映画情報どっとこむ ralph この度、名優エミリオ・エステベス監督の最新作『パブリック 図書館の奇跡』を7/17(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開となります!

図書館という、誰もが利用したことのある身近で物静かな空間を舞台にした“あっと驚く”ヒューマン・ドラマが誕生。記録的な大寒波の到来により、緊急シェルターがいっぱいで行き場がないホームレスの集団が図書館のワンフロアを占拠。突如勃発した大騒動に巻き込まれたひとりの図書館員の奮闘を軸に、予測不可能にして笑いと涙たっぷりのストーリーが展開していく。ある公共図書館の元副理事がロサンゼルス・タイムズに寄稿したエッセイにインスピレーションを得て、完成までに11年を費やし監督したのは名優、エミリオ・エステベス。この度、ホームレスの方たちへの炊き出し・夜回りなどの支援活動、生活に困窮された方への相談支援、生活保護や社会保障削減などの問題について現場の声の発信や政策提言を行なっている、認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長の大西連さんをお招きしたトークイベントを行いました。

オンライン試写会 トークイベント
日付:2020年7月7日
ゲスト:大西連(認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長)
MC:立田敦子(映画ジャーナリスト)

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この映画を観た感想について大西さんは、「コロナの問題があってさらに経済的に苦しい状況に通じるタイムリーな映画。日本でも家がない、生活が苦しい方など、“ステイホーム”できない方がたくさんいる。私たちが苦しい人の立場にたって、どう支えるのか考えさせられる。」と現在のコロナ禍の状況と重ねながらコメント。
民主主義の象徴でもある「公共」の場としての図書館については、「お金があるなしに関わらず、誰もが同じように利用できる場所。本やパソコンを買えなくても、図書館に行けば情報にアクセスできるし、貧困家庭で育っている子も、塾に行けないけど図書館で勉強できたりする。ホームレスの方は寒いとき、暑いときに休める場として利用できたり。大きな力を持つ場であると思う。」と話す。
劇中で、警察、検事などの権力が介入し、公共図書館に籠城したホームレスの集団を追い出そうとする民主主義の歪みが描かれていることについては、「都庁の下でホームレスの人たちに相談会と食料品の配布を行なっているなかで、同じような出来事がありました。6月の大雨の日に180人くらいの方が支援を受けるために集まっていたとき、都庁の下の敷地に入って並んでいる方が多く、警備員に『入らないで』と注意され、大雨が降っている道路側を指差し、向こうでやってと言われた。実際に許可なく敷地に入ってはいけないルールはあるが、そこは公共の場でもある。困っている人がいる時に、ルールもあるなかでどう柔軟に対応できるか、まさにコロナの中で直面している問題とぴったりだと思って観ていた」と自身の体験談を振り返る。
図書館に占領したホームレスの集団たちとともに、行動をともにすることを決めた主人公スチュアート(エミリオ・エステベス)の行動については「都庁の下で注意された時、自分が譲ったら、彼らを雨の中、道路に立たせることになってしまう。張り合うのは嫌だけど、言うべきことは言わないといけない。けれど、もしかして自分が警備員、ジャーナリスト、ホームレスの側に立つかもしれない。その時に何をするのか、改めて問いかけてくると思う。」とスチュアートだけでなく、それぞれのキャラクターの立場から考えることができたと言う。
劇中では、騒動の真実とは別に、センセーショナルに報じようとするメディアが、事態をより混乱へと招いていく。そのことについて「メディアは非正規雇用で働く若者の貧困、ネットカフェ難民、ワーキングプアなど、貧困を発見して名前をつけて、見えるようにすることで伝えてきた側面もある一方で、新しい貧困を見つけたがる。女性の貧困だと、風俗で働いている人を紹介してほしいなど、よりセンセーショナルなストーリーやインタビューを求められる。また、リアルとはかけ離れた報じ方をメディアがすることで、自分はそこまで至ってないから貧困ではない、それぐらい困っていないと貧困でない、など貧困の中においても分断を生んでしまう。」と、メディアのあり方についても改めて問いかけるものになっていると話す。
スチュアートがホームレスの側にたち、立場が弱い人への“共感”を持っていることについて、「貧困は見えづらいけど、例えば同じ会社の中でも、派遣で働いている人もいればアルバイトの人もいたり、奨学金300万円の借金をしている人もいたりと、いろんな格差は存在している。見えないからこそ気づきにくい。でも、スチュアートのような両者をつなぐ視点を持っている人もいる。日本だと、そうした視点は持ちにくいけど、逆に映画を通して見方を伝えてくれる意義深い作品。」と主人公のキャラクターの姿からみえるものがあるとコメント。
本作のテーマのひとつ、“声をあげること”の大切さについて、「声をあげないと、気付かれず、存在を知ってもらえず、孤立してしまう。自分は必要とされていないと思い込んでしまう。そうではなく、“ここにいる”と声をあげること。存在を知ると、無視できないし、知らないふりをしていた人も無視できなくなる。声をあげる意味は大きい。」と熱く思いを語る。
この映画を観て欲しい方について尋ねられると「色んな人に観て欲しい。観た上で、自分のいる場所で何ができるのか考えてもらえると嬉しい。コロナ禍で苦しむ人がいる中で、困っている人に対して何かできることがないかなと。1人でできることは限られるけど、10人いれば10倍、100人いれば100倍になる。いろんな人が思えば、世の中の風潮はかわっていく。自己責任ではなく、苦しい時はみんなで支え合おうという空気があれば、苦しい人がいる社会構造は変わるかもしれないし。ボランティア、寄付、なんでもいい。何ができるかを考えてぜひ、できることをやってもらいたいと思いますね。」とコメント。
社会派なテーマを扱いつつも、ヒューマンドラマとしても見応えがある本作。人との繋がりが巧みに描かれていることについて、「貧困を生むのは孤立。逆に解消できるのは支え合いや共生。まさにそれを教えてくれる映画。ユーモアもあり、思わず笑ってしまうシーンもある。その中で自分が何ができるのかを、難しく考えずに観ながら思って欲しいと思う。」と思いを込めて話した。最後に「この映画を観て、身の回りで苦しい状況にいる人がいないか気づき、何ができるのかを考え、実行してもらえると嬉しい。社会的な連帯を日本のなかで当たり前にできるよう、僕らもメッセージを発し、みんなと繋がっていきたい。」と語りトークを締めくくりました。

