では行政も含めてワインを盛り上げようとしている最中ですね。

岩倉:映画を見て頂くとピノ・ノワールが出てくるんですけど、昔、石炭が黒いダイヤと呼ばれこれをとればすべてお金に変わるとみんなが思っていました。ピノ・ノワールはちょっと違うと思うんです。見えないダイヤでみんなが夢を追い求めている。もしかしたらこれによって財産を食いつぶすかもしれない。方や、すごいものになるかもしれないっていう憂いを持っている気がします。それなのにどうしても人を惹きつけるものがあって、飲む方も育てる方もピノ・ノワールに夢を持って追い求めてしまう傾向があります。それが物語にも出ていると思います。すごい夢がありながら怖いぶどうです。

MC:空知にはもともとそこに住んでいた人と移住してきた人両方いらっしゃるんですね。

岩浪:山﨑や宝水は元々空知に住んで農業をやっていた人たちですね。山﨑さんの家は元々農家をやっていていろいろ悩んでいたときにある意味での天命というか、出会いがあってぶどうの栽培を始めそうです。息子さんたちに話を聞くと本当に当時はビックリしたし家族会議が毎晩繰り広げられたようです。さきほど言った中澤さんとかは移住組だそうです。

岩倉:そうですね。元々東京でサラリーマンをされていて農業をしたいと思って移り住んで、最初は違うところで修業をしていたんですがやはりぶどうは自分で作らなければいけないなと思って岩見沢に土地を買ったところがスタートです。近藤さんもそうですね。

岩浪:そういう意味では移住組と元々住んでいる人たちが良いバランスでいるのかもしれないです。余市のドメーヌタカヒコさんも移住ですよね。

岩倉:そうですね。最初はブルースさんの畑にいましたが余市で畑をやっていて。元々長野の小布施ワイナリーの次男の方なんですが兄弟とは違う畑を持ちたいピノ・ノワールにこだわって栽培したいということで余市に移り住んで今まさに自営のナナツモリという畑のピノ・ノワールがリリースになってもう完売しました。北海道はやはり土地が買えるということで移住しやすさもあったと思います。

MC:映画の中で食事が印象的に出てきますね

岩浪:僕も亜由美さんも飲むのも食べるのも大好きで、東京でも札幌でも夜な夜な美味しいものを食べたり飲んだりしながら企画を作っていくというところはあります。ただ、前回の『しあわせのパン』もそうなんですがある種の嘘はつかずにやっていこうという思いがありまして、出てきてる料理に使われている食材は全部道産です。しかも、地元の生産者さんの元に足を運んでこの映画の経緯や思いを伝えて分けてもらったものです。チラシにも載っているんですが、安藤裕子さんが持っているトウモロコシ、見て頂くと皆さんが知っているトウモロコシより細長いんですね。空知の三笠市にある原種のトウモロコシで八列とうきびというトウモロコシです。実が八列しかないとうきびなんですね。これは映画が空知を舞台にするならぜひ入れたいということで、撮影をした去年の9月がちょうど収穫が終わった時期でなかなかなくて手に入れるのに苦労しました。原種って結構北海道にあるんですよね。出てくるカボチャもまさかりカボチャだったり。他にもポトフに入っているソーセージもエゾジカのソーセージだったりとか、地元の食材で作っています。

岩倉:とにかく全部おいしそうなんですよ。トウモロコシも蒸し焼きで皮をむくと綺麗な黄色が出てきて。羊の肉も骨付きのまま焼いているんですけど本当においしそう。あと豚肉を切るシーンも。

岩浪:役者たちは演技が終わると本当に食べられるので、ある役者さんはすごく太って帰ったりしてますね(笑)

岩倉:東京でやるのは本当に難しいですが、北海道は海もあるし山もあるし、放牧している牛とか羊とかを食べられるというのはある意味うらやましいというところがありますね。

MC:やっぱり北海道のワインといっしょにいただくのが美味しいですか

岩倉:1番最高なのは畑を眺めながらその畑で育ったワインを飲むという映画のような感じが理想だと思いますが、同じ土壌同じ水で育ったものというのはどこか共通点があると思います。北海道のワインもそうですが無理なことはしない、ぶどうに逆らったことをしている人っていうのが本当に少ないのでやはり優しいあじわいになっていると思いますしその土地で育てられているお肉とかも優しい味をしていると思います。合わせるとわかると思うのでうんちくなどなくシンプルに土地のワインと食べ物をいっしょにいただくのがよいと思い
ます。

岩浪:羊は東京では独特の匂いがあるイメージありますが北海道で食べるとそんなことないんですよね。映画の中にラムチョップも出てきますし。ある意味で映画自体も地産地消の1つというとらえ方で北海道で作っているという思いもありまして、それも含めてテロワール(気候と土壌)的なものになるといいなという思いがあります。

