1969年5月13日東京大学駒場キャンパス900番教室で行われた作家三島由紀夫と、東大全共闘との伝説の討論会の様子を軸に、三島由紀夫の生き様を映したドキュメンタリー映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』が3月20日(金)ギャガ配給にて全国公開します。
このドキュメンタリー映画は、伝説となった「三島由紀夫VS東大全共闘」の記録を高精細映像にリストアし、当時の関係者や現代の文学者・ジャーナリストなどの識者他、三島由紀夫についての「生きた」証言を集め、ようやくその全貌が明らかとなる、1969年5月13日と約半世紀後の現代を結ぶ作品。 この度、3月17日(火)に監督の豊島圭介氏、本作でナレーターを務めた東出昌大さんが登壇して、公開直前トークイベントを実施しました。 『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』公開直前トークイベント |
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MCの呼びかけで登壇した豊島圭介監督、東出昌大さん。
この作品の製作のきっかけを尋ねられると、「討論会自体は東大の駒場のキャンパスで行われたんですが、TBSのカメラだけ入っていました。その辺の事情を劇中でも描いているのですが、討論会の直後に新潮社から書籍として発売されつつも、その映像というのはあまり多くの方に見られていなかった。2019年の頭にフィルムの原盤がTBSの倉庫から見つかりまして、これは歴史的な意義も含め、大したことだ、何とかして、お客さんに届けたいという気持ちがあり、TBSの映画部と報道部が協力して、このプロジェクトを立ち上げたのが発端でした。僕に声がかかったのは、当時の状況をよく知る人であったり、運動に興味のあるバイアスがかかった人が作るというよりは、何も知らない人が当時の映像を振り返ったらどうなるのか、という視点を持とうとなったときに、僕に声がかかりました。」と監督が企画の発端を話すと、東出さんも「監督が三島由紀夫と、東大全共闘と同窓で、900番教室に実際に通われていた、という点もあるんですよね。」と話し、監督も「僕は当時は知らなかったんですよね。駒場のキャンパスでお会いしたのはアントニオ猪木さんだけで(笑)僕が唯一関係あるとしたら、予備校生として、通っていた予備校の論文の講師をやっていたのが(映画内で東大全共闘として登場する)小阪さんでした。最後に三島由紀夫に天皇制に関して問いかけているのが小阪さんで。唯一個人的なきっかけがあるとするならば小阪さんですね。」と学生時代を振り返った。 ナレーションのオファーをもらった時に関して尋ねられると、「豊島監督とは別の映画とドラマで2作、ご一緒しており、豊島監督とご一緒できるのもとても嬉しく、三島由紀夫の一ファンだったので、そういう意味でオファーを頂いた時は心踊りました。」と話す東出さん。監督も「このオファーをちょうどした時に、あの討論会読んでいます、と(東出さんに)仰っていただいて。若い頃に4部作を読んでいて、舞台「豊饒の海」をやるにあたって、さらにもう2周読んだとおっしゃっていて、相当な読者だなと思いました。東出くんは三島由紀夫の舞台の主役をやっていて、今回ナレーションをやるにあたって、誰にも真似できないものを持っているんじゃないかなと思いました。また今回当時のことを知っている人の視点ではなくて、若い人が、50年後のいまどう観たらよいのか、という立場でやってほしいと思ったので、若い方にやって欲しかった、というのもあります。」とオファーの理由を振り返る。東出さんも実際にナレーションを収録する前のことを「ナレーションの収録をする前に豊島監督からメールの長文の文章でこういう気概を持ってやっていただきたいという演出があって。最後の三島由紀夫が市ヶ谷の駐屯地で皆に配った檄という文章があり、当時の三島は将来の日本人を憂いていて、豊島監督のメールの中でも現代のことを憂う部分が散見されたので、そのような気概に共鳴しつつ、本作に臨みたいなと思いました。」と話した。 続いて、映画を観た感想を尋ねられると、「この討論会は書籍で読んだときにどうしても難しく感じました。知の頂上決戦という風に言われるのですが、書籍で読むと、三島由紀夫と東大全共闘の共通言語が高い次元にあって、意味を理解しきれない部分がありました。今回映像化されて、解説が細かく入っていて、書籍よりも分かりやすい、腑に落ちるものになっていたのが嬉しかったです。これは今まで三島に馴染みがない方でも、学生運動になじみがない方が観ても楽しんでいただけるようになったんではないかなと思いました。」と東出さんは話した。「僕が最初に田口トモロヲさん風に声を入れていたのですが(笑)東出さんのナレーションのやり方はとても柔らかくて、こんなやり方あるんだ、というのを現場で東出くんに教えてもらいました。突き放しているのではなく、細かい演出を聞いていて、びっくりしました。映画が生まれ変わるような気が致しました。東出くんを呼んでよかったなと思いました。」と監督も驚いた当時の様子を明かした。 好きな三島作品を尋ねられると、東出さんは「全部好きなので、一概には言えないのですが、文豪小説というと堅苦しいイメージがあったりするので、『音楽』『美しい星』の2作は三島文学の中では読みやすいのではないかなと思います。『潮騒』と『金閣寺』と全然違うので、一言では言えないのですが、絢爛豪華な文章というのは素晴らしいなと思います。」と、大ファンである様子が伝わるように話した。 三島由紀夫没後50年目の今年にこの映画が公開されることについては豊島監督が「難しい討論はしているのですが、内容というよりも、ちゃんと名前を名乗り合って、壇上に乗って相手の呼吸とか汗を感じられる場で言葉を交わし合うということが映っていることがこの映画の魅力ではあると思います。名乗り合って言葉を対峙し合うことから何かが生まれることがあるんだというのが映画を観ると分かるのですが、そのことを自戒も込めて、今のお客さんにも見て欲しいかなと思います。」と話し、東出さんも「知の頂上決戦とは言ったのですが、この映画を見れば熱量というのは持ち帰られると思います。詳細なことはご存知なくても、この900番教室で激論を交わした熱量は持ち帰られると思うので、若い世代の方にも是非観て頂きたいなと思います。」と語り、映画の魅力を若い人にもアピールした。 最後に、「討論以外にも、TBSのアーカイブにありました当時の映像をたくさん使っておりまして、それを観るだけでも貴重な意義があります。時代の証言としていろいろな方に観て頂ければなと思います。」と監督「以前、『豊饒の海』という舞台をやったときに、演出家の方がイギリス人の方でした。『豊饒の海』の英訳ですと、解釈が一方向になってしまう部分があり、三島由紀夫の言葉で文字表現に触れられるのは日本に生まれてよかったなと思います。この映画を見ることで日本語を分かる日本人に生まれてよかったな、と、学生運動とかに馴染みがない方でも、一時代の象徴をご覧いただけると思いますので、お若い方にもみていただければと思います。」と東出さんが話し、イベントは終了した。 |
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『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』
3月20日(金)全国公開
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三島由紀夫
芥正彦(東大全共闘)木村修(東大全共闘)橋爪大三郎(東大全共闘)篠原裕(楯の会1期生)宮澤章友(楯の会1期生)原昭弘(楯の会1期生)
椎根和(平凡パンチ編集者)清水寛(新潮社カメラマン)小川邦雄(TBS記者) *肩書は当時
平野啓一郎 内田樹 小熊英二 瀬戸内寂聴
ナレーター:東出昌大
監督:豊島圭介 企画プロデュース:平野隆 プロデューサー:竹内明 刀根鉄太 音楽:遠藤浩二
製作:映画「三島由紀夫vs東大全共闘」製作委員会 制作:ツインズジャパン 配給:ギャガ Ⓒ2020映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」製作委員会