映画情報どっとこむ ralph 『パブリック 図書館の奇跡』 

<STORY>米オハイオ州シンシナティの公共図書館で、実直な図書館員スチュアート・グッドソン (エミリオ・エステベス)が常連の利用者であるホームレスから思わぬことを告げられる。「今夜は帰らない。ここを占拠する」。大寒波の影響により路上で凍死者が続出しているのに、市の緊急シェルターが満杯で、行き場がないというのがその理由だった。約70人のホームレスの苦境を察したスチュアートは、3階に立てこもった彼らと行動を共にし、出入り口を封鎖する。それは“代わりの避難場所”を求める平和的なデモだったが、政治的なイメージアップをもくろむ検察官の偏った主張やメディアのセンセーショナルな報道によって、スチュアートは心に問題を抱えた“アブない容疑者”に仕立てられてしまう。やがて警察の機動隊が出動し、追いつめられたスチュアートとホームレスたちが決断した驚愕の行動とは……。

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製作・監督・脚本・主演:エミリオ・エステベス(『ボビー』『星の旅人たち』)
出演:アレック・ボールドウィン(『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』)、テイラー・シリング(「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」)、クリスチャン・スレイター(『トゥルー・ロマンス』「Mr.Robot/ミスター・ロボット」)、ジェフリー・ライト(『007 カジノ・ロワイヤル』)、ジェナ・マローン(『ネオン・デーモン』)、マイケル・ケネス・ウィリアムズ(『それでも夜は明ける』)、チェ・“ライムフェスト”・スミス

2018年/アメリカ/英語/119分/スコープ/5.1ch/原題:The Public/日本語字幕:髙内朝子    提供:バップ、ロングライド 配給:ロングライド     
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longride.jp/public #パブリック図書館の奇跡

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