岩倉:すごく印象的なシーンがあって、みずならの樽っていうのが出てくるんですね。北海道に原生している木なんですけど、それをワインの樽にするというシーンがあります。本来私たちが知っているのはフレンチオークという木の樽で熟成させて作るんです。映画の中で日本のみずならの木で樽を作ることにより複雑味が出てピノ・ノワールが変身していくシーンがあります。日本でも実際みずならの木で樽を作っている人はいるんですが、まだ私もみずならの木の樽で熟成されたピノ・ノワールは飲んだことないです。もし、そのシーンのように実現したら面白いなと思いました。

▼以下質疑応答

MC:みずならの木の樽は三島監督のアイデアですか?

岩浪:先ほどの話にもありましたが水がそろっていると相性がいいという話を現場で聞きまして、映画の中では空知で育ったみずならという設定なので、空知で育ったみずならと空知で育ったぶどうで美味しいワインをつくってねというイメージであのシーンになりました。そういう元ネタがあり監督とみんなでアイデアを出し
ました。

MC:ワインのおいしさを決める構成要素はなんだと思いますが?

岩倉:なかなか難しいですね。よく言われるのは先ほどテロワール(気候と土壌)とかですが、私はワインと
いうのは人の力が加わるものだと思っています。山﨑さんのワインを飲むと″酸“というものを感じるんです
ね。そしてそこに意志を持って作っているというのが感じられるんです。そうすると品種というものが関係な
くなり、その人がどんな思いで作っているかでぶどうもワインもすごく変わると思います。だから人がすごく
影響すると思います。

MC:トマトソース以外でピノ・ノワールに合うもの

岩倉:ピノ・ノワールにはチャーミングな酸味があって味覚を刺激するような味わいです。それがトマトと合
うと思ってお店ではドライトマトといっしょに飲んでいただいたりするんですね。ピノ・ノワールのもう1つ
の特徴は力強さです。どうしても、最初の飲み口は樽の香りがぶわっとついていて果実が出にくい、酸が出ても果実が出にくいというのがあります。そういうときにいつも試すのが珈琲塩というものですね。コーヒーの
豆をすごく細かくすり潰してそこに塩を混ぜるんです。それをなめてワインを飲むと酸味と樽の香りが抑えら
れて、そのワインの果実がよく出てくることがあります。100%ではないんですけど。

MC:さきほどの食材の話ではないが安いものと地産地消にこだわったものの2極化が進んでいることをどう思うか

岩浪:そんなに難しいことは考えていなくて、映画で地産地消をやりたいと思ったので食材にこだわったんで
す。なかなかあり得ないんですが、究極な話北海道内だけでも映画がビジネスとして成立すればよいなと思っています。北海道産の映画を東京でやるというイメージです。最近ご当地映画というのがよくありますが、大半がロケ地というだけです。それとは違いオール北海道で0から立ち上げるという思いでやっています。そういう意味では自分たちだけでなくて他の皆さんが同じ思いで北海道での映画作りをしてもらえればいいと思います。

MC:北海道のワインはなかなか手に入りずらいですが、どうすればよいですか。

岩倉:まだ本数が少ないんですよね。私が“日本ワイン”を始めた8年前はまだ売れ残りを集めるような状況でした。そんなワインたちが今やシンデレラワインになってしまいました。皆が手に入れようとやっきになっ
ています。私はワインを作っている人も飲む人も皆幸せになるのが理想だと思います。そのためには独り占めして飲むのではなくみんなでわけあって飲むのがよいと思います。少しの量でもみんなで楽しめば幸せは広がっていきます!

********************************************************************

『ぶどうのなみだ』の物語を・・・
北海道・空知。父親が残した葡萄の樹と小麦畑のそばで、兄のアオはワインをつくり、ひとまわり年の離れた弟のロクは小麦を育てている。アオは“黒いダイヤ”と呼ばれる葡萄ピノ・ノワールの醸造に励んでいるが、なかなか理想のワインはできない。そんなある日、キャンピングカーに乗ったひとりの旅人が、突然ふたりの目の前に現れた。エリカと名乗る不思議な輝きを放つ彼女は、アオとロクの静かな生活に、新しい風を吹き込んでいく・・・。

出演:大泉洋 安藤裕子 染谷将太 / 田口トモロヲ 前野朋 りりィ きたろう / 大杉漣・江波杏子
監督・脚本:三島有紀子『しあわせのパン』 音楽:安川午朗  
(C)2014『ぶどうのなみだ』製作委員会
公式HP:budo-namida.asmik-ace.co.jp

関連記事:




良かったらランキングUPにご協力ください。
  にほんブログ村 映画ブログ 映画情報へ    にほんブログ村 アニメブログ アニメ情報へ