『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』の池田暁監督が、“映画を語る”配信番組「活弁シネマ倶楽部」に初登場。映画評論家の森直人がMCを務め、監督のルーツを探索し、池田作品の独特のスタイルを語っている。 『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』は・・・ 池田監督にとって長編第4作目となる作品ながら、ロードショー公開されるのはこれが初。映画祭では評価されるも、一般上映されてこなかったのは意外だ。そんな記念すべき本作は、不条理な世界で生きる人間たちをユーモラスかつシニカルに描いたもの。いつの時代でもない架空の町を舞台に、川の向こう岸にある町と目的も分からない戦争を何十年も“規則正しく”続けている人々の営みが綴られている。町で兵隊として暮らす主人公・露木を、話題作への出演が絶えない前原滉が務め、若手映画作家を支援する「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」の一環である“長編映画の実地研修”として製作。第21回東京フィルメックスにて審査員特別賞を受賞した。 |
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第30回東京国際映画祭のスプラッシュ部門にて上映された『うろんなところ』で初めて池田監督作に触れたという森は、当時のことを「変な監督がいるなと思いました」と笑い混じりに振り返っている。そして、「これまでの作品は、海外の映画祭だとグランプリなのに、なぜか国内だと審査員特別賞になるというのが、何かを物語っている気がしますよね」と森が話すと、「海外の方が受け入れられる気がしています。やっぱりとっつきにくさがあるんですかね(苦笑)」と監督。「でも、日本映画界における見取り図の中で、池田監督の破格ぶりと異端ぶりがうかがえるように思います」と森は重要な指摘をしている。 池田監督は、つげ義春と水木しげるから大きな影響を受けてきたという。「子どもの頃ってよく漫画を読みますよね。大人になってからそれを読み返すことってほとんどないのですが、水木さんの作品だけ、何度も読み返してしまうんです」と語っている。これに森は「子どもの感性にも訴えかけてくるんですけど、大人になってから読むとヤバいですよね」と反応。監督は「それはなぜかと考えたときに、雰囲気などのストーリーじゃない部分で水木さんの漫画は訴えかけてくるんですよね。『その世界に入りたい』という思いで、毎回読み返している気がします」とトークを展開。自作と、つげ作品、水木作品との関連性に深く言及している。 「本作の時代設定は分かりませんが、ただ、“近代社会”ではありますよね。第二次産業や第三次産業など、我々の生活する現代社会に通じるシステムは立ち上がっている世界です。このアイデアはどこから生まれるんですか?」と問う森。これに監督は「脚本上には“架空の”などと書いているのですが、スタッフさんには言語化して伝えなければならない。そこで、だいたいのイメージを共有しています。劇中に登場する街並みに関しては、僕が古い建物が好きだからです。でも、これらは時代とともに失われていく。だから、映画の中に残していたいという思いがあります」と返答。劇中に登場する建物の8割ほどは、実際に存在するもののようだ。「足を使って探してみると、意外にまだ残っていますね。この探す作業がまた楽しいんです」と、監督の思う映画作りの面白さの一端を述べている。 さらには、「架空の時代、架空の場所と設定することで、自分たちで想像しながら作っていける楽しみがありますし、そうするからこそ描けることがあるとも思っています」と語っている池田監督。そんな池田作品に対し、「世界観を構築する“ルール”や“コード”というものが、池田作品の一つのキーワードになっていますよね」と森は反応している。ここからさらに奥深くまで、池田作品の魅力を探る収録回となっている。 |
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『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』3月26日(金)より、テアトル新宿ほか全国順次ロードショー! あらすじ |
監督・脚本・編集・絵 : 池田暁
前原滉/今野浩喜 中島広稀 清水尚弥
橋本マナミ 矢部太郎 片桐はいり 嶋田久作 きたろう/竹中直人 石橋蓮司
2020 年/日本/カラー/105 分/ビスタ
企画・製作:映像産業振興機構(VIPO)
制作協力:東映東京撮影所
配給:ビターズ・エンド
©2020「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」フィルムプロジェクト